次世代型ファイアウォールを提供するClasvister AB(クラビスター)は、日本ではあまり馴染みのないベンダーだが、ドイツを中心とした欧州ではメジャーな存在だ。日本でも2015年10月に、キヤノンITソリューションズが取り扱いを開始し、国内における販売体制が整った。そもそもクラビスターとはどんな製品なのか、Clasvister AB CEOであるJim Carlsson(ジム・カールソン)氏に話を聞いた。

Clasvister AB CEO Jim Carlsson(ジム・カールソン)氏

――クラビスターの特徴は?

ジム・カールソン氏:クラビスターは、戦車などの軍事用車両における通信システム開発からスタートした。軍事用ということもあり、Linuxなどのサードパーティ製OSを使わずに独自開発のファームウェア・OSで設計している。

ソフトウェアとハードウェアが一体となっているため、処理スピードが速い。フットプリント(実行時のメモリ容量)もわずか16MBで高速・軽量だ。サードパーティOSを使用していないことは、それらの脆弱性の影響を受けないという強みにもなる。

クラビスターの特徴。独自OSでフットプリントはわずか16MB、高速・軽量・堅牢性がウリだ

――なぜ独自OSにこだわるのでしょうか?

カールソン氏:私たちはスウェーデン企業であり、アメリカ政府の影響を排除している。スノーデン事件ではさまざまなサービス・プログラムにバックドアが施されていると発覚したが、クラビスター製品には一切ない。

独自OSで開発しているからこそ、バックドアがなく、セキュリティを担保できる。そのため、ドイツ・南アフリカ・南米などの政府機関でも採用されており、アメリカでも通信・銀行・法律事務所など、情報をビジネスとしているジャンルで採用されている。

――バックドアがないことについて、アメリカ・NSAの圧力はありませんか?(笑)

カールソン氏:(冗談っぽく)Yes、あるよ(笑)

インテルと緊密に連携してIoTセキュリティに注力する

――現在は次世代型ファイアウォールが主力製品ですが、今後はどのジャンルに力を入れますか?

カールソン氏:IoTとモバイルコアネットワークのセキュリティだ。IoTではフットプリントが小さいというメリットを活かし、クルマ・カメラ・センサーなどの分野に注力する。”IoT時代”は、多くの機器がネットに接続されるため、データ通信量が増えて負荷も高くなるだろう。そうした状況下では、軽量で処理スピードの速いクラビスターが優位に立てると考えている。

IoTセキュリティでのクラビスター。クルマ、ビル内のセンサー、電気自動車の充電ステーションなど組み込み型のセキュリティ製品として採用されている

――特に注目している分野を教えてください

カールソン氏:まずはクルマだ。すでにクルマは脆弱性を突いた攻撃が実証されており、外部からコントロールされる脅威が問題になっている。クラビスターであればサードパーティOSの脆弱性とは無縁であり、より安全性が高まる。インテルによれば、2020年までに3,000万台のクルマがネットに繋がると予測されている。クラビスターはインテルと連携して、クルマのIoTセキュリティに力を入れる。

――インテルとの連携は大きな武器となりそうですね

カールソン氏:私たちのIoTセキュリティは、インテルのチップセット上で展開する。インテルとは緊密に連携しており、新しいプロセッサを市場へ投入する前にデータシートの提供を受けて対応できる。

――IoTではARMアーキテクチャを採用した製品が多い中で、インテルに傾注されるのでしょうか

カールソン氏:私たちはあくまでインテルにフォーカスしていく。インテルもIoTに力を入れる方針であり、インテルと共に成長していきたい。

ストックホルムでの「スマートビルディング」の実験プロジェクト

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