NTTドコモは1月28日に行った決算発表会で2011年4月から実施するSIMロック解除についての概要を説明した。4月1日以降に発売される全ての機種でSIMロック解除が可能となり、ドコモショップに持ち込むことで解除できる予定だという。日本ではSIMロック解除のメリットを享受できる消費者の数は未知数だが、お隣中国ではこの動きを大歓迎しているようだ。

日本の端末が中国でも人気

ドコモの端末がSIMロック解除されれば、同じ通信方式を採用する他の事業者のSIMカードを装着して利用することができるようになる。だがドコモのフィーチャーフォンはiモード以外のWeb接続設定が行えないため、他社SIMカードでは音声通話やSMSなど一部の機能しか利用できない。一方スマートフォンならばアクセスポイント(APN)の設定を行うことで、他社SIMカードを装着しパケット通信も行えるようになると考えられる。

とはいえ他事業者のSIMカードを利用するには回線契約を別途行わなくてはならない。また海外で現地のプリペイドSIMカードを利用できるようにもなるが、SIMカードを入れ替えている間は普段日本で使っている電話番号やメールが使えなくなるというデメリットもある。すなわち日本でNTTドコモの回線しか利用しない層にとってはロック解除する必要性はあまり感じられないだろう。

だが日本の端末のSIMロックを大きく歓迎している消費者が存在しているのだ。それは中国などアジア各国の携帯電話ユーザーである。現時点でも日本の端末がこれらの国には流出しており、現地のSIMカードを装着して利用されている。ただしSIMロックが解除されていないために通称"SIMゲタ"と呼ばれるICフィルムを現地のSIMカードに貼り付けて利用されているケースが大半だ。

このSIMゲタはSIMカード情報を偽装するもので、当初は強力なSIMロックがかけられているiPhone用として登場した。SIMゲタをSIMカードに張り合わせることで、そのSIMカードを北米の通信事業者、AT&Tのものと誤認させ、iPhoneで現地SIMカードが利用できるようになるというカラクリである。そしてその技術はそのままSIMロック解除ができない日本の端末へと応用され、中国などで広く利用されているのである。

中国のBaiduでドコモのSIMロックを検索、多数のニュースや情報がみつかる

日本メーカーの人気が回復する?

これらの国ではそもそも携帯コンテンツの利用もあまり進んでおらず、音声通話とSMSさえ利用できれば十分というユーザーが多い。そして日本の最新スタイルの端末はアジアの若い層に人気が高い。ただしSIMゲタを装着した携帯電話は電源ON/OFFや圏外からの復帰でSIMカードが使えなくなることもあるなど使い勝手に難点もある。また日本からの輸入端末もきちんとした動作保証されて販売されているわけではない。そのため日本の携帯電話を使いたいと思っても、二の足を踏んでいる消費者も多いのだ。

だがSIMロックが正式に解除された端末が今後日本で入手できるようになれば、それらの端末を海外の消費者が利用するのは自分のSIMカードを装着するだけと簡単だ。現在も世界各国では他国で販売されている端末を輸入販売しているショップが多数あるが、そこで取り扱われている製品と日本の端末はなんら変わりの無い、SIMロックの無い輸入端末となる。そのため今後は日本から海外へ端末を輸出する動きも加速化するだろう。

日本の端末を独自に輸入販売する海外の専門店

また日本では使い古しの端末は事業者が無償で回収し貴金属として再生している。だがSIMロックが解除されるようになれば、中古端末は海外で再利用価値のある製品となり有償で引き取る業者も増えるだろう。今後は使われなくなった自転車や家電のように、携帯電話の中古も日本から多数海外に輸出されるようになっていくのではないだろうか。

世界的なスマートフォンブームの中、海外でも今ではフルタッチスタイルかQWERTYキーボードを備えた端末が流行だ。だが大型ディスプレイを搭載した折りたたみ形状の携帯電話はもはや日本メーカー以外が作ることは少なく、このスタイルの端末が好きなユーザーの選択肢は他に無い。日本メーカーも今後はスマートフォンにシフトし海外展開を視野に入れているが、確実にいる"折りたたみスタイル携帯電話"ファンは今後日本でSIMロック解除された日本メーカー端末に大きな注目を寄せていくだろう。現地の正規販売品ではなく並行輸入品であろうとも、日本メーカーの人気がこれから再燃する可能性は高いのだ。