ソフトバンクモバイルは4日、年内にiPhoneを日本で発売開始することを発表した。価格や料金など詳細は現時点では一切不明だが、日本で発売されるということは、3Gに対応した新しいiPhoneが登場することが確定したということになる。

3日から7日まで台湾で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2008では、早くも3G iPhoneのアクセサリを扱う案内を出す業者も。ただし実物が展示されていたのは現行の2G(GSM) iPhone用のものだけであった

日本の特殊事情が3G対応iPhoneを確定

iPhoneも登場から約1年となり、後継機種の登場が市場から期待されている。インターネット上ではさまざまな情報ソースから「3G対応の新型iPhoneが登場する」ことが確実視されているようだ。この3G対応iPhoneは9日に開催されるAppleのイベント「WWDC」で発表される見込みである。Appleから正式な発表はないが、WWDCでの発表はほぼ間違いないだろう。しかしソフトバンクがiPhone販売についてAppleと正式に契約を結んだと発表したことから、3G対応iPhoneが登場することがAppleの公式発表を待たずに確定されてしまったことになる。なぜならソフトバンクはGSM方式を提供しておらず、現行のiPhoneは利用できないからだ。

ここ最近、Appleと契約を結んだ各国の通信事業者のプレスリリースはソフトバンクのものと同様に数行だけのそっけないものであり、それを見ても、これから各国で発売される予定のiPhoneが現行モデルなのか新型なのかすら予測することはできなかった。ところが、ソフトバンクがiPhoneを年内に発売すると公式にアナウンスしたことで、3Gに対応したiPhoneが年内に必ず発売されることが公のものになったわけである。WWDCの席では発表されないかもしれないが、年内に出ることが100%確実になったのだ。

日本以上に期待の高まるヨーロッパ

さて3G対応iPhoneの登場は「日本で使えるiPhoneがようやく登場」ということで日本で大きな話題となっている。しかしそれ以上に期待が高まっているのがヨーロッパだろう。日本は3G普及率が高く3Gサービスの利用者が多い。しかしヨーロッパでも3Gや3.5Gの普及は着々と進んでいる。特にiPhoneのような最先端の端末を好むユーザーほど3Gの利用率は高い。普及率だけ見れば確かに日本は進んでいるように見えるが、海外では日本のように通信事業者主導ですべてのユーザーを3G利用に導くことはない。つまり音声通話とSMSだけ利用できれば良い消費者は、いくら通信事業者が3Gのメリットを訴えたところでも、2Gサービスを使い続けている。そして2Gの安価な端末を安価な料金で今後も利用していくだろう。それゆえに海外では、すべてのユーザーが3Gを使うようになるのはおそらく当分先になるだろう。それを「遅れている」と判断するのは早計なわけだ。

ではiPhoneを使っている、もしくは興味の有るヨーロッパの消費者は、現行のiPhoneをどう見ているのだろうか。使いやすいエレガントな操作体系は大きく評価されていることだろう。しかし通信速度には大きな不満の声が出ているはずだ。iPhoneはGSMのパケット通信を高速化したEDGE方式に対応しており、理論上は200kbps前後と、3Gの約半分の速度が出る。しかし実際に利用できるのはその半分程度の速度だろう。

一方ヨーロッパでは、大手メーカーのスマートフォンはすでに3.5G=HSDPAに対応した製品が多数出ている。現行のHSDPAでは、理論上の最大速度は7.2Mbpsだが、実速度は1~2Mbps程度だろうか。しかしこの速度で比較しても現行iPhoneの10倍以上の速度となる。そしてHSDPAならば低速な無線LANとほぼ同じ体感速度を得ることができる。iPhoneのWebブラウザがいくら優秀であろうとも、NokiaやHTCのHSDPA対応スマートフォンのほうがパケット通信でアクセスする場合は高速であり、ブラウザの性能以前に表示速度で大きな差がついてしまうのだ。Appleとしては「高速な通信は無線LAN環境で」と言いたいところだろうが、車や鉄道などでの移動中こそ高速にネットアクセスしたいと考える消費者が多いのではないだろうか。

3G対応iPhoneはこの速度の不満を大きく改善してくれる。おそらくヨーロッパでは現行iPhoneよりも人気が出るだろう。そのためソフトバンクの発表を知って「自分の国にも3G版のiPhoneがようやく発売される」と喜んでいるヨーロッパの消費者も多いのではないだろうか。Appleは今年になってから世界中の通信事業者と販売契約を結んでいるが、いまさら現行のGSM版iPhoneを今後発売する国に投入することも無いはずだからだ。

さて、6月9日まではあとわずかである。今後の注目は各国で何月から販売開始されるか、という点になるだろう。特に、Vodafoneのように世界各国で販売契約を結んだ事業者がどの国を優先して発売時期を決めていくのかも気になるところだ。また、日本は他国より先に販売開始されるのか? あるいはアジアの中ではシンガポールや香港などが先になるのか? いずれにせよ、今年の下半期もiPhoneが市場の話題をさらうことになりそうだ。