Catalinaがリリースされて1カ月、そろそろ細かい変更点が気になる時期ではないだろうか。Catalinaの知られざる/注目されざる変更点を紹介するシリーズの第3回は、そんな"ともすれば見過ごされがちな変更点"をいくつかピックアップしてみたい。

こんなところに、旧iTunesの「メディア共有」

Catalinaでは、2001年の登場以来macOS/Mac OS X(Mac OS 9も!)に連綿と引き継がれてきた「iTunes」が廃止された。最初のバージョンでは、CDのリッピングと曲再生を行うジュークボックスソフトだったが、iPodの母艦としての機能が追加され、以降iTunes Music Store、AirTunes(現AirPlay)、iPhoneの管理機能などなど……機能が膨れ上がり、逆に扱いにくくなってきたことから、MusicとPodcast、TVという3つのアプリに分裂したことはご承知のとおりだ。

その旧iTunesの機能群だが、音楽再生はMusicに、動画再生はTVに、PodcastはPodcastに引き継がれ、iPhoneの管理機能はFinderが受け持つようになった。その説明は、ヘルプから「iTunesはどこへ行ってしまったのでしょう?」を辿れば読むことができる。

唯一わからなかったのが、旧iTunesが持っていた「ホームシェアリング」。言わずと知れた、iTunesライブラリの楽曲を他のiTunesやアプリで再生できるようにするミュージックサーバ機能だが、Musicアプリにそのような設定項目はない。さて……。

探すこと半刻、ようやくある場所にホームシェアリングの設定項目を発見した。その場所とは、システム環境設定の「共有」パネル。「メディア共有」という項目が設定され、そこでON/OFFやライブラリ名の変更などを行うしくみだ。

  • ヘルプから「iTunesはどこへ行ってしまったのでしょう?」を辿ると、このような説明文を読むことができる

  • ホームシェアリングの設定画面は、システム環境設定「共有」パネルへ移動していた

Emacsが消えた!?

ベータ版の頃から気付いてはいたが、Catalinaから「Emacs」が消えた。Emacsといっても、Aqua対応の(比較的新しいバージョンの)Emacsではなく、Terminal内でしか起動できない/usr/bin/emacs。bash同様、最新バージョンのv26.3に更新する場合にはライセンスがを(より厳格な)GPLv3に変更せざるを得ず、かといってGPLv2が適用される2007年公開のv22.1.1のままではなにかとマズいということで、外す決断をしたのだろう。

EmacsはmacOSから消えたが、viやnanoはあるし、タイニーEmacsといった風情の「Mg」が新たに収録されている。このMgだが、パブリックドメインのためライセンス問題とは無関係、Emacsの主だったキーバインドやコマンドもひととおり使える。動作は軽快、Emacsがなくてもいいか、と一瞬思えてしまうほどだ。

しかし、Mgは日本語などマルチバイト文字は扱えないし、Emacs LISPも使えない。当然、テトリス(M-x tetris)で遊ぶこともできない。かつてはMgの日本語対応版「Ng」(Nihongo micro Gnu emacs)も存在したが、十数年前に開発は停止されており、Catalinaに収録されているMgとは無関係。残念ながら、従来のEmacsほど利用する場面はなさそうだ。

  • Emacsに代わり収録された「Mg」は、日本語などマルチバイト文字は扱えない

これからもbashを使い続ける人のために

Catalinaからデフォルトのシェルがbashからzshに変更されることは、当コラム第241回で紹介したとおり。しかし、ログインシェルにzshが適用されるのはCatalinaを新規インストールしたときのことで、Mojaveからアップデートした場合はbashのままだ。

その「Mojave組」がCatalinaへアップデートしたあとにTerminalを起動すると、以下のメッセージに出くわすことになる。「chsh -s /bin/zsh」を実行してログインシェルをzshに変更せよ、という意味のメッセージが、新規ウインドウ/タブを作成するたびに表示されるのだ。bashを使い続けることもできるが、このメッセージは正直ウザい。

そんなときは、以下のコマンドラインを実行しよう。新規ウインドウ/タブを作成したとき(シェルを対話的に起動したとき)に参照される「~/.bash_profile」の末尾に「export BASH_SILENCE_DEPRECATION_WARNING=1」という行をくわえるだけのものだが、これで前述したメッセージは表示されなくなる。諸々のしがらみで当面はbashのまま、という向きにはお試しいただきたい。

$ echo "export BASH_SILENCE_DEPRECATION_WARNING=1" >> ~/.bash_profile

※:「~/.bashrc」がある場合は、そちらにも「export BASH_SILENCE_DEPRECATION_WARNING=1」を記述しておくこと
  • このメッセージに悩まされているbash使いは、環境変数「BASH_SILENCE_DEPRECATION_WARNING」を設定しよう