ポータブルプレイヤー用の外部スピーカーというと、少し前まではiPod用のドックスピーカーが、代表的な存在だった。しかし、スマートフォンの普及によって、変化が起こりつつある。誰の目にも明らかなように、2012年のスタンダードは、Bluetoothスピーカーだ。
Bluetooth通信の機能を備えているアクティブスピーカーならば、とりあえずスマートフォンと接続して利用することは可能だ。しかし、製品ごとに独自の機能が搭載されていたり、音質面での差別化が行われていたりするケースもある。スマートフォンと組み合わせて使用するのに適したBluetoothスピーカーとは一体どういったものなのか。今回から毎回1機種のBluetoothスピーカーを取り上げて、その性能や機能を、標準的なBluetoothスピーカーと比較していきたい(「標準的な」というのは、ごく普通のアクティブスピーカーにBluetooth接続機能が搭載されたものという意味で用いている)。
手軽さが魅力のBluetooth |
第1回目の今回は、半ば常識的な話ではあるが、Bluetoothスピーカーを使用するうえで知っておきたい基本事項について、簡単に記しておこう。Bluetoothは、2.4GHz帯の電波を使用した無線通信技術だ。同じ無線通信技術の無線LANと比べると、低速ではあるが、単純な手順で使用できるというメリットがある。また、無線LANとは同じ周波数帯を使用するため、近くにアクセスポイントなどが設置されている場合、障害が発生することがあると言われている。確かに、下の写真のような近距離で使用すると、頻繁に音飛びが発生するが、これほど極端な設置例は少ないだろう。30cmほど距離をおけば、特に問題は発生しなかった。
Bluetoothにはいくつかのバージョンがあるが、現在、スマートフォンやBluetoothスピーカーに多く使用されているのは、2.1+EDRと呼ばれるものだ。最近では、速度や低消費電力性に優れたバージョン3.0に対応したヘッドセットなども登場してきている。Bluetoothスピーカーを使用するうえで覚えておいた方が良いのが、プロファイルだ。Bluetoothスピーカーと送信側であるスマートフォンで同じプロファイルを持っていないと、そのプロファイルを使用する機能は利用できないことになる。Bluetoothスピーカーで使用する主なプロファイルは、「A2DP」「AVRCP」「SCMS-T」といったところだ。A2DPは高音質な音声データ用のプロファイルだ。Bluetoothスピーカーには、必ず使用されている。AVRCPは、オーディオ機器の操作を行うためのものだ。SCMS-Tは、コピーコントロールされた音声データ用のプロファイルで、ワンセグ放送の音声伝送などの際には必要となるケースがある。
プロファイル以外に、コーデックについてもある程度知っておいた方がよいだろう。Bluetoothスピーカーで一般的に使用されているコーデックは「SBC」と呼ばれるものだ。圧縮・伸長に必要なマシンパワーが少なくて済むという利点があるが、遅延が発生するケースもあり、必ずしも万能というわけではない。
エントリークラスのBluetoothスピーカー「Creative D80」を基準に
今後、製品を比較していくに当たって、最初に基準となる製品を決めておいた方が分かりやすいだろう。Bluetoothスピーカーは、ピュアオーディオ製品ではない。PC周辺機器とゼネラルオーディオ製品のちょうど中間のような製品だ。価格帯は、安いものならば1,000円台後半から存在するし、高いものでもせいぜい2万円前後といったところだ。ということで用意したのが、PC周辺機器メーカーでありオーディオメーカーでもある、クリエイティブメディアが発売しているBluetoothスピーカー「Creative D80」だ。D80は、同社製Bluetoothスピーカーでエントリークラスに位置付けられる製品で、クリエイティブメディアのウェブ直販サイト「クリエイティブストア」では4,980円で販売されている。上級機で採用されている「apt-X」コーデックなどには非対応のモデルだ。ドライバーは3インチのフルレンジ×2基で、W325×D100×H100mmのリアバスレフ方式のキャビネットが採用されている。アンプの出力などは公開されていないが、日常的に使用していて、音量が不足すると感じることは今のところない。この価格ならば、コストパフォーマンスは高いといえるだろう。カラーはブラック、ブルー、グリーン、ホワイトの4色がラインナップされているが、今回はグリーンモデルを購入してみた。選んだ理由は、写真撮影を行う際に、ブラックだと色味が地味だからという単純なものだ。
次回は、D80を実際に使用して感じた音質の特性や、気になる点などをまとめてみたい。