パソコンチャンネルにある連載ながら、前回はまったくPCにかすらない内容となった。東芝は家電からデジタル機器まで扱う巨大メーカーなのだから、まあ、仕方がないところだろう。だが、東芝科学館の次なるフロアは「デジタル技術と映像」がテーマだから、安心してほしい。

館内を縦断するエレベーターは、もちろん東芝製。電磁石を活用し、振動と騒音を大幅にカットしている。10円玉を立ておいても倒れないほどだ。しかし、実験する前に2階についてしまった

アナログ世代に喝!! 今のデジタルは大変なことになっています

2階は体験コーナーの宝庫だ。2階を舐め回さずに東芝科学館を後にするのは、1万個のドミノを立てておきながら倒さずに箱に戻すのに等しい。うーん、喩えがちょっとズレている気がする。でも、「フラッシュモーション」でエクササイズすれば、そんな些末な問題も気にならないほど気持ちよくなるのだ!

フラッシュモーションは、ムービーカメラで撮影した動画から各コマの輪郭を精密に切り出して、動きの軌跡を一枚の画像にしてくれる体験コーナー。野球やゴルフのスイングをチェックするにはうってつけだ。ちなみに画像処理にはWindows XPパソコンを使っている。

僕はゴルフ未経験なので、小学生時代の野球部の記憶を頼りに、オモチャのバットでフルスイングすることにした。約20年振りにしてはなかなかの素振りが披露できたと思う。さて、写真はどうだ? 1分弱そわそわしていると、アテンダントさんができたての写真をプレゼントしてくれた。うん。軸がぶれまくっている。さすがは体育で1を取った実績を持つ肉体だ。これからの人生も、絶対バッティングセンターには行かないぞ!

フラッシュモーション体験コーナー。スイングの過程を撮影して、一枚の画像に加工してくれる。一度の素振りで撮影は完了する

少し待っていると、完成した画像がもらえる。細かい輪郭の動きがしっかりと表現されており、フォームのチェックに役立つ

お次は「動作捕獲術 SHADOW」コーナー。カメラで撮影した人物の動きをリアルタイムで認識するシステムを利用して、身体を動かすことで操作する3Dゲームが体験できる。プレイヤー一般的なモーションキャプチャーのようにセンサーを装着する必要がなく、そのままの格好で参加できるのだ。

ステージに立つと、モニターには巨大な敵に立ち向かうニンジャの姿が。これが僕の分身となるのだ。腕を上げればニンジャもすぐさま腕を上げ、しゃがんだり立ち位置を変えても、動きが反映されるのが面白い。

動作捕獲術 SHADOW。全身を使って、巨大な敵の攻撃を避けつつ反撃する。敵を倒したあとは、アテンダントさんが成績を判定してくれる

アテンダントさんが「さあ、敵を倒して下さい!」と盛り上げるので、完全にニンジャのつもりになって、画面の中の敵に攻撃を仕掛ける。敵はわりとゆっくり反撃してくるので、体育1の僕でも余裕をもって倒すことができた! アテンダントさんからは「おめでとうございます。B判定でした!」と祝福される。どうやら、一回敵の攻撃をもらってしまったらしい(最高はA判定)。

体験コーナーのトリに選んだのは、カメラに移った顔をリアルタイムで加工し、3Dの化粧を施したり髪型を変えてくれる「デジタルかがみ F-TYPE」だ。顔写真をデジタル加工するのは珍しくないが、デジタルかがみはリアルタイムで3Dの装飾を施すのがポイント。横を向いたり、頭をふったりしても、3Dの髪型や化粧がちゃんと追従してくるのだ。

インスタント証明写真機のようなボックスに座ると、目の前に自分の顔が映し出される。と、同時に通路側の大画面液晶にも同じ映像が流れる。それに気付いて恥ずかしさから嫌な汗をかいたが、アテンダントさんは操作の手を休めず、僕の顔にミュージカル俳優のようなペイントを施したり、宝塚市の歌劇団のようなカツラを被せたりした。大画面には、次々と痛い奴の顔が映し出されていく。すごい技術なのだが、このコーナーだけは2度と近づかないだろう。

デジタルかがみ F-TYPEを体験。ビデオカメラが設置されたボックスに座っているだけで、アテンダントさんが色々な加工を始めてくれる

大画面液晶に、派手な髪型になった自分の顔が映し出されている。そのほかにも、顔のパーツを拡大する機能などもあった。なんか照れくさくて早く終わらないかなと思った

パソコン本体より、パーツに興味が集中する今日この頃

さて、良い汗と嫌な汗をかいたあとは、大広間の「ユビキタスワールド」コーナーでたっぷりと最新デジタル機器を鑑賞しよう。

最新のQosmio G50。SpursEngineにより、HD映像のエンコードを激速で終わらせたり、SD画質の映像をHD画質に近い解像度で表示したりする

一般的なショールームとは違うため、最新モデルのすべてが揃っているわけではないが、エポックメイキングな製品は発表と同時に展示することも珍しくない。2008年10月現在は、SpursEngine(スパーズエンジン)を搭載した「Qosmio G50」や128GBのSSDなどが並んでいた。

我々取材班一同は気ままに各コーナーを回っていたのだが、その都度アテンダントさんは「燃料電池の小型化は実現していますが、液体を燃料に使うため、飛行機に持ち込みにくいという現実的な問題を抱えています」「SpursEngineはCellという技術を応用して作られました」など、適切な解説を添えてくれた。職業的に当然かもしれないが、東芝の全技術と歴史を網羅したその知識量は、ちょっと尊敬に値する。

携帯電話用に小型化された燃料電池も展示されている。技術的には実用レベルとなっているのだ

128GBのSSD。3階の半導体コーナーでじっくり勉強したあとに観ると、そのハイレベルな構造に感動できる

しかし、職業柄、見慣れてしまった完成品よりも、内部に組み込まれているパーツのほうが興味深い。特に最近お気に入りはSSDだ。これだけ小さな筐体で十分なデータ容量を持つうえ、Windowsをあっという間に起動させる超高速な転送速度を実現しているのだ。こいつらのことをもっと知りたい! するとアテンダントさんは「3階には、半導体コーナーもありますよ」と、上の階に誘ってくれた。次回、後編に続く!

ショールーム情報
■名称:東芝科学館
■受付時間:9:00~16:45
■休館日:日曜日、祝日
■入館料:無料
■住所:神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地(東芝研究開発センター内)
■URL:http://kagakukan.toshiba.co.jp/