まもなく平成が終わりますね。平成最後の2月、SNS界隈では一大ニュースがありました。それが「バカッター」、または「バカスタグラム」と呼ばれる不適切な投稿です。

SNSにアップされた不適切な投稿は、テレビやラジオでも大きく取り上げられたのでご存じの方が多いでしょう。飲食店の厨房で食材を床に擦り付けたり、コンビニでおでんを食べて吐き出したり……。

主に大手チェーン店を舞台に繰り広げられる悪ふざけは、誰もが身近に利用する店舗で撮影されているため、見ている側の不快感は相当なものです。もちろん、企業としても迷惑どころの話ではなく、謝罪文を出し、再発防止のために休業して社員教育に取り組むなど、対応に追われました。

  • 不適切なSNS投稿の炎上が後を絶ちません。なぜやってしまうのか……

こうした不適切な投稿は2013年ごろにも問題になり、当時はTwitterに投稿されていたので「バカッター」と呼ばれました。Twitterへの投稿は主に静止画でしたが、今回はInstagramへの動画が発端となったケースが多かったため、「バカスタグラム」という言葉が誕生しました。

なぜ若い人たちは、SNSに不適切な投稿をしてしまうのでしょうか。

24時間で消えるストーリーへ内輪向けに投稿

いま、Instagramへは2つの投稿方法があります。それは「フィード」と「ストーリー」です。フィードはInstagramが始まったときからある、通常の投稿です。一方、ストーリーは2016年にサポートされた新しい機能で、投稿から24時間が経過すると自動で消えます。文章や写真も投稿できますが、多く見られるのは5秒程度の短い動画です。

友達がジュースを飲んでいる様子や一緒に変顔してるところなど、たわいもない日常がシェアされます。キラキラ盛れていなくても、一定の時間が過ぎれば次のストーリーに切り替わるのでじっくり見られることはなく、しかも24時間たてば跡形もなく消えてしまいます。最近のInstagram人気は、このストーリーにあるといっても過言ではありません。

今回の不適切動画は、このストーリーに投稿されました。彼らのSNSは友人同士の交流に使われてるので、仲間うちにふざけている様子を見せたいという、気軽な気持ちで投稿したのでしょう。もしかすると、フォロワーに限定公開だからと安心していたのかもしれません。しかし、それを見た誰かが動画を保存し、Twitterに投稿すれば、瞬く間に拡散します。動画はYouTubeにもシェアされます。YouTubeではバカッター系の動画は炎上しやすいため、「バズる」コンテンツとして次から次へとコピーされていくのです。

バカッター系の投稿は男子が目立ちますが、女子でも投稿が問題になる人もいます。検索すると今でも、未成年なのに喫煙している画像や、店舗で騒ぐ動画などが残っています。一度ネットに流れてしまうと、完全に消すことは難しいですよね(というかまず不可能)。

誤解の炎上被害も

私が以前取材した女子高生は、誤解から炎上に巻き込まれたことがあると話してくれました。Twitterに友人と遊んでる写真をアップしたところ、飲んでいるジュースがお酒に見えると知らない人が騒ぎ出し、「未成年飲酒だ!」と拡散されてしまったそうです。

彼女たちはSNSのプロフィールに本名や学校名を載せていることが多く、載せていなくても顔や制服の写真を公開しているため、すぐに個人を特定されてしまいます。複数のTwitterユーザーから学校や警察に通報すると脅されたそうですが、そもそも飲酒していないため、彼女から相談したのだそうです。「あとは親がやってくれたけど、大丈夫でよかった」と話す彼女に、同席した女子高生も真剣に耳を傾けていました。

ネットは怖いという認識は何となく持っている彼女たちですが、実際に炎上に巻き込まれた人がいると気が引き締まるようです。「それからはTwitterを非公開にしてる」と彼女が話すと、「私も非公開にしよう」という声が上がりました。

幼いころからネットに触れ、毎日スマホを手にして遊んでいる若い世代は、SNSへの投稿も気軽です。年ごろの娘さん息子さんを持つ保護者の皆さん、バカッターやバカスタグラムがどれだけ格好悪く、無責任なことなのか、また個人情報を表に出すことで起きる問題点などを、日ごろから家族で話し合ってくださいね。

著者プロフィール
鈴木朋子

鈴木朋子

ITライター・スマホ安全アドバイザー。SNSやスマホなど、身近なITに関する記事を執筆。10代のスマホカルチャーに詳しく、女子高生とプリクラにも出かける。趣味はへんてこかわいいiPhoneケース集め。著書は「親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)など20冊を超える。