日本にも上陸したOPPOやライカカメラで有名なファーウェイなど、中国のスマートフォンメーカーは今では世界中に進出しています。人口13億人を抱える中国は国内のスマートフォン需要だけでも年間数億台を誇ることもあって、数多くのメーカーが乱立するという状況にあります。

その中の一つ、Sugar(シュガー)は女性をターゲットとしたスマートフォンブランドです。親会社はフランスのWikoも傘下とするTino Mobile。Sugarはスワロフスキーのクリスタルで全身を纏った「キラキラスマホ」を送り出すなど、他のメーカーにはない独自の製品展開を繰り広げています。

  • 女子向けスマホを送り出しているSugar

Sugarのスマートフォンは中華圏を中心に展開されています。台湾では大手キャリアと提携して美しいボディーデザインとセルフィー機能を売りに端末を販売しています。最新モデルの「S11」は、側面のワンタッチアクセスボタンの表面にスワロフスキークリスタルをワンポイントとしてあしらっています。セルフィーの美顔モードも備え、自撮りの好きな台湾女性をターゲットにしています。

  • 台湾ではキャリアと組んで大々的に売り出している

とはいえSugarはまだマイナーな存在です。そこでブランド展開を広げるために、様々な試みを行っています。例えば中国の深センの空港では、出発フロアーの制限エリア内にカフェを出店しています。飛行機に乗る前にちょっとお茶でもしたい女性たちを呼び込み、製品を知ってもらおうという作戦です。

  • 深セン空港にあるSugarのカフェ

カフェ側にはコーヒーなどの飲み物に加え、特製のマカロンセットなども販売されています。実はSugarもフランスブランドをアピールするという施策を打っていたこともあり、マカロンという名前のスマートフォンを販売していたこともありました。女性ターゲットという観点からは、かわいいカフェの出店もブランド展開の一環としては正しい方向でしょう。

  • カフェスペースは「Sugar Cafe」としてかわいいお店の雰囲気

  • Sugarオリジナルのマカロンセットも販売

そして店舗側にはSugarの最新スマートフォンに加え、モバイルバッテリーやケーブルなどを販売しています。コーヒーを飲みながらちょっとSugarのスマートフォンを試してみて、ここでついつい買ってしまう、そんなお客さんもいるかもしれません。スマートフォンメーカーがカフェを運営するのは意味があるわけです。

  • 店舗内の右半分はスマートフォンやアクセサリを販売

  • 最新のSugarのスマートフォンを体験できる

ところで販売されているアクセサリには面白いものもあります。化粧品のようなデザインのモバイルバッテリーはロングセラー製品で、無機質な外観の一般的なバッテリーを持ち歩きたくない女性に人気だそうです。またUSBケーブルもかわいいパッケージに入っています。そして自社でスマートフォンを出していながら、iPhone用のケースも販売されているのです。

  • アクセサリはパッケージもかわいい

実はSugarはアクセサリを「Sugar Lady」というブランドで展開していて、自社のスマートフォン向け以外の製品も販売しているのです。モバイルバッテリーはもちろん他のスマートフォンでも使えますし、USBケーブルも同様。そして女性向けデザインのアクセサリとして、あえてiPhoneのケースも出しているのです。iPhoneからSugarのスマートフォンに乗り換える人はなかなかいないでしょうから、せめて美しいデザインのケースを買ってもらい、自社のブランドを知ってもらおうという戦略でもあるのでしょう。

  • 上海で2018年6月に開催されたCES ASIA2018のSugar Ladyブース

  • Sugar LadyブランドのiPhoneケース

他にも充電式バッテリーを内蔵したハンディ扇風機も販売しています。この類の製品は中国や東南アジアで去年あたりから流行っていますが、Sugarの製品は格安品とは違い質感を高め、うさぎ風、くま風の耳をつけています。日本ではあまり見かけないかもしれませんが、アジアでは女性が扇風機を持ち歩く姿も珍しくありません。Sugarのハンディ扇風機は若い女の子に受けそうです。

  • なんとハンディ扇風機までラインナップ

  • ロングセラーのモバイルバッテリー

スマートフォン市場の競争は厳しく、中国でも数年前にメジャーだった女性向けスマートフォンメーカーの1社が今では事実上撤退してしまいました。スマートフォンの機能だけでの差別化が難しくなっていく中、OPPOやVivo、ファーウェイはセルフィー機能にフォーカスして存在感を誇示してきました。Sugarのようなニッチな層を狙ったメーカーは、スマートフォンだけではなくアクセサリを含めたそう合的なユーザー体験を提供しなければ生き残りは難しいでしょう。新興メーカーのシャオミが家電や家具、洋服そしておもちゃまで作るように、スマートフォンメーカーも端末以外の製品を揃えることで消費者の関心を向けさせなくてはなりません。女性たちがついつい買いたくなってしまうようなスマートフォンアクセサリーを強化することで、Sugarのスマートフォン人気も高まってほしいものです。