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ドアの開閉を記録したい

【連載】

IoTでできることを見つけるための発想トレーニング

【第3回】ドアの開閉を記録したい

[2021/08/19 08:00]松下享平(Max) ブックマーク ブックマーク

前回、前々回は「会議室の備品の在庫切れを知らせたい」「コーヒーカップの置き忘れを検知したい」というお題に対して、人が見回りに行かなくても状況を知る手段として、IoTボタンやセンサーを使う方法を紹介しました。まず、人が知らせるのか、それともモノにセンサーを付けて状況を把握するのかを考え、その後、その情報が「どうなったときに」「どう通知するか」という仕組みについて考えることが、IoT活用の第一歩になることを学んでいただけたかと思います。

今回は定常的な業務において、IoTを活用するシーンについて考えていきます。例えば、毎日何かをチェックして紙に記録するような業務がある場合、チェックを自動化したり、定期チェックレポートを作成したりする仕組みにIoTを役立てることはできないでしょうか?

日々の記録業務をIoTで自動化するアイデア

では、今日のお題です。あなたは総務担当で、オフィスの利用状況を管理しています。オフィスには、通常の社員通用口のほかに、お客さま来訪を受け付けるオフィスエントランスがあります。オフィスエントランスは、これまで総務担当やお客さまの来訪がある社員がドアの開閉を担当してきました。

イメージ

ところが最近、リモートワーク推奨によりお客さま来訪も減ったことから、最初の利用者や最後の利用者が自発的にオフィスエントランスを閉めることも増え、ビジネスアワーでもオフィスエントランスのドアが開いていないケースがあることが発覚しました。

そこで、その場にいなくてもドアの開閉状況を把握できるようにしたいと考えています。どのようにIoTを使えば、これを効率的に実現できるでしょうか?

オフィスエントランスのドアに着目した場合、ドアにセンサーを付けて開閉状況を検知する方法が考えられます。最近は、ホームセキュリティでもドアの開閉状況を検知するサービスがありますが、それらのサービスも基本的にはセンサーを使って実現されています。

こうしたケースで設置できるセンサーの種類には、以下のようなものが考えられます。

◆カメラ

カメラがあれば、ドアの開閉以外にも情報が得られそうです。AI技術と組み合わせれば、ドアが開いている状態を検知してドアの開閉を把握するだけではなく、人を検知して人が来た時間を把握することもできそうです。万能である一方、カメラを取り付ける手間とコスト面、画像処理のプログラムをどうやって作るかが課題になりそうです。

◆距離センサー

前回のコーヒーカップ置き忘れ検知で利用したような、物体との距離を把握する距離センサーを使えば、開閉に伴うドアとセンサーの距離で状態を把握できそうです。

◆磁気式リードスイッチ

「リードスイッチ」は、内部にON/OFFの回路を持つシンプルなセンサーです。このON/OFFは光量の強弱や傾き具合で作動させることができます。なかでも、磁気を利用したリードスイッチは、単純な構造ながら非接触で動作できることもあり、ドアの開閉をはじめとして多くの場所で利用されています。

センサー

左からAIカメラ、距離センサー、磁気式リードスイッチの例

そのほか、ドアの開閉を把握する以外のセンシング方法としては、オフィスエントランスの照明がついているかどうかを照度センサーで把握したり、照明のON/OFFのデータを取得したりといった方法も考えられるでしょう。

磁気式リードスイッチでドアの開閉を知る

「簡単に取り付けられ、リーズナブルに始められる」手段である、磁気式リードスイッチについてもう少し説明します。

磁気式リードスイッチには、「磁石部」と「リードスイッチ部」という2つの部位があります。この2つの部位が近づくと、磁気の変化によって近づいた/離れたという状況を検知できる仕組みです。

磁気式リードスイッチ

左がリードスイッチ部、右が磁石部

このセンサーの磁石部をドアに、リードスイッチ部をドアの枠組みに取り付けておけば、ドアの開閉状況を把握することができるというわけです。

ドアの開閉だけではなく、基本的に離れたり近づいたりするモノの活動数をカウントする際、この種類のセンサーは有用です。例えば、ゴミ箱のふたの開閉、業務用冷蔵庫や倉庫の入口の開閉、さらに工場のロボットアームや回転機械のように一定の動きを繰り返すモノにおいては、接触点に設置してカウントすれば、その作業数を記録することも可能でしょう。意外と活用シーンが多いセンサーです。

オフィスエントランスのドア開閉をお知らせする仕組み

では、早速オフィスエントランスのドアの開閉状況を把握するための仕組みについて考えてみましょう。

センサーは先ほど説明した磁気式リードスイッチを利用します。稼働するドアのほうに磁石部を取り付け、配線が必要なリードスイッチ部はドアの枠組に付けると、そのほかの設置が容易になります。

続いて、センサーから出ているケーブルをマイコンにつなぎます。最近は変換コネクタを利用することで、この種のセンサーをハンダ付けなしで、ワンタッチで取り付けられるケースもあります。マイコン側には「磁気式リードスイッチからの信号を受け取ったら、データをクラウドに送信する」というプログラムを書いておきます。

そして、ネットワークです。Wi-FiやBLE(Bluetooth Low Energy)でも良いのですが、オフィスエントランスのようにネットワークの準備が難しいケースでは、セルラー通信(LTE:Long Term Evolution)を使うとすぐに設置できます。

クラウド側には、例えば「朝9時なのにドアが開いていない場合や、夕方18時時点でまだドアが閉まっていない場合は、メールやチャットなどでアラート通知が届く」という設定をしておけば、ビジネスアワーにドアが開いていなかったり、閉まっているべき時間に開いていたりした際、すぐに対処できるでしょう。

また、クラウド側でいったんデータを蓄積する仕組みを用意しておき、週次、月次で最初にドアを開けた時間と最後に閉めた時間をレポート形式で出力できるようにすれば、報告のためのレポート作成も自動で行えます。

* * *

今回は、オフィスエントランスのドアの開閉状況を記録し、必要に応じて開閉についてアラートを通知するシステムについて考えてみました。適切なセンサーを使うことで、比較的手軽に実現できそうなことがおわかりいただけたのではないかと思います。

次回は、「部屋の換気タイミングを把握する」仕組みとアイデアについて考えます。

さらに詳しく!

今回の仕組みは、以下の3点を用意することで実現できます。

イメージ
  1. ドアの開閉を把握するための「センサー」と、センサーと組み合わせて使える「通信ゲートウェイ」
  2. センサーのデータを送信するための「プログラム」と「ネットワーク」
  3. ドアの開閉データを蓄積する「クラウド」と、お知らせする「プログラム」

使うセンサーを絞り込んだら、ぜひ実際にシステムを作って試してみることをお薦めします。実際に試して調整することで、より目的に合ったセンサーをさらに絞り込むことができます。

具体的な開発手順を詳しく知りたい方は、ソラコムが無料で公開しているSORACOM IoT DIY レシピ「IoTでドアの開閉モニタリング」を参考にしてください。

レシピでは、マイコンとゲートウェイの代わりに省電力のLTE通信「LTE-M」内蔵のボタンデバイスを利用し、センサーをつなぐだけでドアの開閉を通知するシステムを開発する方法について、センサーの特徴や配線の説明などを交えて紹介されています。

レシピをご覧いただいて、まず自分で手を動かして作ってみることもできますし、理解が難しい部分があれば自社のシステム部門やエンジニアに相談することも選択肢になります。

著者紹介

株式会社ソラコム
テクノロジー・エバンジェリスト
松下 享平(ニックネーム:Max)

エバンジェリストとして、SORACOMサービスを企業・開発者により理解、活用いただくための講演活動を担当。エバンジェリストとしてのTIPSを紹介するブログも執筆。

最近は、IoTをもっと手軽に使っていただけるデバイスを提供する「SORACOM IoT ストア」にて、IoTで身近な作業を便利に改善する「IoT DIYレシピ」の作成をリード。これからのDXを実現するためのキーテクノロジーであるIoTを民主化し、アイディアとパッションをもつあらゆる人がIoTを使えるようにするべく情報発信を続けている。

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