気温が上がり、そろそろ夏の気配がしてきた今日この頃。衣替えをした方も多いかもしれません。しかしながら、オフィスで常勤している人を中心に、夏でもスーツやワイシャツなど、決まったものを着なければいけない人もいます。そんな場合でも、快適に過ごす方法はあるのでしょうか?

この連載では、忙殺され身体を酷使しがちなクリエイターが「健康的に創り"続ける"」ための知識を公開。敷居が高いイメージになってしまった「健康」を広く手の届くものにすべく活動されている鍼灸師・若林理砂さんが、忙しいクリエイターにもできる「健康への第一歩」につながるエピソードを語ります。第21回は、夏場にスーツを軽やかに着るコツを聞きました。


若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。著書に「養生サバイバル」「安心のペットボトル温灸」など。好きな漫画/アニメは「進撃の巨人」「FSS」「おそ松さん」。一昔前は腐っていました。「どの宮崎アニメにも必ず出演している」顔立ちといわれています。夫はクーロンズ・ゲートの人。TwitterID:@asilliza

このところ、梅雨入りを前にして、夏のような暑い日が続いています。そろそろ衣替えの季節ですが、暑さを逃がす服装の要件をご存知でしょうか。

暑さを逃す服装に必要なのは、

1.ゆるみ
2.涼しい素材

この二点です。

オフィスで働く方たちは、たいていの場合スーツとワイシャツ、それに加えて男性はネクタイとスラックス、女性はスカートにストッキング・革靴というアイテムを身に着けていることでしょう。これらはヨーロッパの冷涼かつ乾燥しがちな気候区分で発達した衣服のため、これからの季節、温暖で湿潤な東アジアに位置する日本で着る衣服としては、まったく適していないのです。

突然ですが、中東などで見られる、白くてゆったりとした着衣を目にしたことがあるでしょうか? あの服は衣服内に空気の流れが生まれ、熱がこもらないという素敵な天然冷却システムを備えた衣服なのです。裾が広く、首もとも開口しているために、体温で温められた空気による上昇気流が発生し、下から上への空気の流れが生まれるんですね。色が白なのは、光を反射して跳ね返し、熱を発生させないための工夫でもあります。

夏場のスーツ、極力快適に着るは?

中東の服と比較するとよく分かるのですが、スーツは構造からして日本の夏には向いていないんです。スーツ類は全体にゆるみが少なく、ネクタイやストッキングなどで開口部を閉じるような着こなしになっているために衣服内の空気の流動が妨げられ、暑い時に着ると熱がこもってしまうのですよ……。

そうは言っても、仕事上スーツ着用を避けられない方も多いでしょう。昨今はクールビズによりノーネクタイOKの現場も増えているかと思われますので、積極的にネクタイを外して、首周りにゆるみを作るだけでもかなり楽になります。

女性の場合、開襟シャツなどもOKな場合が多いですが、問題となるのはストッキング。特にパンティストッキングが暑さを増してしまいます。素材がナイロンなので汗を吸わず、おなか回りなどの皮膚に張り付いて不快感が倍増します。解決策としては、圧力の強いタイプのパンティストッキングではないものを選ぶか、ひざ上までの長さがある靴下型ストッキングを利用することでしょう。靴下型のストッキングは私も一つ持っていますが、また上が蒸れないので大変快適です。ずり落ちる心配をなさる方は、ガーターベルトを使うことも考えましょう。セクシーな下着としてのイメージが強いガーターベルトですが、大変実用的なアイテムです。ぜひ試してみてください。

実は夏場に向かない「夏の定番服」とは

次に、素材選びです。衣服の素材としてメジャーな綿(コットン)ですが、実は汗を吸ったらなかなか乾きにくいもの。Tシャツは夏服の定番ですが、主に厚手のコットンジャージでできているために、さらに乾きにくいのです。また、繊維はどんなものでも湿気を吸うと熱を発生する性質を持っていて、コットンはウールの次に来るくらいその発熱率が高い素材。実は夏には不適なのです。服装に厳しい規定がない職場では夏場にTシャツを着る方も多いかもしれませんが、せっかく自由がきくのであれば、別の素材を選んだ方が合理的ではあります。

こういった観点から見ると、涼しく着られる素材は麻やシルクです。シルクは洗濯が面倒なため、私はもっぱら麻を利用しています。麻の開襟シャツなどは大変涼しいものです。この間、患者さんが麻の靴下を紹介してくださったのですが、これもとても涼しいそうです。このほか、「冷え取り」に用いられることで知られているシルクの五本指靴下ですが、夏場にはくと大変涼しく、革靴のように蒸れやすい環境下でも足先がさらさらに保てて大変便利です。

オフィスは多くの場合ドレスコードがあり、そうそう軽装備にはなれないものですが、一工夫で快適さを増すことができます。衣替えを機会に手持ちのアイテムをチェックし、少し買い変えたり、買い足してみたりしてはいかがでしょうか?