2017年12月2日、3日、金沢工業大学の扇が丘キャンパスで「セキュリティ・ミニキャンプ in 北陸 2017(金沢)」が開催された。

金沢は、セキュリティ人材の育成に意欲的な地域の1つだ。会場となった金沢工業大学では「学生たちが自主的に勉強会を開き、互いを高め合う努力をしている」と同大学教授の五十嵐寛氏は語る。学生たちの本気や人材育成へのニーズを受け、来年度にはコンソーシアムを設立。企業人も含めてセキュリティの知識や技術力が習得でき、地域全体での底上げにつながるような仕掛けを推進する計画だという。

1日目に行われた一般講座の様子

日本各地で展開されるセキュリティ・ミニキャンプは、次世代の育成や知識・スキル継承の場として回を重ねてきた。特に2017年は、キャンプ修了生が講師やチューターとなり、新たな好奇心の芽吹きを支える取り組みが行われている。本稿では、金沢で登壇した3人の講師に焦点を当てながら、ミニキャンプ in 北陸の模様をお届けしよう。

2度の敗北感から得た「気付き」と未来への「恩返し」

一般講座にて「受講者・チューター・講師経験者が語る、セキュリティ・キャンプ」に登壇したのは、2017年のセキュリティ・キャンプ全国大会では「BareMetalで遊び尽くそうRaspberry Pi」の講義を担当した西永俊文氏だ。金沢大学大学院を修了し、今はNTTコミュニケーションズに勤務する。

そんな西永氏が初めて全国大会に参加したのは、2013年のことだ。

「ある講義で、開くと電卓が起動するPDFを渡され『解析して』と言われました。何をしていいのかわからずにいたら、周りの受講者たちはすぐに手を動かし始めて、僕よりももっと上のレベルで悩んでいる。自分は大学3年生で年上だからアドバンテージがあるなんていう思い込みは、すぐに打ち砕かれました」

NTTコミュニケーションズ 西永俊文氏

「すっごく楽しかったけれど、圧倒的な敗北感」を覚えたという西永氏は、猛勉強を開始。その成果を本にまとめて出版した。

これだけ勉強したのだから、誰よりも「強くなった」はず。また、気付きを与えてくれたキャンプにぜひ恩返しがしたい。同氏は気持ちを新たに2014年全国大会にチューターとして参加した。しかし、ここでもまた”すごい人たち”に囲まれてショックを受ける。

「優秀な人は、普通の人の数倍速で進化しています。自分は本を書いた時点で満足して止まってしまった。成果物は学びの過程で出るものであって、ゴールじゃないと思い知らされました」

だが、そこで歩みは止まらなかった。さらに研鑽を積み、2016年全国大会や北陸ミニキャンプ、2017年の全国大会では講師として登壇。同全国大会では、キャンプ終了後も課題を続けてくれた受講者からフィードバックがあったことを明かし、「講師をやって本当に良かった」と顔をほころばせる。

至らぬ部分を真正面から受け止め、日々学び、キャンプでもらった”贈り物”を自分なりのかたちで次世代に渡す。修了後も努力する西永氏に、会場からは惜しみない拍手が送られた。