Windows Terminal Preview 1910

Microsoftは現在プレビュー版の段階にあるWindows Terminalを2019年末にはフィーチャーフィックスし、2020年第1四半期、または少なくとも第2四半期には正式版として公開することを考えている。最終的にはMicrosoft Storeを経由して入手できるようになる見通しだ。Windows Terminalがプレインストール対象として出荷されることになるのか、Microsoft Storeからユーザーがインストールする必要があるのか現状では不透明だが、重要なアプリケーションになっていくことは間違いないように思う。

時期的に考えるとそろそろWindows Terminalはフィーチャーフィックスへ向けて収束させる頃合いだと思うのだが、2019年10月に公開された「Windows Terminal Preview 1910」は注目しておきたいと思えるバージョンだった。

Windows Terminal Preview 1910

Windows Terminalについては第197回でも取り上げているが、あれからさらに洗練されてきたので、ここでもう一度取り上げておきたい。

UI/UXの洗練

前回Windows Terminalを取り上げたときには「荒削り」という表現を使ったが、Windows Terminal Preview 1910はその辺りがだいぶ洗練されてきた。LinuxやmacOSでモダンなターミナルアプリケーションを使っているなら「何を今さら」というレベルではあるのだが、こうした変化がWindows Terminalに出てきたのは喜ばしいことだ。

まず、WinUIのバージョンがアップデートされたことでタブビューが改善された。

いくつもタブを開くと範囲を超えたタブにはアクセスできなかったが、このバージョンではタブの左右に配置された<または>のアイコンをクリックすることでタブをスライドさせることができる。ターミナルは複数のタブを開いて使うことも多い。こうした基本的な操作が行えるようになった。UI/UXの動きも以前よりもこなれたものになっている。

ダイナミックプロファイルとカスケード設定

UIのアップデートという点で言うと、ドロップダウンメニューの四隅が若干丸くなった点も注目される。こうした細かい変更が洗練された印象を醸し出しているところもあるだろう。

若干四隅が丸くなったドロップダウンメニュー

Windows Terminal Preview 1910で特に注目しておきたいのは、設定ファイルの扱いが変わったことだ。これまでドロップダウンメニューから「Settings」を選択すると、すべての設定を変更することができたが、この部分が次のように限定的な設定ファイルに変更となった。

ドロップダウンメニューから「Settings」を選択した場合の設定ファイル - profiles.json

このバージョンからは「ダイナミックプロファイル」という機能が動作しており、Windows 10にインストールされているWSL環境などを検出して自動的に設定ファイルを作成するようになった。自動生成されるほうの設定ファイルは「defaults.json」という別のファイルになっており、どちらかと言うとこのファイルが従来の「Settings」で表示される設定ファイルに近い。

defaults.jsonを閲覧/編集するには、Altキーを押した状態でドロップダウンメニューから「設定」を選択する。すると、次のようにdefaults.jsonを編集できるようになる。

環境に合わせて都度生成される設定ファイル - defaults.json

と言っても、defaults.jsonは編集しても意味がない。こちらは都度、生成されるためだ。defaults.jsonの設定を見て、変更したい部分はprofiles.jsonのほうに書き込む。defaults.jsonよりもprofiles.jsonファイルのほうが優先されるので、ユーザーの設定は基本的にprofiles.jsonファイルに書き込むことになる。

このようにデフォルトの設定ファイルとユーザーの設定ファイルを分けるというのは、バージョンアップを行っても設置の不整合などを発生させない方法としてよく使われている。Windows Terminalにこうした機能が搭載されたことで、自由にカスタマイズしつつ、常に最新版へアップデートするということが簡単にできるようになった。Microsoft Storeを経由して定期的にアップデートしていくことを考えると、こうした機能は必須だったと言える。

ユーザーとともに進化し続けるプロダクトに

後は比較的上級者向けの設定となるが、起動時の位置や起動時にフルスクリーンで起動するかどうかも設定できるようになった。ターミナルアプリケーションは、使い込むユーザーはとことん使い込む。すると、表示する場所にもこだわりというものが出てくる。こうした設定ができるようになったことにも注目しておきたい。

「ターミナルアプリケーションにそんなにたくさんの機能が必要なのか」と思うかもしれないが、モダンなターミナルアプリケーションを見ればよくわかるだろう。誰が使うのかよくわからないものまで含めていろいろな機能が用意されている。ターミナルアプリケーションはビギナーよりも中上級者が好んで使うアプリケーションだ。細かい設定ができるかどうか、高度な機能が用意されているかどうかは、そういったユーザーにとってとても重要なことになる。

Windows Terminalの開発は、Microsoftのほかのオープンソースプロジェクト同様、比較的うまく回っている印象を受ける。今後も、LinuxやmacOSユーザーからのフィードバックが取り込まれていくのではないだろうか。正式リリースへ向けて、今後も展開から目が離せないアプリケーションだ。