パナソニックが、コロナ禍において活用できたり、貢献したりする様々な製品を発売している。
なかでも関心を集めているのが、2021年1月12日から、パナソニック公式ショッピングサイト「Panasonic Store Plus(パナソニック ストア プラス)」で販売を開始したパナソニック製不織布マスクだ。
もともと、2020年5月から、パナソニックグループで使用するマスクの外部調達を削減することを目的に、社内分社であるコネクティッドソリューションズ社が持つ岡山工場のクリーンルーム施設を使用し、新たにマスク生産設備を導入。社員の利用に限定して、「一般用マスク」と「一般医療用マスク」を生産してきた経緯がある。2020年7月からは、「夏向けマスク」を生産し、一般財団法人全日本大学バレーボール連盟や一般社団法人日本社会人アメリカンフットボール協会などの各種スポーツ関連団体に寄付を行い、スポーツ振興やアスリート支援を行ってきた。
岡山工場は、業務用AV機器やデータアーカイバーなどの生産を行っている拠点で、かつては、据置き型ビデオテープレコーダーやビデオカメラ、デジタルカメラ、ブルーレイディスクレコーダーなどを生産していた拠点だ。
同工場で生産するパナソニック製マスクは、着用した際に表側左下部分に「Panasonic」のロゴが入り、ウイルス飛沫や微粒子も99%カットできるフィルターを採用。花粉やPM2.5対策用としても使用できるという。「国内工場のクリーンルームで、国内材料で生産している」と、国内生産の安心感を訴える。価格は、50枚入り1箱2,980円となっている。
ただ、気になるのは、岡山工場の閉鎖が2021年9月末に予定されていることだ。現時点で、岡山工場閉鎖後のマスク生産については、パナソニックからは正式発表がない。
そのパナソニックが、2月1日から、新たに投入したのが、次亜塩素酸技術を活用した携帯除菌スプレー「DL-SP006」である。
パナソニックが買収した三洋電機が、1987年から取り組んできた次亜塩素酸技術を採用。次亜塩素酸に含まれるCl+が、菌やニオイから電子を奪い、分解しその働きを抑制。菌などの表層だけでなく、内部まで浸透して、すばやく作用するため、汚れやニオイなどの分解スピードが速く、除菌力に優れているのが特徴だ。
携帯除菌スプレー「DL-SP006」では、専用の塩水パックを使用。塩水を本体に入れて、電解スイッチを2秒以上長押しすると、約1分後に電解が終了。除菌したい対象物にスプレーすればいい。満水時には40~50回の使用が可能で、便座やテーブル、衣類や帽子、靴などに噴霧。金属や木材などの場合には布などで拭き取るといい。同社によると、噴霧して、拭き取り後5秒で、99%の除菌率を達成しているという。
次亜塩素酸は、時間が経つと除菌の効果が弱くなるという特性があるが、携帯除菌スプレーではスイッチを押すたびに約1分で次亜塩素酸をその都度生成でき、作り立ての次亜塩素酸で除菌できる、また、一度電解したあとは、4時間を経過する本体内の次亜塩素水は、有効塩素濃度が低下し、除菌効果が低下するため、もう一度、電解スイッチを押せば、再び次亜塩素酸水が生成される。
「アルコールなどの薬品不使用で、材料は塩水のみ。安全性にも配慮しており、身の回りのものにも安心して使うことができる」とし、「外出先のテーブルやショッピングカート、便座、衣類など、気になる場所を、作り立ての次亜塩素酸によって、しっかりと除菌できる」としている。
本体は、19×20×154mm(幅×奥行き×高さ)というスティックタイプであり、乾電池を除いて34gの軽量化を実現。コスメ感覚で、除菌スプレーを持ち歩くことができる。
同社直販サイト価格は6,578円となっている。
なお、次亜塩素酸の技術は、同社の空間除菌脱臭機「ジアイーノ」にも採用されている。
2013年には業務用「ジアイーノ」を発売。2017年には家庭用「ジアイーノ」を発売している。コロナ禍での空質に対する関心が高まるなかで、2020年の販売実績は、前年比2.5倍となっている。
ジアイーノでは、本体の塩自動ユニットに、塩タブレットを補充すれば、トレー内の水道水に自動投入し、次亜塩素酸水溶液を生成。これを含浸した除菌フィルターに、空気を通過させることで、汚れた空気を除菌、脱臭する仕組みだ。また、放出された気体状の次亜塩素酸が、部屋に付着した菌に効果を発揮。18畳のリビングでは、約12時間で99.99%の除菌ができるという。
ちなみに、岡山工場のマスク生産のクリーンルームでも、ジアイーノが導入されており、除菌された環境で生産されているという。
3つめは、マイナス70℃の保冷を実現する真空断熱保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」である。
ドライアイスなどの保冷剤を用いてマイナス70℃の環境を、最長で18日間保持できるもので、ワクチンなど医薬品の輸送に求められる厳格な温度維持にも対応できるという。
日本でも、新型コロナウイルスのワクチン接種が、2月から開始されるが、課題となっているのが低温輸送だ。たとえば、ファイザー製のワクチンは、マイナス70度以下で保管する必要がある。VIXELLは、そうしたニーズにも応えることができる製品だといえる。
パナソニックが、長年開発してきた冷蔵庫などに使用している真空断熱パネル(VIP)の技術を活用。さらに、箱型の立体形状に一体成型する独自加工技術によって、継ぎ目を無くすことで、冷気漏れの課題を解決。57リットルタイプでは、断熱材に発泡ウレタンとグラスウールを使用することで、パナソニックの従来開発品と比較して保冷能力を約30%向上させたという。
蓄熱ユニットや保冷剤を変えることで、マイナス70℃以下の温度帯のほか、マイナス20℃以下、2℃~8℃の温度帯など、多様な温度設定にも対応できる。ワクチン輸送以外にも幅広く医療分野で応用できるほか、冷凍/冷蔵食品や生鮮食品などの輸送なども利用できる。
パナソニックでは、2020年度末(2021年3月まで)から、製薬会社や流通業者などにサンプル提供を開始し、早期の商品化を目指すという。
一方、パナソニックでは、同社製品を活用したオフィスの空気質ソリューションの提案も強化している。これも、コロナ禍における快適なオフィス環境の実現につながるものだ。
「オフィスで換気の悪い密閉空間を作らないために、パナソニックでは、空気質ソリューションの核である換気やセンサーの導入と、そのデータを活用した様々なソリューションを提供している」(パナソニック ライフソリューションズ社マーケティング本部エンジニアリング事業統括部テクニカルセンターの豊澄幸太郎課長)とする。
具体的には、次亜塩素酸空間濃度のシミュレーションを行い、機器の最適設置プランを提供したり、熱交換器と組み合わせた設置プランの提案を行う「空間プランニング」、画像センサーを利用して、検知エリア内の混雑度を検知し、空調制御をする「空調制御」、天井埋込形ナノイー発生機である「エアイー」などを活用して、メンテナンス不要で、場所をとらないデバイスによって空質向上を実現する「空気質コントロール」、次亜塩素酸を発生する空間除菌脱臭機ジアイーノを、オフィス内の人が多く集まるエリアに適切配置する「WELL予備認証取得オフィス対応空間除菌シミュレーション」、空間のデータを可視化することによって、空気の質を見えるようにする「建物内のセンサーによる空間可視化ソリューション」を提供する。
また、空気質のコントロールに、光、音、映像などを融合し、それぞれのシーンに適した新たな価値を提供する「光・音・映像を組み合わせた空気質コントロール」も提供。「新しい空気質ソリューションとして提供するものであり、室内にある目に見えない様々な空気汚れを、給気・排気・循環のIAQ機器によって制御。気流も活用して空気の質をコントロールする。さらに、映像表示が可能な疑似窓を使用して、映像から直接出てくるように感じる気流と、タイミングに応じてピンポイントに香りを届ける技術によって、人の記憶、情動に働きかける空間を実現。映像コンテンツと同期させて、森林系の香りやフローラル系の香りを発生させることができる」という。空気質の改善とともに、働きやすい環境を実現するという新たな提案だ。
同社では、「リスクを最小化するための感染対策を、迅速に、システマチックに行うことができる。また、非常時だけでなく、通常時も使える空気質ソリューションとして提案していきたい。新型コロナウイルスへの対応が社会的に求められているが、日常的にも使えるソリューションとして提案することで、人を守り、事業を守ることにつなげたい」としている。
このように、パナソニックでは、同社の技術や生産ノウハウを活用したり、製品を組み合わせたソリューション提案によって、コロナ禍における様々な領域への対応を行っている。今後も継続的に、変化する社会において、安心して過ごすことができる製品が登場することになりそうだ。