ここ1年ほど、多少工夫すればMacで (どうにか) 使える1万円以下のデバイスを探し求めています。成果はこちらをご覧いただくとして、これぞという案件を発見された方、あるいはドライバを自分で書いたという方は、どうか編集部宛に情報提供をお願いします。
さて、今回は「iPhone 2.0」について。Mac OS Xと同じコアを採用したスマートフォン(のソフトウェア)が今年6月にアップデートされる、というホットな話題を取りあげてみよう。なお、現状iPhone SDKは機密保持契約(NDA)のもと公開されているため、入手して実際に試したからといっても、詳細をここに書くことはできない。あくまで6日に開催された「iPhone Software Roadmap プレスカンファレンス」の内容、およびこれまで発表された製品をもとにしているので念のため。
App Storeは「三方一両得」と見抜いたり
具体的な話へ進む前に、いくつか事実関係を確認しておこう。6月にソフトウェアアップデート「iPhone 2.0」をリリースすること、その事前準備用にβ版の開発キットを配布すること。開発したアプリケーションは、iPhone 2.0リリースにあわせて開始されるオンラインサービス「App Store」経由で販売 / 配布できること。開発キットは有償で配布され、年額99米ドルからのサブスクリプション方式となること。そして、それらの機能はiPod touchでも利用できること。以上が、今回のプレスカンファレンスにおける発表の骨子だ。
これらの事実からは、iPhone / iPod touchを"手元に置きたい"Appleの意思が読み取れる。対応アプリケーションの流通を一手に引き受けるApp Storeは、日本の携帯キャリアが運営するゲートウェイと同じで、そこを流れる内容は今後もAppleが一手に管理できるからだ。
一方で、ソフトウェア販売に関する開発側の取り分は70%。Appleの粗利が30%は高い、1つのサイトに集積するなど横暴だと考える向きもあるだろう。しかし、このApp Store構想、筆者は落とし所として悪くないと考えている。
なぜなら、30%の内訳にはカード決済手数料やホスティング費用など、諸々の経費が含まれているから。フリー / オープンソースソフトウェアにも配慮されていて、無償の場合には0×30% = 0、すなわち手数料は一切かからない。SDKのサブスクリプションとして支払う金額(個人=99$、法人=299$)を除けば、コストをかけず知名度のあるサイトでソフトウェアを配布できる利点もある。
Wi-Fiを使うとパケット費用が不要なことも大きい。日本の携帯ゲートウェイでは、パケット代+コンテンツ代が消費者の支払うべき金額だが、App Storeではコンテンツ代だけで済む。携帯キャリアのゲートウェイに比べれば、利益誘導的とは言いにくい構造なのだ。
これは筆者の考えだが、Appleは"App Storeで大儲け"など考えていないはず。iPhone / iPod touchのプラットフォームを開放してしまうと、Apple単独ではコントロール困難な状態に陥りかねないため、一種の懐柔策としてApp Storeを用意したのではないだろうか。AppleはiPhone / iPod touchをコントロール下に置き、デベロッパは世界規模の販売網を手に入れ、消費者は選択肢を増やす。この「三方一両得」こそが、App Store設置の真の狙いのような気がしてならない。
その名も「iPhone OS」
暫定的に「OS X」と呼ばれていたiPhone / iPod touch用のOSだが、正式に「iPhone OS」と決まったようだ。プレスリリースの類は出されていないが、今回のプレスカンファレンスではハッキリ「iPhone OS」とスライドに大書されている。古くさい喩えだが、本家の次男坊が正式に分家を設立、それを機に異なる姓を名乗ったというところだろうか。
iPhone OSを構成する4つのレイヤー |
アーキテクチャに関する説明も行われた。iPhone OSは「Core OS」と「Core Services」、「Media」と「Cocoa Touch」という4層のレイヤーによって構成され、そのうちCocoa Touchは、キーボードとマウスの使用を前提としていた(Mac OS Xの)Cocoaをマルチタッチ技術を使用するiPhone OS向けに改良したもの。それ以外は、Mac OS Xで実現できる機能の多くに対応するようで、Quartz 2DやCore Animationのサポートも含め、マルチメディア系機能は"全部入り"と考えてよさそう。
目玉はやはり、Cocoa Touchだろう。マルチタッチ関連のイベント / コントロールはもちろん、加速度センサや位置情報の取得など、Mac OS Xでは未整備の機能がAPIの形で提供される。現時点でお伝えできる情報はこの程度だが、続報が届き次第当サイトでお伝えするつもりだ。