アナリティクスに取り組む意義

【連載】

デジタルビジネスを加速するアナリティクス、技術動向と推進のポイント

【第1回】アナリティクスに取り組む意義

[2016/06/17 14:51]新田 龍 ブックマーク ブックマーク

データ分析

連載目次

本連載では、主に企業におけるIT部門の読者を念頭に、デジタルビジネスを加速するための全社・部門でのアナリティクスの検討・導入に役立つ視点を紹介していきます。

デジタルビジネスの時代

今、さまざまな業種・業態でデジタルビジネスへの急激な転換が起きています。

小売業では、セブン&アイ・ホールディングスやファーストリテイリングといった先進企業を筆頭に、ネットとリアル店舗を融合した革新的な顧客体験を提供するオムニチャネル戦略が始動しています。

製造業では、自動車メーカー各社が開発競争を繰り広げるコネクテッドカー・自動運転車にグーグルなどのIT企業も参入し、今後数年での業界勢力図が塗り換わると言われています。また、製造業全体では、小型化・高性能化が進むセンサーを活用したIoT技術がこれまでの製造業のあり方を一変させるものとして注目されており、先行するドイツのインダストリー4.0や米国の取り組みに追随するべく、日本国内でもIndustrial Valuechain Initiative(IVI)やIoT推進コンソーシアムなど、企業横断・官民を挙げた取り組みが立ち上がっています。

物流業でも、RFIDをはじめとしたセンサーやモバイルによるリアルタイムのデータ収集・活用によるデジタル・ロジスティクスともいうべき改革が進んでいます。

デジタルテクノロジー

このようなデジタルビジネスの隆盛は、SMACS(Social, Mobile, Analytics, Cloud, Sensor)に代表されるデジタルテクノロジーの発展を端緒としています。

世界の携帯電話の契約数は既に77億件以上と世界の人口を超え 、Facebookをはじめとするソーシャルネットワークのユーザは全世界で20億人とも言われています。また、センサー等を通じインターネットにつながるモノ(IoTデバイス)の数は2020年までに約250億個まで増えるとされています。

これらを支えるプラットフォームとしてAmazon、Microsoft、Googleを3強とするパブリッククラウドサービスは矢継早に新サービスを繰り出しており、全体として年率2桁の成長を続けています。

これらのテクノロジを通じて、ヒト(顧客や従業員)、モノ(製品、店舗や設備)、そしてデータがネットワークを介してリアルタイムにつながり、企業における顧客との接点やオペレーションのあり方を革新しています。 そして、このすべてがつながった世界で収集されるデジタルデータからビジネス価値のある知見を抽出し人間の意思決定を支える、あるいは人間に代わって意思決定を自動化するのが、アナリティクスです。

IT部門の課題

転換期に直面し、一部の企業では「デジタル」や「イノベーション」と銘打った組織を設置しています。デジタルに取り組む企業のうち、約3割がIT部門と別の組織を立ち上げているという調査結果も出ています。

この背景として、従来のIT組織では、既存システムの開発・運用の正確性・安定性が最優先となり、デジタルビジネスの推進に求められる俊敏性が両立できないため、組織を分けるべきという「バイモーダル」、言い換えれば「攻めと守り」の考え方があります。専門組織の設置はリソース面でのハードルや弊害も伴うため、その是非は別としても、テクノロジがデジタルビジネスのエンジンとなり、「攻め」のITが求められているということは間違いありません。

そうした中、IT部門が従来どおりの開発・運用”だけ”に専念していては、デジタルビジネス推進の蚊帳の外に置かれかねません。今こそ、IT部門は「攻め」に取り組むべきです。そして、その中心に据えるべき施策が、IT部門発での全社の「アナリティクス」の推進です。

アナリティクスに取り組む意義

アナリティクスとは、大量のデータから人による意思決定の質とスピードを上げる、あるいは意思決定自体の一部を機械に委譲するための、技術・ツールだけに限らない取り組み全体を指しています。

デジタルビジネスにおいては、ヒト・モノがネットワークを通じてつながり、人の作業を介さずに大量のデータが収集・蓄積されていきます。全世界で1年間に生み出されるデータは2020年までに2013年時点の10倍の44ゼタバイトに達する との予測もあります。

自社データにとどまらず、デジタルマーケティングの領域ではWebやソーシャルネットワーク上の口コミやDMP(Data Management Platform)などの外部データ活用がすでに一般化していますし、公的機関が保有するデータを公開するオープンデータの取り組みも進んでいます。企業間でデータそのものを売買するデータ取引所(エブリセンス日本データ取引所(JDEX))の構想も、実ビジネスとして取り組む事例 が出てきています。

このように増大するデータ資産は、活用して初めて価値を生むものであり、ただ蓄積・保管しているだけでは手間とコストのかかる「お荷物」でしかありません。

一方でデータの活用には、大量データ処理基盤や、ビジュアライゼーション、そして機械学習などの技術・手法が急速に発展しており、俊敏・低コストに高度な分析が実現可能となっています。これらを使いこなし、データから価値を生む取り組みが、企業としての競争力に直結するようになってきています。

アナリティクスの活用

アナリティクスは企業活動のあらゆる側面に適用が可能ですが、事業戦略に基づいてビジネス価値に貢献できるターゲット領域を定め、分析を業務プロセスに組み込んでいくことが重要です。

顧客接点・顧客管理

オペレーション

財務・経営管理

マーケティング施策立案
キャンペーンROI最適化
ブランド評価・改善
営業プロセス効率化

在庫削減
需給最適化
故障検知・予兆保全
物流最適化

グローバル連結原価管理
顧客・製品別利益管理
予算管理最適化
コーポレートスコアカード

アナリティクスの推進にむけて

日本企業では、アナリティクスへの取り組み姿勢は企業によって大きく異なっています。先に挙げたSMACSの中でも、顧客接点であるモバイルやソーシャルや、コスト効果のわかりやすいクラウドは投資が向かいやすく、またIoTの盛り上がりを背景にセンサー技術への投資も加速しています。

一方、アナリティクスに関しては、何らかのツールは導入していても、組織として体系的に取り組むことができている企業は多くありません。

欧米企業ではデータに基づく意思決定が定着しており、トップダウンでアナリティクスへの投資が決まります。一方、日本企業においては現場からボトムアップで施策を上申するケースが多く、定量的な価値を創出できずに立ち上げに苦労している例を非常に多く見ます。

また、アナリティクス実現のため取り組むべき領域は多岐にわたるため、優先度を付けて絞り込んだ施策を実行していくことが望まれます。

そうした背景を踏まえ次回からは、全社・部門でアナリティクスを検討・推進するにあたり、まず何から始めるべきか、何を優先すべきかを決めるための指針となる視点・考え方を提示していきます。

<今後の連載予定>

著者紹介


新田 龍 (NITTA Ryo)

- 株式会社NTTデータ 製造ITイノベーション事業本部 コンサルティング&マーケティング事業部 デジタルコンサルティング統括部 部長

2000年にNTTデータに入社し、2007年には北米拠点に赴任し現地企業へのBI導入に従事。その後一貫して、グローバル企業のBI・データウェアハウス導入の構想策定・導入・定着化コンサルティングを担当。2016年より現職。

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https://news.mynavi.jp/itsearch/2016/06/16/da/index.top.digitalanalytics.jpg
今、さまざまな業種・業態でデジタルビジネスへの急激な転換が起きています。そうした中、IT部門が従来どおりの開発・運用"だけ"に専念していては、デジタルビジネス推進の蚊帳の外に置かれかねません。今こそ、IT部門は「攻め」に取り組むべきです。そして、その中心に据えるべき施策が、IT部門発での全社の「アナリティクス」の推進です。

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