OS XがiOSの兄貴分だったのは過去のこと、指紋認証にせよ拡張現実にせよ非接触型決済機能にせよ、いまやiOSで先に実装し落ち着いてからmacOSに持ち込む時代。「モバイルファースト」の典型ともいえるが、macOSに持ち込む際にはひと工夫するのがAppleの流儀。Siriもその例に漏れず、キーボードなどMacならではのUIとうまく融合している。今回は、Mac版Siriの活用術にフォーカスしてみよう。

Siriの利用をキーボードで完結させる

Mac版Siriは、システムフォルダの「CoreServices」にある「Siri」というアプリケーションバンドルがその実体(真の実体はクラウドにあるのだが)。アプリケーションフォルダに同名のアプリも存在するが、システムフォルダにあるSiri.appのフロントエンド的存在であり、いってしまえばDockに登録するためのアイコンのようなものだ。

それはともかく、Siri.appはLaunchServices(アプリケーションとファイルをヒモ付ける役割を果たす機能)の管理下にあるため、Terminalからあのコマンドを使って起動できる。そう、「open」だ。具体的な用途はともかく、アプリケーション名を指定するためのオプション「-a」に続けて「Siri」を指定すれば、実行次第Siriのダイアログが現れる。

Siriの環境設定で定義したショートカットキーを使うほうが手短かに済むが、このアプローチであれば「open -a Siri」をエイリアスに登録するなど、シェルならではの活用方法も見えてくる。openコマンドからSiriへ引数を渡すことはできないが(Siri.appにそのような機能がない)、Siriの環境設定でタイプ入力を有効にしておけば、キーボードだけでSiriへの命令を完結できるはずだ。

$ open -a Siri

  • Siriの実体(実行プロセス)は/System/Library/CoreServicesにある

  • システム環境設定「アクセシビリティ」パネルで「Siri」を選択し、「"Siriにタイプ入力"を有効にする」をチェックしておく

  • 「open」コマンドかショートカットキーでSiriを起動すれば、Siriへの命令をキーボードで完結できる

少し前のMacでも「ヘイ、シリ」を

Mac版Siriに足りない機能があるとすれば、「Hey, Siri」というウェイクワードによる起動だろう。T2チップ搭載のMac(iMac Proと2018年モデルのMacBook Pro)は対応するものの、それ以外のMacは手動による起動しかできない。しかし、ある方法を使えば、MacBook AirやMac miniでも「Hey, Siri」が可能になる。

その方法とは、「拡張音声入力」を利用すること。拡張音声入力とは、OS X Mavericksからサポートされた機能で、インターネット/クラウドに接続することなく音声入力を可能にする機能のこと。音声からテキストへの変換がMac内部で完結するため変換速度が速いメリットがある反面、Mac内部で処理するために数百MBもの音声認識用データを追加ダウンロードしなければならない。

拡張音声入力は、人の話し言葉をテキストに変換することを目的とするが、音声を使いアプリケーションの起動など各種処理を実行する「音声入力コマンド」にも応用できる。任意のウェイクワードで処理を開始させることもできるので、ある言葉で「Siri.app」を起動するよう設定すれば……そう、なんちゃって「Hey, Siri」がT2チップ非搭載のMacでも可能になるのだ。具体的な設定方法は以下のとおり。

  1. システム環境設定「キーボード」パネルの「音声入力」タブで「拡張音声入力を使用」をチェックする。初めて有効にしたときは、Appleのサーバから数百MBものデータがダウンロードされる。
  2. システム環境設定「アクセシビリティ」パネルで「音声入力」項目を選択し、「次のキーワードで音声入力を有効にする」をチェックしたうえで「へい」と入力する。
  3. 「音声入力コマンド...」ボタンをクリックし、現れたシートの左下にある「高度なコマンドを有効にする」をチェックする
  4. 「＋」ボタンをクリックし、現れた画面の音声コマンド欄に「シリ」、対象メニューに「すべてのアプリケーション」を選択する。
  5. 実施動作メニューで「Finder項目を開く...」を選択し、アプリケーションフォルダにある「Siri」(Siri.app)を選択、「完了」ボタンをクリックして登録を完了する。

これで、「Hey, Siri」と言えばSiriのダイアログが画面右上に現れるようになる。拡張音声入力からSiriへとタスクが切り替えられたわけで、ここから先はSiriの機能となる。スケジュールを確認するもよし、天気予報を訊くもよし。iPhoneに比べ自宅で使う時間が長いMacのこと、周りに遠慮することなくSiriを呼び出せるので意外なほど使い勝手がいい。ウェイクワードからのボイスコマンド実行こそSiriの真骨頂、自宅作業のときに活用できるはずだ。

  • 事前に拡張音声入力を有効にしておき、音声認識に必要なデータを追加ダウンロードしておく

  • アクセシビリティの音声入力項目にウェイクワードの一部(ここでは「ヘイ」)を登録する

  • 高度なコマンドを有効にして、「Siri.app」を起動する音声コマンドを作成する