新人スタッフが言いました。「カメラのインプレッションを読んでいても言葉がわからない」と。確かにカメラの専門用語は難しいですし、インプレ記事では言葉の解説なんかしてくれません。そこでこのコーナーを使って用語を解説することにしました。以下、割り切って解説していますので、そのつもりで読んでみてください。
Exif(イクジフ:Exchangeable Image File Format)
デジタルカメラで撮影した画像に書き込まれるシャッター速度や絞りなどの撮影データのことで、これを見れば、だいたいどういった状況で撮影したかわかります。そのためExif公開を嫌がるカメラマンもいます(ツールを使えばExifを消すことも可能)。「えっ? この状況で絞りF5.6なの? もっと絞らないとダメだよ」なんて、勝手に批評されるのはあまり気持ちいいものではありませんから。Exifにはカメラ固有の情報もありますので、全部読み取るためにはメーカーの付属ソフト(画像ビューアなど)が必要なはずですが、メーカー製のソフトでも全部表示するとは限りません。やはり全部知られるのはイヤなのでしょう。私が知るうち、もっともExifデータを詳しく見られるのは「JpegAnalyzer」というオンラインソフトです。
JPEG(ジェイペグ:Joint Photographic Experts Group)
デジタルカメラで一般的に使われる画像のフォーマット(形式)です。それだけなら難しいことはないのですが、カメラでは画像のサイズや圧縮率(画質)の設定があって、これが迷う元のようです。画像サイズは1600×1200ピクセルといった画像の大きさのことなので、イメージしやすいと思います。圧縮率はファイルの容量を抑えるためのもので、データを端折って記録します。まあ、ビデオテープの2倍録画、3倍録画のようなものです。当然画質は下がります。よくわからなかったら、最大サイズ+最低圧縮率にしておけば間違いないです。画像容量が一番大きくなるJPEGですね。容量を抑えて枚数を多く撮りたい場合には、圧縮率は下げず、サイズを小さくすることが多いようです。まあ、どっちでもかまいませんが。最良の方法は、メモリーカードをもう1枚買って来ることです。
RAW(ロー)
英語で「生」の意味。つまりJPEGに加工されていない、生のデータのことです。メーカー固有の画像データなので、パソコンで見るには専用のソフトが必要です(Photoshopなどで見られることもある)。特長は、レタッチしても画像の劣化が少ないこと。「では、JPEGはレタッチできないのか」という疑問が出ますが、JPEGでも普通にレタッチできます。よほどヘタなレタッチでない限り、劣化はわかりません。「だったらRAWで撮る必要はないじゃないか」と思うかもしれませんが、まったくそのとおりです。最近はデジカメの性能が上がったこともあって、筆者もめっきりRAWを使わなくなりました。RAWはほんの微細な違いを気にするプロカメラマン専用のものと割り切って、普通は使わないほうがよいです。扱いも面倒ですから。RAWで撮るかどうか悩んでいるひまがあったら、適正な露出やよいフレーミングに頭を使いましょう。
色域(色空間)
色が再現できる広さのことで、デジタルカメラでは「sRGB」や「アドビ(Adobe)RGB」などがあります。アドビRGBのほうが広い色域を持っていますが、sRGBが標準です。というのも、普通のパソコンやプリンターではアドビRGBが再現できないためです。アドビRGBでないと再現できない色もありますが、蛍光色の緑色など現実的にはごく一部です。雑誌など商業印刷の入校ではアドビRGBが好まれる場合がありますが、この理由の多くは色の再現のためではなく、印刷所でのレタッチがしやすいためです。普通は標準状態(sRGB)で何ら困りません、というか、sRGBにしておくべきです。
色温度・ホワイトバランス
「色温度」は光の色のことです。例えば夕焼けや電球などの赤い光(色温度が低い)で撮影すると、被写体が全部赤く写ってしまいます。これを補正し、見た目に近い色で撮影する機能が「ホワイトバランス」です。色を厳密に再現したい場合(スタジオでの製品撮影など)はカメラのオートホワイトバランスに頼らず、色温度計(カラーメーター)を使って補正します。普通はオートホワイトバランスでかまいませんが、気になるのはカメラの色と撮影者の好みが違う場合です。たとえばキヤノンのカメラは青っぽい写真になりますし、ちょっと前のオリンパス製カメラは赤っぽい絵になる傾向があります(良い・悪いという話ではなく、カメラの個性)。手動でホワイトバランスを変更すればいいのですが、撮影のたびに設定するのは面倒です。こんなときに便利なのがオートホワイトバランスの補正(微調整)機能です。オートホワイトバランス全体を赤寄り、青寄りなどに設定できますので、常に自分の好みの色で撮影できます。とても便利なので、ぜひ試してください。
色かぶり
写真全体が特定の色をかぶせたように見える状態のこと。だいたいは、RGBの3色のうちどれか(もしくは2つ)が一番暗い部分から一番明るい部分までのレベルを十分に使い切っていないと、色かぶりしたように見えます。ちなみに3つとも使い切っていない場合はメリハリのないゆるい画像になります。Photoshopなどレベル補正の可能なソフトで、レベルを切り詰めれば抜けのいい画像になります。ただ、夕焼けのようにわざと色かぶりさせた画像は、レベルをいじるとつまらない写真になります。
感度
デジタルカメラでは「ISO感度」とか「撮像感度」とか呼ぶ機能で、感度が高ければ、そのぶん暗くてもよく写ります。しかし実際には、標準感度で撮影したものを増幅して明るくしています(一部例外あり)。そのため感度を上げるとノイズが見えてきます。露出の決定には「絞り」「シャッター速度」「感度」の3要素があって、暗ければシャッター速度を長くすればいいのですが、すると手ブレや被写体ブレが起きます。絞りを開けるにも限界があります。そのためより高い感度(+きれいな画像)が求められるわけです。以下、個人的な意見として読んでください。現在、ほとんどは標準感度がISO 100になっていますが、これは低すぎます。コンパクトカメラに至っては、ISO 64やISO 50がなんてのもあります。フィルムにもそういった低感度の製品がありますが、これはプロでも躊躇するようなもので、素人が簡単に使えるような感度じゃないです。初めてデジタルカメラを買って帰ると、うれしくて箱を開いたらすぐに撮影しますよね。だいたいは家の中です。すると手ブレするわけです。よっぽど明るいところでなければ、まず100%ブレます。ISO 3200や6400あたりが標準になれば、初めての人でも手ブレと無縁です。被写体もブレません。このくらいの感度で撮影できるカメラもすでにありますが、ほとんどはひどい画質です。画素数増はいいかげんにして、高い感度でもきれいに写るカメラを作ってほしいと思います。
カラーマネージメント
カップラーメンと違い、インスタントラーメン(袋に入ったもの)にお湯をかけて3分待っても美味しくありません。つまり、指定された方法で再現しないと正しい味にならないわけです。これを画像に当てはめたのが「カラーマネージメント」で、レシピにあたるものが「プロファイル」です。よけいにわかりづらいですか? そうですか。例えば「これはアドビRGBで撮影した画像です」という情報をモニターやプリンターに渡すことができれば(その能力があれば)、画像は常に正しい色で表現されるわけです。そういった画像の情報を受け渡し、画像を扱う環境を定常化するのをカラーマネージメントといいます。「いや、ウチはそんなことしてないけど、きれいに印刷できる」と思うかもしれません。それはカメラやプリンターが「これでキレイだと思ってくれるはずだ」という補正を自動で行なっているためです。それで困るかというと、まったく困りません。いくらレタッチしてもキレイに印刷できないといった場合に、カラーマネージメントという言葉を思い出してください。
キャリブレーション
カラーマネージメントのひとつ。モニターとプリンター、カメラなどの色を統一すること。
撮影素子
デジタルカメラで、像を写す部分のこと。多くはCCDが使われていますが、キヤノンやオリンパスの一眼レフではCMOSが使われています(オリンパスはLiveMOSという名で、若干異なる)。よく「フィルムの代わり」という言い方がされますが、フィルムは絵づくりも内包しています。デジタルの場合は画像処理回路が大きくものをいい、撮像素子だけでは絵づくりは決まりません。ただ、ノイズは撮像素子の性能にも左右されます。
シャッター速度と絞りの関係
写真の露出(明るさ)は「絞り」「シャッター速度」「感度」の3種で決まりますが、感度を一定とした場合、「絞り」と「シャッター速度」のふたつが露出の要素になります。絞りは水道の蛇口のようなもので、シャッター速度は蛇口を開けている時間です。大きく蛇口を開ければ短時間で水が溜りますが、少ししか開けなくても時間をかければ同じくらい水が溜められます。同じ明るさになるわけですね。ただ、露出は同じになっても、得られる画像はずいぶん違います。絞りはボケの大きさ(被写界深度)をコントロールし、シャッター速度は被写体の動きを止めたり、動きを表現したりする部分に関係します。
シャッタータイムラグ
シャッターボタンを押してから実際に撮影するまでの機械動作にかかる間(時間)のことです。もちろん短いほうがタイミングを合わせるには有利で、だいたい0.1秒以上あると素人でも間を感じます。プロ用カメラは0.04秒や0.037秒など、素晴らしくレスポンスがいいです。ただ、普通の単写(連写ではない)でオートフォーカスを使っていると、ピント合わせの後でシャッターが切れるので、シャッターボタンを押してから撮影まで1秒くらいかかることも珍しくありません。
収差
レンズで発生する像の歪み。一般に、サイデルが発見(分類)した「球面収差」「コマ収差」「非点収差」「像面湾曲」「歪曲収差」と、「色収差」をまとめて収差と呼ぶことが多いようです。ただ、デジタルでは画像処理で収差を減らすことができるので、今後はレンズだけで収差は語れなくなるでしょう。
焦点距離
レンズと撮像面の距離(本当はもう少し難しい)なので「mm」で表しますが、実質的には画角を意味しています。35mm判フィルムの場合、焦点距離28mmで画角(対角)は約75.4度、35mmで約63.4度、50mmで46.8度、100mmで24.4度、200mmで約12.4度となります。しかしデジタルカメラの撮像素子は35mm判より小さいため、画角の換算が必要になります。デジタル一眼レフで1.5倍や1.6倍というアレです。ニコンのデジタル一眼レフ(1.5倍)の場合、28mm相当(75.4度)の画角を得るには、18.6mm程度のレンズが必要になります。ただ、焦点距離は画角意外の意味も持っていて、ボケの具合などはレンズの元の焦点距離に関係します。デジタルでは画角は28mm相当でも、ボケは18.6mmと同じになるわけです。このあたりは自分のカメラで覚えるしかありません。