海外旅行が自由にできるようになるまでにはまだ時間がかかりそうですが、日本からの渡航先として人気の高い台湾では6月末から5Gサービスが始まりました。日本人が台湾に行って5Gの高速サービスを利用できる日もそう遠くないうちにやってくるのはないでしょうか。

  • 台湾では3キャリアが5Gサービスを開始した

先行して5Gサービスを開始する中華電信、台湾モバイル、FarEastoneの3社は3.5GHzと28GHzの周波数帯で5Gを開始します。この周波数は日本とほぼ同じものを使うため、日本の5Gスマートフォンを持ち込んで台湾で5Gローミングを使うこともいずれできるようになるでしょう。また台湾モバイルはプリペイドSIMによる5Gサービスも開始しています。現時点では旅行者向けのプリペイドSIMではないものの、こちらもいずれ外国人が使えるようになると思われます。

  • 台湾の5Gは3.5GHzと28GHzを主に利用する

台湾で5Gが使えるようになれば、出張や観光中のスマートフォンの使い方も大きく変わります。5Gは高速なうえに遅延が少ないため、ビデオ通話をするときにも相手の顔がより鮮明に写り、音声も途切れず、さらにこちらのレスポンスにもすぐに応えてくれます。

出張で訪問した先の工場のWi-Fi環境が悪くとも、5Gのスマートフォンで機械の動く様子を日本の本社にビデオ通話で見せて、即時に対応してもらう、なんてこともできるわけです。これを4Gのスマートフォンでやろうとすると、画質が悪い上にこちらの質問と相手からの回答に数秒のずれが生じてしまい、うまく会話が続かなくなってしまいます。

またスマートフォンを使ったライブ配信もより高画質な動画を送ることができます。台湾と言えば夜のマーケット、「夜市」が有名です。5Gスマートフォンを片手にお店を周りながら、視聴している人たちに「何が食べたい」などと会話しながら現地の様子を見せることもできるわけです。なお撮影前にお店の人に一言許可をもらうのは当然ですね。

  • 台湾に行けるようになったら、夜市から5Gスマホでライブ配信をしたいもの

このようにスマートフォンで5Gを使うメリットは映像を流すときに感じられるかもしれません。SNSやネット検索といった操作では、4Gでも十分使い物になります。今日本で4Gのスマートフォンを使いながら、LINEのチャットで不自由を感じることはほとんどないと思われます。しかしYouTubeを見ているときに、急に画質が悪くなってしまったり、長い動画なので先を見ようとしてもなかなか次のシーンが再生されない、といったこともあるでしょう。5Gを使えばYouTubeの画質が落ちることも無く、またサクサクと好きなシーンを自在に見ることができます。

とはいえ5Gは料金が高くなるかも、という心配もあります。日本ではドコモ、KDDI、ソフトバンクが3社とも事実上の使い放題プランを提供していますが、4Gと比べて極端には高くなっていません。

台湾ではFar EasToneが4Gデータ定額プランを499台湾ドル(約1,800円)/月で提供しているのに対し、5Gのデータ定額では1,199台湾ドル(約4,400円)/月と2倍以上の料金となっています。5Gの一番安い料金は599台湾ドル(約2,200円)/月で使えますが、利用できるデータは24GBのみ。5GではYouTubeも高画質で見ることが当たり前になるので、24GBだとあっという間になくなってしまうでしょう。そうなると5Gでも定額プランが必要となるため、台湾では従来よりも高い通信料金を払う必要がありそうです。

  • キャリアは5Gの加入促進ため様々な割引キャンペーンを行なっている

でも5Gのメリットは高速なデータ通信だけではありません。4Gでは実現しにくい、5Gならではのサービスを利用できるのです。たとえば中華電信はビデオストリーミングサービス「Hami Video」で映画やドラマを高画質で配信します。さらにはスポーツや音楽番組を複数のカメラを使って複数のアングルから視聴したり、自分の見たい部分を拡大して視聴できる「オムニビュー」配信も提供。中華電信は台湾プロ野球の楽天モンキーズの試合中継を同方式で配信するほか、韓国で5Gサービスを提供するキャリアのLG U+と提携し、K-POPアイドルの音楽ステージをオムニビューで提供します。

  • LG U+が韓国の5Gで提供しているオムニビュー。好きなアングルを切り替えて視聴できる

他にもVRを使ったエンタメ放送、ARを使ったフィットネス番組など5Gならではのサービスを各社は展開しています。また台湾はPCゲーム利用者も多くモバイルゲームもメジャーな存在です。スマートフォン本体にはゲームをインストールせず、クラウドにあるゲームを5G回線を使って直接利用するクラウドゲームサービスも人気になりそうです。

  • 5Gならスマホにゲームを入れず、クラウドのゲームを直接プレイできる

そして最新のスマートフォンも5Gに対応しており、そのパフォーマンスを十分活かすなら5G契約をしたほうが有利です。台湾ではシャープの「AQUOS R5G」が日本国外で初めて発売になりました。価格は3万4,990台湾ドル(約12万7,000円)と高価ですが、価格に見合った性能を搭載しているのは日本で発売された製品を見ればあきらかでしょう。8Kや4Kの動画を撮影してクラウドにアップロード、なんてことも5Gなら快適にできます。

  • 台湾でも発売になったAQUOS R5G

台湾の5Gサービスはハイエンドスマートフォンを使いたい人が先行して使い、料金の引き下げやエリアの拡大、さらに低価格な5Gスマートフォンが出てくるころ普通の人たちの間に広がっていくでしょう。その普及の度合いは日本も同じかもしれませんね。最後に台湾モバイルが提供している5GのプリペイドSIMを紹介します。

  • 台湾モバイルの5Gと4GのプリペイドSIM料金

5GプリペイドSIMは有効期間が60日で12GBが利用可能なところ、5G開始に合わせて60GBのキャンペーンが提供されています。価格は999台湾ドル(約3,600円)。4Gなら30日間データ定額で899台湾ドル(約3,300円)というプランがあるのですが、より高速な回線を2か月間使えるならこの料金は納得できるレベルでしょう。

このプランが旅行者でも使えるようになり、日本から持ち込んだ5Gスマートフォンに入れて使えるようになれば、台湾出張や台湾旅行もより有意義で楽しいものになりそう。新型コロナウィルスが1日でも早く収束に向かうことを願いたいものです。