皆さんこんにちは、ライターの工藤寛顕です。

先日、Astell&Kernのカジュアルブランド「ACTIVO」が復活するというニュースが発表されました。ACTIVOはかつて2018年に「CT10」というコンパクトで扱いやすいDAP(音楽プレーヤー)を発売しており、結構お気に入りだったのですが、それ以降音沙汰がなく残念に思っていました。そんな中、今回6年越しに「P1」というDAPが登場したのです!

  • ACTIVO P1

正直、CT10は「Astell&Kernの廉価版」的な印象も拭えなかったのですが、P1はAstell&KernのオープンAndroid OSを搭載しており、Google Playから自由にアプリをインストールできるなど、本製品ならではの魅力を備えていそうです。初めてDAPを購入する方はもちろん、普段からポータブルオーディオを愛好している方にも刺さりそうな1台ではないでしょうか。

というわけで、今回はそんな「P1」をご紹介したいのですが、せっかくならポータブルオーディオに関心がない人にも興味を持ってほしいところ。手に取りやすい1万円台くらいのイヤホンと合わせてレビューしてみるのがいいかもしれません。

たとえば、同じくアユートが取り扱っているqdcの「SUPERIOR」とか。まあでも、1万円台って他にも人気の機種めっちゃあるしなー。別に何を選んだって……、

え!??!?

か……神谷奈緒さんがアンバサダーに就任!??

  • 決定

というわけで今回は、手軽に高音質なポータブルオーディオを楽しめる「いいもの」をブックマーク。ACTIVO P1とqdc SUPERIORの組み合わせをご紹介していきたいと思います。

  • ス……

試聴楽曲の準備もバッチリですね。それでは参りましょう!!

新生ACTIVOを感じさせる曲線的なデザイン

試聴に先立って、各製品を簡単にご紹介していきます。まずはACTIVO P1から。

本体はAstell&KernのSP1000Mなどと同じくらいのサイズ感で、近年のDAPとしては大きすぎず小さすぎずですが、過去機種のCT10と比べるとやや大型化した印象。一方で重量は約155gと、手にしたときに驚くほどの軽さです。Android OSを操作しやすい画面サイズを担保しつつ、ACTIVOらしい携帯性の高さも残されていますね。

  • ACTIVO CT10(左)との比較。一回り大きくなっている

  • iPhone 15 Proよりも少し小さい。厚みはiPhone2台分くらい

デザインも見ていきましょう。手で握る部分はマットな質感のアルミボディとなっており、サラサラとしていて手触りも良好。背面の上側1/3ほどがやや出っ張っており、そちらには落ち着いた印象のホワイトがあしらわれています。

曲線的な形状も特徴的で、握りやすいのももちろんですが、Astell&Kernの「光と影」を重視するシャープなデザインとも差別化されているように感じました。なんとなくApple製品っぽさもあって素敵です。

  • ホワイト×シルバーで明るい印象の本体カラー

ボタン配置や入出力端子周りもシンプル。個人的にはAstell&Kernの伝統ともいえるボリュームホイールが省略されてしまったのがちょっと残念ですが、これもあくまでACTIVOブランドだから、ということなのでしょう。そのぶん、デザインとしてはスッキリまとまっています。機能がわかりやすく、初めてDAPを使う方も安心ですね。

  • 本体上部の中心には出力端子が2系統

  • 下部にはmicroSDスロットとUSB Type-Cポート、そして「BY ASTELL&KERN」の文字が

液晶の発色も綺麗で、反応も良くサクサク動きます。先述の通りOSはAndroidを採用しているものの、かなり独自のカスタムが施されており、音楽プレイヤー機能をメインのUIとしつつ一般的なアプリも動作するよ、という感じ。とはいえ、今回のACTIVO P1ではGoogle Playに正式に対応しているため、Android用に配信されているアプリを非常に簡単にインストール可能になりました。

近年のAstell&Kern製品でも「Open APK」というAndroid用アプリのパッケージファイルを直接インストールすることで使用できる機能が搭載されていましたが、やはり扱いやすさは段違いです。一般的なスマートフォンを使っている人も、P1であればすぐになじめそうです。

  • 独自のホーム画面を備えるP1。画面下部からはインストールしたアプリにアクセスできる

美しく光る限定カラーのパープル

続いてqdc SUPERIORをチェック。こちらは昨年7月に発売されたイヤホンで、ハイエンドイヤホンで知られるqdcによる1万円台のイヤホンということで注目を集めました。その注目を裏切ることなく、強烈な完成度の高さで瞬く間に人気機種となっています。

冒頭で「1万円台って他にも人気の機種めっちゃあるしなー」なんて書きましたが、今やこの価格帯の定番として名前が上がる筆頭格といっても過言ではないでしょう。しかし今、最も話題にすべきところは……やはりこの、新色「Rondo Purple」の鮮やかなパープル!!

  • 日本限定、かつ限定生産のリミテッドカラー「Rondo Purple」

深みのあるパープルのフェイスプレートはミラーパネルを採用しており、角度によってグラデーションのようにさまざまな表情に変化します。その美しいカラーを生かし、「アイドルマスターシンデレラガールズ」の神谷奈緒さんをアンバサダーに起用するというアイデアにもうなずけます。

実際、パープルのイヤホンって結構珍しいんですよね。イヤホンといえばまずブラックやシルバー、カラバリを出してもレッドやブルーというのがほとんど。なので、純粋に紫好きな方々にも刺さるバリエーションだと思います。限定生産モデルなのが惜しいくらい。

また、今回はあくまでアンバサダーとしてのコラボレーションということで、イヤホン本体に追加のデザインがない(=価格も据え置き)ことも幅広い方々に勧めやすいポイントかと思います。もっとも、プロデューサーとしては少々残念かもしれませんが……。

  • デザインは他のカラバリ同様

イヤホンとしては、10mm径のダイナミックドライバーを1基搭載するシンプルな構成。いわゆるIEM(イン・イヤー・モニター)で、耳の上にケーブルをかけるように装着するイヤホンです。ステージ上でアーティストが着けているイヤホンをイメージしていただくとわかりやすいかも。

ユニバーサルタイプ(共通の形状)のIEMですが、そこは装着感に定評のあるIEMブランド・qdc製品なだけあり、ピタリと密閉感のあるフィッティングを実現しています。こうしたIEM型のイヤホンは徐々に浸透してきているとはいえ、オーディオに関心がない層にはまだまだ知られていないでしょうから、試したことがない方はこの装着感だけでも体感する価値があるかもしれません。

  • フィット感に優れたIEM型の形状

また、イヤホンのケーブルを交換する「リケーブル」にも対応しています。qdc製品は基本的に独自規格の端子を採用していますが、SUPERIORに関してはカスタムIEM用2pinという汎用性の高い端子を採用しているのもポイント。リケーブルを試してみたい! という方にもピッタリの仕様となっています。後述するバランス接続に対応したケーブルも選びやすいでしょう。

  • 0.78mmのカスタムIEM用2pinでリケーブルも簡単

手軽ながら侮れない組み合わせの真価は?

それでは、P1とSUPERIORを組み合わせて試聴してみましょう!

まずはもちろん、神谷奈緒さんの「2nd SIDE」から。一聴してすぐに感じられるのは、弾力のあるローの重みの気持ちよさ。しっかりと主張感があり、低域に強みがあるイヤホンである一方、他の帯域をあまりマスキングしていないのが好印象です。中高域の細やかな音にも意識を向けるとしっかり楽しめる感じ。ボーカルも近く、質感が丁寧に描かれています。細かいニュアンスも楽しめるので、歌ものにもバッチリ向いている印象です。

  • 最初に聴くのはこの曲しかありません

お次はTriad Primusによる「Trancing Pulse」。音場感(音の響きの広さや立体感)もなかなかの広さで、窮屈には感じません。その一方で細かい音も楽しめるダイレクトさがあり、4つ打ちのアタック感がやはり気持ちよく、シンセリードも立っていてキレがあります。音数の多い賑やかなトラックもゴチャっとせずにしっかり描写してくれる再生能力を感じました。

何より、3人のボーカルが重なったユニゾンが綺麗! ボーカルの人数感がハッキリと把握できて、かつ調和を楽しめるバランス感。アイマスに限らず、多人数で歌唱するコンテンツというのは何かと多いものですから、お気に入りの曲をあれもこれもと試したくなっちゃうかもしれません。

  • アートワークを楽しめるディスプレイの画質の良さもうれしい

また、P1は4.4mm5極プラグでのバランス接続にも対応しているということで、手持ちのイヤホンをいくつか接続してみましょう。ソニー「IER-Z1R」のような少し音量を取りにくいイヤホンでも、過不足なくしっかりドライブしてくれるような十分なパワーを感じました。

高感度なCampfire Audio「ANDROMEDA」などの機種でもノイズを感じづらく、カスタムIEMなどにも合わせやすそうです。バランス接続ならではの優れた解像感や分離の良さも申し分なく、バランス接続デビューしてみたい、という方へもバッチリオススメできます。そして、今後さらに高級なイヤホンを試したくなっても長く愛用できるでしょう。

  • 4.4mmのバランス接続にも対応

DAPであるP1そのものの音質傾向としては、聴きやすいクリアな音作りにまとまっていつつ、あえていうならややウォームめで、ほんの少し低域が持ち上がっているかな? と感じる程度。極端な色付けはないので、イヤホンとの相性の良し悪しも生じにくいオールラウンダーな仕上がりだと思います。

長く愛用できるポテンシャルを秘めたセット

「ポータブルオーディオに興味があるけど、どれを買ったらいいかわからない」という相談はよくありますが、その回答は時代によって移り変わるもの。それでも、ACTIVO P1とSUPERIORの組み合わせはかなり安定感があり、定番として長く親しまれるであろうポテンシャルの高さを感じました。

こうした手軽さと音質のバランスが取れた組み合わせというのは案外侮れないもので、単に入門機やサブ機としてだけでなく、そのまま「結局これしか使ってないわ」的なメイン機にもなりえます。もちろん、ここから更に自分好みなスタイルを探求していくのもよいでしょう。

  • P1はUSB-DACとしても使えたりと、さまざまな運用が可能

  • ワイヤレスイヤホンでも専用アプリを使える

今回は記事を書くにあたって両機種をお借りしましたが、正直この短期間ではとても聴き足りません! 特にP1はGoogle Playにも対応しているだけあって、まだまだ色んな使い道が発見できそう。これは引き続き運用してみるしかないのだろうか……?

と、とにかく、ポータブルオーディオに興味がある人も、既に多くの楽しみを知っている人も、ぜひ一度試してみてくださいね! 以上、お相手はだいせんせいPこと工藤寛顕でした。

  • P1ユーザーのきもちになるですよ……