インフォテリアは7月12日、同社が提供するデータ連携ミドルウェア「ASTERIA(アステリア)」シリーズのユーザー向けカンファレンス「AUG FESTA TOKYO 2016」を開催した。今回が初となる同カンファレンスの基調講演「IT革命の本質と新リーダーシップ論~時代の変化に対応できる企業へ」に登壇したのは、慶應義塾大学 政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏だ。ここでは、講演の模様をダイジェストでお届けする。

20年前から日本の生産性は上がっていない!?

慶應義塾大学 政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏

慶應義塾大学 政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏

ITがまだ一般に広く普及していなかった20年前、今では当たり前のようにあるインターネット検索やオンラインショッピングといったサービスのほとんどはまだ生まれていなかった。それからわずか20年でIT技術は大幅な進化を遂げ、人々の生活は大きく変わった。電子メールというコミュニケーション手段が増えたこと1つとっても、大きな変化がもたらされていることは言うまでもない。ビジネスにおいても、それは例外ではないだろう。

夏野氏は「ITが普及して、これだけ便利な世の中になりましたが、皆さんの会社の生産性はちゃんと上がりましたか? ITでいろいろ効率が良くなったんですから、上がってるはずですよね?」と会場に問いかける。

「ここにいる皆さんの会社の生産性は上がっているかもしれません。けれども、日本という国単位で見ると、日本のGDP(国内総生産)はこの20年間、ほとんど変わっていないんです。何かおかしくありませんか?」(夏野氏)

では、他の国はどうなのか。夏野氏は日本と同じ先進国の1つとして米国を挙げ、そのGDPが倍増していることを示す。

「日本が停滞している間に、米国経済は約3倍に成長している」と説明する夏野氏

一方で、「1994年と2014年の日本のGDPを比較すると、プラスどころか-5%」(夏野氏)だという。その原因の1つは、日本企業の旧態依然としたところにあると夏野氏は嘆く。「ITで何か新しいものが出てきたときに、日本ではまず今ある法律や監修、ルールをひっくり返して似ているものを探し、そこに無理やり当てはめる」というのだ。

「『今のままで仕事は回っているんだから、そんなものはシステム化しなくてもいい』と昔のやり方にこだわる人たちは、どんどん競争優位性がなくなっていることに気づいていません。これがビジネス習慣のレベルでも、国家レベルでも起こっているのが日本でしょうね」と夏野氏は危惧を見せる。

この20年、日本ではITが社会をどう変えるのかや、今までのルールをどう変えるべきかという議論をおろそかにしてきた。そのために、ITがこれだけ進化したにもかかわらず、生産性はまったく変わっていない可能性が極めて高い……というわけだ。

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