ガートナー ジャパンは2月19日~20日、年次カンファレンス「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス & テクノロジ サミット 2019」を開催した。その2日目には、ガートナー シニア ディレクター アナリスト タッド・トラヴィス氏が登壇。同氏はB2B企業のカスタマーエクスペリエンス(CX)の改善をテーマに講演を行い、新しいテクノロジーのトレンドを解説すると共に、CX改善を自社のデジタル変革プロジェクトと連携させていくことの重要性を訴えた。

ガートナー シニア ディレクター アナリスト タッド・トラヴィス氏

「B2BのCX」の特徴

テクノロジー導入が容易になった今、B2B企業においても「CXの目的」と「デジタルトランスフォーメーションの目標」を結び付ける必要がある。だが、トラヴィス氏によれば、B2Cビジネスと比べB2BビジネスのCXは人間に依存するところが多いのが特徴であるという。

B2BのCXの特徴/出典:ガートナー(2019年2月)

実際、B2Bビジネスにおける顧客ライフサイクルでは、問題があったら顧客は営業担当者に連絡をとり、相談することが多い。だが、デジタルテクノロジーの登場でこの構図自体が変化している。営業担当者は顧客との価値の高い情報交換を得意としているが、B2Cビジネスと同様に、デジタル情報源を使う場面が増えているのだ。

営業チームが顧客に会う前に、顧客は自主的に情報収集を済ませており、デジタルの活用時間はすでに購入に費やす時間のなかで最大の割合を占めている。この事実は、営業担当者の購買への影響力は以前よりも低下していることを意味する。

トラヴィス氏は、顧客ライフサイクル全体におけるセルフサービスでの情報収集の割合が増加した結果、B2B企業が3つの問題に直面していることを指摘した。

まず、見込み顧客/顧客のニーズ、期待、要件に関する詳細を把握できていないこと。次に、顧客を支援し、製品/サービスを提供するための意思決定に関する長期的な組織知が失われていること。そして、顧客との長期的な関係を構築する機会が少なくなっていることだ。人間とのやり取りが相対的に減りゆく今だからこそ、人間でなくてはできない役割を果たすことが求められているわけだ。

顧客との関係を最適化するために使えるテクノロジー

では、デジタルで顧客との関係が変化する時代に必要になるテクノロジーはどんなものか。トラヴィス氏は分野別に次のようなトレンドを紹介した。

マーケティング

注目するべきトレンドは2つある。1つはABM(Account-Based Marketing)だ。これは、さまざまなデータを駆使してターゲット顧客を明確にし、アプローチするやり方である。もう1つは無料トライアルを提供することなどで、Webサイトを「顧客の購入を支援するもの」に変えることだ。

セールス

セールスの分野では、AIを活用した新しいソリューションが増えている。例えば、定型的なメールへの返信やアポ取りなど付加価値の低いタスクを自動化するようなソリューションだ。顧客からはボットではなく、あたかも人間が対応しているように見える。

そのほかにも、音声認識のテクノロジーを使い、対話の記録をテキスト化して分析して適切な提案ができているかなどを評価し、商談獲得に役立てるようなソリューションが登場している。

カスタマーサービス

セルフサービス化が進行しており、チャットボットが活躍する余地の大きい分野だ。トラヴィス氏曰く、今はYes/Noしか答えられないが、人間が必要な情報を提供してやり取りを完結させる使い方の例が登場する見通しだという。

AIはカスタマーサービスを変える潜在的な能力があるが、タスクを減らすことはできても、人間を排除することはできない。トラヴィス氏は「AIの得意領域を見極めて導入することを勧める」とアドバイスした。