皆さんこんにちは、ライターの工藤寛顕です。7月も半ばに入り、全国どこもかしこも夏本番といった様相ですが、いかがお過ごしでしょうか。筆者は比較的涼しい札幌に居ながら、少しずつ溶けはじめています。

  • ポータブルオーディオブランド・オーツェイド主催のイヤホン組み立てイベント会場にやってきた

さて、そんな夏といえば楽しみなのが各種イベント。夏休みシーズンも近づき、音楽ライブやグルメフェスなど、さまざまなジャンルでイベント開催が盛り上がる季節といえるでしょう。筆者にとってなじみ深いポータブルオーディオ分野においても、大型イベントは夏や冬に開催されることが多いです。

ただ、その一方でひとつの悩みのタネと言えるのが開催地。東京など関東近郊で開催されるイベントが多く、オーディオなどのマニアックなジャンルであればなおさら。地方在住の人は参加するだけでひと苦労……という場面も少なくありません。

そんな中、「intime」などのイヤホンブランドを有するポータブルオーディオブランド・オーツェイド主催のイヤホン組み立てイベント「ASSYミーティング」が、6月29日から30日までの2日間で札幌に上陸するという情報が!

オーツェイドの本拠地である群馬・高崎をはじめ、仙台、博多など全国各地で開催されてきた人気イベントだけに、心待ちにされていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。今回はそんな札幌開催で出会った「いいもの」をブックマーク。「ASSYミーティング in 札幌 with アユート」の様子をお届けします。

  • 「ASSYミーティング in 札幌 with アユート」の新製品試聴会の様子

intimeやAstell&Kern、Maestraudioなど注目製品がズラリ

今回の会場内ではASSYミーティングだけでなく、参加申込不要の新製品試聴会も併せて開催されていましたので、まずはそちらから。イベントタイトルの「with アユート」の通り、Astell&Kernなどのオーディオブランドを国内で展開するアユートが取り扱う新製品も並んでいました。この2社は、オーツェイドが手がけるカスタムイヤホンブランド「Maestraudio」をアユートが販売しているという縁もあり、同ブランドの新製品「MAPro1000」もアユートブースにて展示されていました。

その他にも、ULTRASONEから発売されたばかりのモニターヘッドホン「Signature MASTER MkII」や、Astell&Kernによる50万円超のフラッグシップポータブルプレーヤー「A&ultima SP3000T」、大人気イヤホン「SUPERIOR」を始めとするqdc製品、4月に取り扱いが始まったFIR Audioの新製品「Electron e12」などの注目製品がズラリと並んでいました。

  • アユートブースの展示

  • Maestraudioブランドの新製品「MAPro1000」

  • 4月に取扱開始したFIR Audioの新製品「Electron e12」

intimeブースには人気イヤホン「煌(KIRA)」「轟(GO)」「雅(MIYABI)」のMarkIIモデルや、Amazon限定販売を予定しているという「碧(SORA)-Light」の4.4mmモデル、さらにはオーツェイドの渡部代表が自ら試作したという編み込みケーブルなど、なかなかお目にかかれない貴重なアイテムも。これも試聴会の醍醐味といえるでしょう。

これらは展示ブース前だけでなく、近くの試聴席に座って試聴することもできました。こうした各製品の購入自体は量販店などで可能であっても、メーカーの方から説明を受けつつ試聴できる機会というのは貴重な機会なので、来場された方々もじっくりと楽しんでいたようです。

  • intimeブースの展示

  • Amazon限定販売予定の「碧(SORA)-Light」4.4mmモデル

  • オーツェイドの本拠地、群馬・高崎にちなんだ「碧(SORA)-Light」ぐんまちゃんバージョンも

  • オーツェイド渡部代表が自ら試作した、編み込みケーブルの展示も

自分だけのイヤホンを作ろう! 初心者にもやさしい

さあ、それではASSYミーティングのご紹介に移りましょう。ASSYミーティングは、intimeの人気イヤホンをベースとしてオリジナルのイヤホンを自分の手で組み立てることができるというイベント。それも音質調整だけを行うのではなく、intime製品の完成品とほぼ同じ物をパーツから組み立てていく、という気合の入った内容になっています。組み立ての工程の中ではかなり細かな作業も含まれるものの、グループごとに担当するスタッフさんがていねいに教えてくれるので安心。こうした作業が苦手な方や未経験の方でもちゃんと完成できます。

また、今回のASSYミーティングでは、ベースモデルとしてMaestraudioの「MA910SR」が初登場! 発売から多くのユーザーの好評を集め、コラボモデルにも採用されたことから認知度も高いだけに、待望の製品だったことはまちがいありません。今後のASSYミーティングにも期待できそうですね。ちなみに今回は1日目の取材でしたが、2日目はintime「翔 DD」がベースモデルになっていたようです。こちらも人気機種!

  • 音の傾向を決めるための試聴機がズラリと用意されていた

イヤホンの組み立てに入る前に、音の傾向をあらかじめ決めるため、用意された試聴機を聴いていきます。これらによって、選択できるウーハー(ダイナミック型ドライバー)の種類や、筐体内の音響調整の具合によってどのように変化するかがわかるというわけ。同じウーハーを使っていても、調整次第で低音型~高音型と全くキャラクターの異なるチューニングになるのが面白いところであり、非常に悩ましいところ。参加された方々も、それぞれの理想の音に近づけるべく頑張っていました。

  • 試聴機の音の傾向をまとめたレシピ

その後の工程では、注射器を使ってわずかな量の接着剤で内部パーツを固定するなど、精密な作業が続きます。一見するとかなり難しそうですが、ひとつひとつの工程をスタッフさんが説明し、出来栄えなども逐一チェックしてくれるため、問題なく進行していました。

  • 組み立ての様子

  • 独自イヤーピースに関する解説の時間も

パーツが固定されるまでの待ち時間では、渡部代表によるintime製品の解説や、参加者限定のアウトレットセール、ジャンケン大会なども行われていました。こちらもイヤホン好きにとっては見逃せないイベントで、いずれも大盛り上がりでした。筆者も「いいなあ」と指をくわえつつ、ホクホク顔の皆さんを遠巻きに眺めていました。

さて、そんな楽しい時間が過ぎるうちに、ついに組み立てイヤホンが完成! 筆者も過去のASSYミーティングに参加したことがありますが、苦戦しつつもなんだかんだで完成し、音が鳴ったときの嬉しさはひとしお。きょう体カラーの組み合わせも自分で選ぶことができるので愛着が湧きますね。

「自分の好きな人の声」に合わせた、トガッた自作イヤホンも!?

完成したイヤホンをひとしきり聴いたあとは、参加者の皆さんでの交換試聴会がスタート! 筆者もちょっぴり混ぜていただいて、皆さんの組み立てたイヤホンを聴かせていただきました。

するとどうでしょう、ベースモデルが同じにもかかわらず、なんとまあ、チューニングの幅が広いこと! 各々がリファレンスとする音源も違えば、それに合うと感じる音の方向性も違うわけですが、それを表現できるASSYミーティングの奥深さにも改めて感動を覚えました。もちろん、理想の音を見事に作り上げた皆さんのこだわりがあってこそでもあり、試聴する皆さんの達成感のある笑顔が印象的でした。

  • 参加者らによる交換試聴会の様子

そんな参加者のお一人に、組み立てたイヤホンを見せていただきました。お話を伺ったのは「可愛い見た目で、可愛くない音」をコンセプトにして作ったという原田さん。周りの方が音楽に合わせてチューニングしている中で、自分の生活で一番触れている音を考えた時に「好きな人の声」が浮かんだそう。

  • 参加者のひとり、原田さんによる「可愛い見た目で、可愛くない音」がコンセプトの自作イヤホン

好きな女性声優さんの楽曲やアニメの主題歌だけでなく、YouTubeで好きなVTuberの配信を観ながらチューニングしていったとのことで、「自分の好きな人の声を最大限良い音にして聴きたい」という意図が込められているそうです。実際に聴かせていただきましたが、主に女性の話し声やボーカルが近くでリアルに聴こえる反面、それ以外の音域はかなり抑えられているという、ものすごくピーキーな性能。た、確かにこれはある意味可愛くないというか、トガッた音作りだ……!

また「見た目」については、発色が強めなカラーもある中、明るめで淡い色味をチョイス。こちらも自分の好きなVTuberや声優さんのイメージに近いカラーになっており、良い音を楽しみたい、という思いがデザインにも込められているとのこと。リアキャップ(フェイスプレート)はASSYミーティング限定色のシルバーでそろえ、全体の印象をシャープにまとめ上げています。

こうした「好み全振り」な感じのイヤホンを作れるのがまさにASSYミーティングの魅力で、ましてや特定のVTuberの配信に特化したチューニングなどは製品化も難しいでしょうから、こうしたイベントならではのユニークな仕上がりがとても素敵でした。

地方に広がる“ポタオデイベント”の波

オーツェイドの渡部代表のXアカウントでも発信されていましたが、今回の札幌開催は今までと比べても当初の申し込み人数がやや少なく、無事にイベントが開催できるのか、という不安もあったとのこと。それでも開催に踏み切ったのは、渡部代表の「北海道でもポータブルオーディオのコミュニティが生まれていってほしい」という強い思いがありました。専門店やオーディオイベントが盛んな東名阪などと異なり、地方ではなかなかユーザー同士のコミュニティが生まれにくいのかもしれません。実際に今回のイベントも、当日までなかなか情報が回りにくかったようです。

その後は参加者も増え、2日間ともに盛況で終えたASSYミーティング。自らの手で組み立てたイヤホンから生まれた縁は、必ずや今後にもつながっていくことでしょう。近年では、人気ブランド・finalによるオーディオイベント「REB fes」など、地方開催のイベントも徐々に増えてきています。こうした流れが続いていって、ポータブルオーディオのコミュニティ全体がさらに盛り上がっていくことを、筆者もいちファンとして楽しみにしています。

そして、そんなASSYミーティングですが、今後もさまざまな場所で開催していきたいとのこと。皆さんもお近くで開催が決まったときには、ぜひ自分だけの「いいもの」を組み立ててみてくださいね。以上、お相手は工藤寛顕でした。