説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりが正しく理解していないこともあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は「Retinaディスプレイが高精細に見えるワケ」についてです。

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iPhone 4から採用が始まった「Retinaディスプレイ」。Retina(レティーナ)を邦訳すると「網膜」ですが、これは「人間の網膜が認識可能な解像度」に匹敵ないしは超えるという意味合いで用いられています。その緻密さは、iPhone 3GSなど以前のモデルと比べれば一目瞭然です。

Retinaディスプレイの緻密さは、画像を構成する点(画素)を高密度で集めることで実現されています。緻密さは、メートル法でいえば25.4mmの長さにどれだけの画素があるかで判断でき、「ppi」(pixel per inch)という単位で表されます。このppi値が高いほうが高密度であり、見る者に緻密な印象を与えることができるのです。

ちなみに、iPhone 3GSは163ppi、初代iPadとiPad 2は132ppiでした。一般的なパソコンのディスプレイも100~120ppi程度ですから、iPhone 4/4S/5の画面を見たとき緻密さを感じるのは当然です。

しかし、ここで疑問に思う人もいるはず。iPhone 3GSと4/4S/5では画素密度に大きな違いがあることは理解できたけれど、密度の違いが同じ画像データで実現できるの……?

いえいえ、実は、アプリには解像度に応じた複数の画像データが収録されています(Retinaディスプレイ対応のアプリの場合)。Retinaディスプレイ搭載のiPhone 4/4S/5では、画素数の多いアイコンを表示することで、緻密さを保っているのです。拡大処理するという方法もありますが、そうなるとRetinaディスプレイではぼやけ気味の画像になってしまいます。

反対に、Retinaディスプレイでは緻密に感じられる画像をそれ以外の環境で表示すると、どうなるでしょう? そう、とても大きく見えるのです。たとえば、326ppiのiPhone 5は、約100ppiのパソコン用ディスプレイに比べると"物理的に同じ面積に約3倍画素が詰まった"状態ですから、同じ画像でも3倍の大きさに見えます。

実際、iPhone 5に物差しをあててアイコンの大きさを測ったところ、1辺は約9mmでしたが、100ppiのパソコンモニタ上にiPhone 5のスクリーンショットを実サイズで表示したところ、1辺は約27mmでした。一見同じに見えても、Retinaディスプレイのほうが"情報が詰まっている"からこそ、緻密に感じられるわけです。

2013年10月29日12時50分追記 記事初出時にRetinaディスプレイの緻密さの説明において、「メートル法でいえば25.4×25.4mmの範囲に……」としておりましたが、正しくは「メートル法でいえば25.4mmの長さに」となります。該当部分を修正いたしました。

写真で解説

左が従来の解像度、右がRetinaディスプレイに対応した解像度のアイコンです。Retinaディスプレイ用のほうが、約4倍情報量が多いことがわかります

Retina対応iOSアプリの内容をファイルブラウザで表示したところ。通常解像度と高解像度(@2x)の2種類の画像ファイルがあることがわかります

iPhone 5のスクリーンショットを100ppiのパソコンで表示し、そこにiPhone 5を並べたところ。アイコンの物理的な大きさが約3倍違うことがわかります