iPhoneの最近のモデルを使っているユーザーなら背面のマグネット機能「MagSafe」を便利に使っているでしょう。ワイヤレス充電台をずれることなく貼り付けたり、あるいはカードの入るサイフをつけたり、他にもモバイルバッテリーを装着するなどスマートフォンの「合体」操作が簡単に行えます。

Andoridスマートフォンの中にも類似の機能を持った製品が少しずつ出てきていますが、同じマグネットを使いながらも実は接触式の接点を使う技術も便利かもしれません。

  • スマホの背面に「マグネット+接点」で装着するMagconn

Magconnは1円玉くらいのサイズの接点にマグネットが内蔵されています。そしてその内側に端子があり、物理的に接触して通電やデータ通信が可能です。海外ではこの機能を背面に内蔵したスマートフォンが販売中。Crosscallの「ACTION-X3」というモデルで、業務用にもしっかり使えるタフなモデル。IP68の防水、MIL-STD-810L規格に加え、IK02という聞きなれない耐衝撃性にも対応。背面にはMagconnの端子が埋め込まれています。なおCroscallはこの規格を「X-LINK」と名付けています。

  • CroscallのACTION-X3。背面に見えるのがX-LINK / Magconnコネクタ

マグネットの強度はかなり高く、サイズの大きいバッテリーもしっかり固定できます。Croscallは6,000mAhのX-LINKバッテリーを販売していますが、Magconnの業務用端末に使える約4万mAhの巨大なバッテリーも装着できました。

  • バッテリー側にも端子が見える

  • 4万mAhの巨大バッテリーも取り付けできた

Magconnのメリットはこのように重さのあるものも貼り付けできることですが、それだけではなくデータ通信にも対応します。写真に見える小さいコイン状のものは、実は外部メモリ。背面に貼り付けることで、メモリ内のデータを見たり、メモリに写真や動画を保存することもできるのです。マグネットを使って物理的に接触させるという従来の技術を使うことで、簡単にははずれない外付けメモリを実現できたわけです。なお、データ転送は480Mbps、USB2.0規格。技術的には2Gbpsの高速通信も可能とのこと。

  • コイン型のメモリ

  • 背面に貼り付けるとスマホからメモリを読み書きできる

他にもカースタンドなどにMagconnは応用できます。スマートフォンの向きも縦向き、横向きなどマグネットを使うので自由自在、なかなか便利に思えます。スマートフォンメーカーがMagconnを内蔵しなくとも、Magconnを内蔵したケースがあれば便利でしょう。実際に過去にはiPhone用のMagconnケースが発売されたこともあったそうです。しかしバッテリーとスタンド、メモリ以外の用途が広がらなかったことから、現在はMagconn内蔵ケースは販売されていません。

  • 車載用のスタンドにもMagconnは使える

Magconnは現在も開発キットを出しており、様々な用途展開を狙っています。とはいえこの手の独自の規格は「鶏が先か、卵が先か」の議論同様、採用メーカーが増えなければ盛り上がりませんし、バッテリーやメモリなどの製品が多数展開されていなければメーカー側も採用に踏み切りにくいところです。

  • Magconnの開発キット

このようにスマートフォン向けには普及が進んでいないMagconnですが、実は業務用には採用が進んでいます。日本のファミリーレストランでもこのMagconnに対応したタブレットが使われているのです。確かにファミリーレストランの中にはタブレットを使って注文できるところが増えていますよね。しかし、USBケーブルでの充電ではコネクタ部分が破損してしまったり、接触不良で充電できないなんてトラブルも起きやすくなります。

  • Magconn内蔵タブレットが日本でも利用されている

そこで、タブレットがMagconn対応なら、使わないときはスタンドにマグネットで張り付けて置いておくと同時に本体が充電できます。お客さんも注文が終わればスタンドにタブレットを戻すでしょうから「常に」「確実に」充電できるわけです。

なおMagconnの優れている点として、複数の対応機器を重ねて通電することも可能です。ファミリーレストランに納入されている例では、タブレットのスタンドの裏側にMagconnの充電ケーブルが接続されています。これでスタンドを挟んでタブレットが充電できるのです。

  • ファミリーレストランでの設置例

また電源が遠い場所ならば充電ケーブルの代わりにバッテリーを貼り付けて使うことも可能。Croscallのスマートフォンに貼り付けたバッテリーは、実はこのファミリーレストラン向けのシステム用に販売されているものでした。

  • 電源が遠ければバッテリーを貼り付けて使える

個人的には自宅のタブレットでもこのMagconnが使えればスタンド兼充電台として便利に使えると思いました。一般ユーザー向けにサムスンやシャオミのスマートフォン用の「Magconn内蔵背面カバーの3Dプリンター設計図とMagconnのコネクタ1つ、バッテリー1つ」のようなキットがあればユーザーが増えるかもしれません。全く新しい技術ではないものの、新たな使い道がまだこれから見つかるかもしれません。