シャープは20日、LED電球新製品のプレス向け説明会を実施した。同社は、2009年8月にLED電球600/400シリーズを発売するまでは(発表は6月)、照明関係にはほぼ参入していなかった。その同社が発表したLED電球は、大きなインパクトのある製品だった。国内で電球に匹敵する明るさを持ち、電球を置き換えられるLED電球が普通に販売されるようになったのは、2009年3月に東芝ライテックが発売した「E-CORE LED電球」の「一般電球型4.3W」からのことで、それほど古い話ではない。一般電球型4.3Wのメーカー希望小売価格は1万500円。それから僅か半年で、店頭で販売されているLED電球の価格が、まだ6,000円~1万円といった時期に、同社は、白熱電球の60W形相当の明るさのLED電球を4,000円前後、同じく40W形相当のLED電球を3,900円前後という価格で発売した(ここでの価格は発表当時の推定小売価格)。低価格化が現在のLED電球の普及の大きなポイントとなっているのは知っての通りだ。当時、他のメーカーのに取材をしたところ、「思い切った価格設定だが、我々もできる限り追随する」というのが、大方の意見だったと記憶している。その後、低価格化に加えて、エコポイント制度の後押しもあり、LED電球の普及は大きく進んでいる。同社によると、今年に入ってからのLED電球の市場規模は、震災前の1~2月が80万個/月程度、3月が約110万個、4月が約180万個、5月が約220万個と、節電意識が高まるにつれて伸びており、年間では2,700万~3,000万個といった数になる見通しとのことだ。
今回の説明会で取り上げられた製品は、6月17日に発表した、E26口金に対応したLED電球「DL-LA51N」「DL-LA44L」と、6月29日に発表した、E17口金に対応したLED電球「DL-JA41N」(昼白色相当)「DL-JA32L」(電球色相当)、そして同日に発表した、E11口金に対応したハロゲン電球代替タイプのLED電球だ(ハロゲン電球代替タイプに関しては、店舗用という意味合いが強いため、発表時には家電チャンネルでは取り上げていない)。
説明を担当したのは、LED照明事業推進センター副所長兼商品企画部長の桃井 恒浩氏。
まず、取り上げたのがハロゲン電球代替タイプ。50Wタイプのハロゲン電球に相当する明るさを持つ。ハロゲン電球代替タイプには、Raが84と94の2種類に(Raは、白熱電球を100とした場合の演色評価数。この数値が高いほど、演色性が高いということになる。一般に高演色タイプのLED電球は、Ra80以上のものを指すことが多い)、それぞれビーム角が、狭角(14度)/中角(20度)/広角(33度)の3種類、計6製品がラインナップされている。単一の光源から発する光をコントロールすればよいハロゲン電球と比べて、複数の光源を使用したハロゲン電球代替LED電球のレンズは複雑な構成を取る必要があるため、ハロゲン電球代替LED電球で狭角タイプがラインナップされているケースは、それほど多くはない。ビーム角の種類を選べることで、商品のスポットや、広い範囲のライトアップなど、用途に応じて使い分けることが可能となっている。全光束は、Ra84のタイプが390lm、Ra94のタイプが290lmとなっている。価格はオープンで、市場価格はいずれも4,000円前後。
桃井氏によると「ハロゲン電球代替タイプのなかで、最大の明るさを持つのが特徴」とのことで、Ra84の狭角モデルでは、2,300cdという明るさを実現している(一般的なハロゲン電球代替LED電球では1,800cd前後)。また、Ra94というのは、非常に高い演色性能。演色性の高いランプと低いランプとでは、とくに赤系の発色で差が生じ、演色性が低いランプでは、赤はくすんだ色になってしまう。桃井氏によると「Ra94のモデルは、飲食店などを意識したプロ向けの製品として開発した製品。Ra84のモデルは、その他の店舗や家庭などでの使用を考えたモデル」とのことだ。
なお、ハロゲン電球代替タイプ以外の、同社の一般家庭向けのLED電球では、今回の説明会に登場したE17口金タイプ/E26口金タイプも含めて、Ra値は公開されていない。その後の質疑応答で「ハロゲン電球代替タイプだけでなく、一般家庭向けのLED電球の演色性能の向上は」という質問に対して、桃井氏は「現在、一般家庭向けのLED電球で目指しているのは、広配光。高演色は、その先のステップ」と答えている。
続いては、E17口金に対応した小型電球タイプのLED電球。「E17口金タイプのLED電球の特徴となっているのが、低価格化。このところ、E17口金タイプのLED電球の普及は急速に進んでいるが、価格は、E26口金タイプに比べると割高で、およそ1.5倍といった店頭価格が付けられている。それに対して、新発売の2製品は、E26口金のモデルと同程度の価格を実現。これを最大の特徴としている」と桃井氏。E26口金タイプのLED電球は、店頭価格2,000円前後が主流となっているのに対して、E17タイプは3,000円前後が主流。それをE26口金タイプと同レベルの2,000円前後にまで引き下げるというのが、今回の新製品の特徴ということだ。質疑応答で、低価格化は量産効果の現れかという質問に対して、「ここまでの価格低下を量産効果だけで可能にするには、それまで100万個だった需要が1,000万個になるといった1桁レベルの増加がないと不可能」とのことで、価格低下は、コストダウンによるものとしている。
また、低価格化と同時に形状のスリム化も行われており、従来は装着しにくかった器具での使用も行えるようになっている。従来の同社のE17口金タイプのLED電球は、ケースに放熱のための凹凸が付けられていたが、新モデルではそれがなくフラットなものとなり、その分本体もスリムになっている。これについては、「従来は、ケースに放熱用の凹凸が付けられていたが、放熱用の凹凸とLED、そして電源部との間には空間があった。熱を伝えにくい空気ではなく、今回はそこに 熱伝導率の高い樹脂を封入。これによって、スリムでフラットな形状でも十分に放熱が行えるようになっている」とのことだ。
E26口金に対応したLED電球「DL-LA51N」「DL-LA44L」は、従来のモデルに比べて、広い範囲に光が拡がるという点を特徴とするモデル。桃井氏によると、光を拡散するための導光チューブを採用することで、配光を拡げているとのことだ。従来のLED電球では、光るとその中心が明るく見えたが、新モデルではそのようなことがなく、LED電球全体が輝いているように見える。こちらも、発表時の推定小売価格は2,300円前後。広配光タイプということで、高付加価値型ではあるが、普通の製品よりも価格を上げた製品とはなっていない。桃井氏によると「例えば、量販店では、我々のような国内メーカーの技術が使われていない中国製品などを「PB」として低価格で販売しているケースがある。これが、LED電球の価格を上げられない大きな理由」とのことで、今後も、LED電球の低価格化は続くとの見方を示した。
これらの製品/説明から見えてくることは、同社はあくまでも、普通の電球を置き換える製品をメインとしてやっていこうという姿勢を貫いているという点だ。高付加価値で高価格な製品にシフトするのではなく、高付加価値であっても価格競争力の高い、つまり、我々一般ユーザーが気軽に購入できるような価格帯の製品が、おそらくこれからも同社のラインナップの中心であり続けるだろう。