スマートフォンが生活必需品となった今、万が一破損させて動かなくなったら修理に出さなくてはなりません。しかし修理に数日もかかってしまえばその間は動画を見たり地図検索もできなくなりますし、仕事の連絡も滞ってしまいます。「スマホが自分で自宅で修理出来ればいいのに」と思ったことのある人もいるでしょう。ところがそんなスマホが存在するのです。

Teracubeのスマートフォン「Teracube 2e」は本体を簡単に分解でき、自分で修理することもできる製品です。2020年10月現在、クラウドファンディングで資金調達を行っており、すでに目標額を集め、あとは生産を待つばかりとなっています。早期出資者向けの価格は99ドル(約1万円)。定価でも199ドルと手ごろな価格のスマートフォンです。

  • 自分で修理ができるTeracube 2e

Teracube 2eはチップセットにローエンドスマートフォン向けのHelio A25を搭載。メモリ4GB、ストレージ64GB。カメラは1,300万画素+800万画素、フロントカメラは800万画素。ディスプレイは6.1インチ1,560×720ピクセルで、スペックを見ると価格相応のエントリーユーザー向けの製品です。しかしOSはAndroid 10を搭載していますし、外部端子はマイクロUSBではなくUSB Type-Cを採用。バッテリーは4,000mAhと大型のものを搭載しているため意外と使えそうな製品です。

これだけ安いスマートフォンですから、壊れたら買い替えればいいと思うかもしれません。しかしスマートフォンを使い捨てて廃棄物を増やすことは環境破壊に繋がります。Teracube 2eのボディーは25%のリサイクル素材を利用したポリカーボネート製、またパッケージの紙もリサイクル紙で出来ておりパッケージサイズも一般的なスマートフォンより25%小さいとのこと。製品として販売される時点で地球環境を考えた「持続可能=サステナビリティ」が考えられているのです。

  • 自分で修理も可能、サステナビリティを考えた製品だ

また故障時は自分で修理ができるだけではなく、4年保証がついているのでヨーロッパの一部地域であれば送料無料で送付し、修理品を送り返してもらえます。3年間のOSアップデートも保証されているため、ローエンドな製品ですが長い期間使うことができます。

取るに足らない性能ではあるTeracube 2eですが、特徴の一つとして、背面カバーを外してバッテリーを簡単に交換することが可能となっています。スマートフォンも1年間も使えばバッテリーが劣化してしまいますが、Teracube 2eはバッテリーさえ交換すれば常にフルパワーで使えます。もちろんバッテリーの交換に修理費用は要りませんし、自分で交換できるのでその時間も一瞬です。どうせなら1年後にバッテリーを1個送ってくれる「バッテリー交換プログラム」なんてサービスも提供してほしいものです。

  • バッテリーは簡単に交換できる。4,000mAhと容量も大きい

さてスマートフォンの修理というと難しいと思うかもしれませんが、Teracube 2eはYouTube上に分解方法の動画が公開されているのでそれを見れば誰でも分解ができます。背面カバーとバッテリーを外したら、あとは時計ドライバーで上側、下側のネジを外してカバーを取り出すと分解完了です。ネジの数は全部で20本弱なので失くさないように気を付けたいもの。

  • ドライバー1本でここまで分解できる

この状態では基盤にディスプレイが取り付けられたままですが、恐らく製品が出荷されてからこの先の分解工程も動画などで公開されると思います。Teracubeによるとディスプレイが破損したときの交換費用は59ドル(約6,200円)。これは新しいディスプレイの価格で、基盤からディスプレイ部分だけを取り外して交換できるということでしょう。なお同価格帯の他社のスマートフォンならディスプレイの交換費用は100ドルから200ドル。下手すると本体を買い替えたほうが安上がりになってしまいます。

  • Teracube 2eのディスプレイ交換費用は他社製品よりも安い

Teracubeは昨年に初代モデル「Teracube」を発売しましたが、価格は349ドル(約3万7,000円)でした。日本では現在シャオミの「Redmi Note 9S」が2万4,800円で販売されていることからもわかるように、すでに海外でも2万円台で十分な性能を持ったスマートフォンが販売されています。

初代Teracubeはその思想は優れていたものの、価格競争力が無く販売は思わしくなかったと推測されます。Teracube 2eはTeracubeのCPUやディスプレイサイズをスペックダウンすることで価格を大きく引き下げました。中国メーカーの低価格モデルに十分対抗できるだけではなく、改めて地球環境に意識を持ってもらう製品として登場したのです。

  • 環境への意識を持ってもらおうという狙いもある

なお日本では電波法の絡みもあり自分でスマートフォンを分解することはできないと思われるため、残念ながらTeracube 2eを自己修理することはできないかもしれません。またスペックが低いこともあり日本市場ではこのままでは受け入れられないでしょう。しかしスマートフォンを修理しながら長い期間使いたいと考える消費者も少なからずいるはずです。Teracube 2eが成功したら、次は若干スペックを引き上げたモデルも投入してほしいものです。