今回は、セットアップ前の準備作業ということで、IPアドレスとコンピュータ名について取り上げておこう。どちらも、行き当たりばったりで決めていくと面倒なことになるので、最初のルール作りが肝心だ。

IPアドレスの配分

Windows Server 2008のセットアップを開始する前に、決めておかなければならない項目がある。IPアドレスの配分とコンピュータ名だ。

サーバの用途と台数が決まれば、必要とするIPアドレスの数も決まってくる。ただし、そこにある程度の余裕を持たせて、サーバ用の固定IPアドレス範囲を確保しておきたい。たとえば、サーバが10台必要なら、その2倍の20個を確保する、といった具合だ。

一般的な「192.168.0.0/24」のプライベートIPアドレスを用いるネットワークであれば、先頭の「192.168.0.1」はルータに割り当てて、他のネットワークと接続するためのデフォルトゲートウェイにする。ネットワーク構成によってはルータ用のIPアドレスが複数必要になるかもしれない。

それに続けてサーバ用の固定IPアドレス範囲ということになるだろうが、半端なところを区切りにすると面倒だから、キリ良く「192.168.0.11~」とするのもひとつの考え方。これはクライアントPCも同じだ。台数が少なければ、思い切って飛ばしてしまい「192.168.0.101~」とする方法も考えられる。

なお、ここまで述べてきたのはIPv4の話だ。Windows Server 2008・Windows Vista・Windows 7については当初からIPv6も組み込んだ状態になっており、利用可能であれば、そちらを優先する仕様になっている。Windows XPやWindows Server 2003でも、後から手作業でIPv6のスタックを追加できるので、現行のオペレーティングシステムについていえば、たいていはIPv6を利用可能と考えてよい(MacOS Xも同様だ)。

そのIPv6についてはIPアドレスを自動構成するのが建前であり、通常は何も考える必要はないだろう。IPv6対応ルータでネットワークプレフィックス(IPv4でいうところのネットワークアドレス)を何か設定しない限り、自動的にLINKLOCALアドレスを設定して、同一ネットワーク内限定でIPv6による通信を行えるようにしてくれるはずだ。この方法で設定したIPv6アドレスは「fe80:~」で始まるので、容易に識別できる。

コンピュータ名にまつわるあれこれ

また、コンピュータ名の付け方も決めておきたい。実は管理者をおおいに悩ませるテーマがこれだ。筆者が以前に、自分のWebサイトで「サーバ名のネタ帳」という記事をライブしたところ、長きにわたってアクセスを集める人気記事(?)になっている。

ちなみに拙宅ではサーバもクライアントPCもギリシア神話の神名を使っていて、「Hestia」「Artemis」「Hermes」「Helios」「Hekate」「Arethusa」といった具合にしているが、会社で使うものであれば個人的趣味よりも「覚えやすさ」「口頭で伝達ミスが生じない」「どこで何に使っているサーバなのかがすぐ分かる」といったところを重視するのが筋だろう。あまりにも長ったらしい名前、スペルが分かりにくい名前、部外者の前で口にするのを憚られるような名前は避けるべきだ。

ところで、サーバはサーバルーム、あるいはサーバ設置用のラックに並べて設置することが多いと考えられる。その際の設置の手間やスペースの有効活用、あるいは調達・保守の効率化を考えると、同じ機種で統一する方が好ましい。

また、切替機を設置してキーボード・マウス・ディスプレイを共有すると、スペースと経費の両方を節減できる。ただしそうなると、操作対象を間違えやすくなる問題がある。操作対象を間違えると極めて面倒なことになるので、間違えないようにするための配慮も必要だ。具体的には、以下の方法が考えられる。

  • ラベルライターを使って、筐体の前面など目立つ場所に、コンピュータ名やIPアドレスを標記しておく
  • 個々のコンピュータの画面では、コンピュータ名を大書した壁紙を作成・設定しておく

ついでに書いておくと、電源やネットワークのケーブルについても、どのコンピュータにつないであるのかが分かるように、何らかの標記を行っておくようお薦めしたい。間違って、抜くべきではないケーブルを抜いてしまう事故を避けるためだ。

また、ラベルライターでコンピュータ名とIPアドレスを標記して、ミス防止の一助としている

設計図と設定メモを作る

IPアドレスの配分とコンピュータ名のルールが決定したら、ネットワークの構成などの関連情報ともども、設計図をまとめておく。担当者が交代したとき、あるいは何かトラブルが発生したときに、こうした情報が役に立つ。もちろん、何か変動が生じたときには遅滞なく更新しなければならないが、それも管理者が楽をするための秘訣のひとつだ。

また、サーバごとの用途や設定内容、いずれは本連載で取り上げることになっているユーザーアカウントやグループの設定、といった情報についても別途、ドキュメントを作成して記録を残しておく。当然、内容に変動が生じたときには更新しておかなければならない。

ネットワーク構成図の作成例。なにもビジュアルに凝る必要はないが、全体構成や、どこにどういうコンピュータがあって名前とIPアドレスかどうなっているか、が一目で分かるようにしたい

デバイスドライバや更新プログラムの収集

また、セットアップを始める前に準備しておきたいものとして、使用するハードウェアに適合するデバイスドライバや、各種の更新プログラムがある。通常、デバイスドライバはPC本体や周辺機器に添付してある場合が多いが、後からバージョンアップしている可能性もある。メーカーのWebサイトにアクセスして、最新版を入手しておく方が確実だろう。

このほか、サーバ用の各種アプリケーションソフトをセットアップして実行する場合、そちらについても更新プログラムがリリースされている可能性がある。こちらも同様に、メーカーのWebサイトにアクセスして、最新のソフトウェアを入手するようにしておきたい。

Windows自身、あるいはその他のマイクロソフト製品を対象とする更新プログラムについては、いちいちダウンロードして個別にセットアップするよりも、Windows Updateを使って導入する方が手間がかからない上に確実だ。ところが、台数が多くなってくると、いちいちWindows Updateを使ってダウンロードするのでは手間も時間もかかる。

また、この先にWindows Server 2008 R2のService Packが出てくるようになると、それをいちいちコンピュータごとにダウンロードするのは大変だ(本稿を執筆した2010年7月の時点では、Windows Server 2008 R2用のService PackはSP1のβ版が出回り始めた状況で、まだ正式版になっていない)。

しかも、製品のライフサイクルの長さを考えると、Service Packがひとつで済むかどうかは分からない。過去のWindowsサーバがそうだったように、Windows Server 2008 R2についても、複数のService Packがリリースされる可能性がある。そう考えると、通常は最新のService Packを手元にダウンロードして確保しておき、それを手作業でセットアップしてからWindows Updateを実行して最新の状態にするのが、無難な落としどころではないだろうか。