MM総研が、公立小中高における教員の生成AIの利用環境に関する調査を発表した。教員の過半数が、生成AIを校務で利用しており、とくに高校の教員では約9割が利用していることがわかった。
同調査は、全国の47都道府県の教育委員会(高校)および1741の市区町村の教育委員会(小中学校)を対象に行ったもので、34都道府県、1299の市区町村から有効回答を得ている。
これによると、「教員が校務などで生成AIを利用している」と回答した教育委員会は、公立小中学校では55%、高校は91%となり、合計では56%となった。
公立高校教員の利用率が高い背景には、都道府県教育委員会が、校務DXと教員の負担軽減の観点から、生成AIを活用する取り組みで先行していることを理由にあげた。
とくに、東京都では、2025年5月から、すべての都立学校の教職員および児童生徒が利用できるAI基盤を整備したほか、宮城県では、2025年3月に「生成AI活用研修ガイドブック」を発行して、教員のAI活用を支援。大阪府においては、2025年12月に教員を含む行政職員の負担軽減を目的に「大阪府行政AIエージェントコンソーシアム」を立ち上げるなど、自治体におけるAI利活用の動きが活発化していることを示した。
また、公立小中学校においても、2025年3月時点の調査では、利用率が17%であったことに比較すると、今回の調査では55%となり、一気に増加していることがわかる。
MM総研では、「文部科学省は、2023年度から、生成AIパイロット校を指定し、生成AIの検証を進めており、2025年度には実証段階を終え、これが利用率の上昇に影響を与えたと考えられる。実際に、生成AIを利用している教育委員会は、StuDX StyleやリーディングDXスクールなど、文部科学省Webサイトで情報を収集している比率が高く、これが利活用を後押ししているとみられる」と分析している。
生成AIの利用方針については、「Google Workspace for Education(GWS)や、Microsoft 365 Education(M365)に標準搭載された生成AIを利用する」と回答した自治体が68%と3分の2以上を占めた。次いで、「都道府県が提供するAIを利用」が13%となった。
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「Google Workspace for Education(GWS)や、Microsoft 365 Education(M365)に標準搭載された生成AIを利用する」と回答した自治体が68%と3分の2以上を占めた
一方で、個人版などのChatGPT はわずか1%に留まった。しかし、複数の教員を対象にした調査によると、現場では無償版のChatGPTを利用するケースが多いと推測できるという。
この点についてMM総研では、「教育委員会は、教員が個人用の生成AIアカウントを持ち込むBYOAI(Bring Your Own AI)運用を抑制し、教育用クラウド上で管理できる生成AIツールを利用する方針を打ち出している。だが、教員個人は、手軽さもあり、無償版のChatGPTの利用が多いと推測される」と分析している。
教育委員会が、教員向けの生成AIツールの利用環境を整備する際に重視する項目として最も多いのが、「文部科学省の生成AIガイドラインへの準拠」で69%を示した。
全国の自治体が整備している生成AIの利用に関する文書や、研修資料などを見ると、その多くで、利用する生成AIツールの選定と、利用方法に関して、政府ガイドラインへの準拠が謳われている。「教育委員会は、無償版の個人向け生成AIツールに関して、組織的な利用管理を想定しておらず、ガイドラインに準拠した運用が困難であると判断していると考えられる」と見ている。
また、調査によると、授業でよく利用する教育用クラウドでは、GWSが最も多く69%を占める一方、校務でよく利用するクラウドとしては、M365が53%を占めた。
GWSやM365は、全国の教育委員会が、GIGAスクール構想を通じて、端末と一体で整備した教育用アプリケーションであり、さらに、教員の校務用アプリケーションとして、M365を自治体が別途配備しているケースが多い。
「教育用クラウドでGWSの利用率が高い背景には、データ保護とプライバシー、アクセス制御、モニタリング機能など、教育環境に適した生成AIのセキュリティ対策機能を標準で備えている点があげられる」としている。
生成AIの利用が広がる一方で、その利用については課題を感じている教育委員会が多いことも浮き彫りになった。
今回の調査では、生成AIの利用にあたって「課題あり」とした回答は81%にものぼっている。
課題としてあがっているのが、「セキュリティ対策」が42%、「著作権侵害のリスク回避」が41%、「利用のためのルール整備」が39%、「ハルシネーション(誤った情報が生成される)リスク」が37%となっている。さらに、「生成AIに詳しい人がいない」が36%、「教育での事例やノウハウなど情報が足りない」が30%、「教員研修を準備できていない」が29%を占め、活用に至るまでの教育や準備に課題があることも指摘されている。
「教育委員会では、安心安全な利用環境を整備するために多様な課題に直面している。その結果、安全性の観点から、GIGAスクール構想で整備されたクラウド上で、生成AIを活用するケースが増加していると考えられる」と分析している。
今回の調査結果について、MM総研 取締役研究部長の中村成希氏は、「教員の働き方改革とGIGAスクール構想を支えるツールとして、生成AIを活用する余地は大きい。今後は、授業での活用に向け、アナログ教材との使い分けや、用途別コントロールなどの運用ノウハウの蓄積が重要になる。また、校務での利用率が急上昇している背景には、GIGAスクール構想で整備したクラウド教育アプリとの連携が影響している。安心安全な利用には、教育組織の管理、制御が鍵になる」と指摘した。
また、今後の生成AI利活用については、「授業で高い利用率となったGWSや、校務で利用されているM365は、追加費用がなく生成AIを利用でき、教育組織は、この状況をうまく活かせる可能性がある。多様な教材やツールを、自らの意思で取捨選択できることを大前提として、クラウド基盤を活用することで、標準的な生成AIと、利用シーンに最適化したAIを使い分けるなど、より戦略的な運用が期待できる」とする一方、「文部科学省は、生成AIの利用に関して、年齢一律での禁止を避け、小学校低学年から活用する道筋を示した。発達段階を考慮した慎重な見極めを促し、情報モラルを含む、生成AIの活用能力の育成が必要である」と提言した。
一方、文部科学省初等中等教育局教育職員政策課働き方改革推進室は、2026年3月9日に「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」を発表。これによると、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインに基づき、生成AIを校務で活用している」との設問に対して、「ほぼ全員の教職員が活用している」との回答は2.6%に留まり、「一部の教職員が活用している(半分以上)」が14.6%、「一部の教職員が活用している(半分未満)」が66.5%、「全く活用していない」が16.3%となった。
前年の調査では、「ほぼ全員の教職員が活用している」との回答は0.5%、「一部の教職員が活用している(半分以上)」が2.2%、「一部の教職員が活用している(半分未満)」が38.4%、「全く活用していない」が58.9%だった。
前年調査と比較すると、「全く活用していない」という学校が、58.9%から16.3%へと大幅に減少しているほか、「一定以上取り組んでいると回答した学校の割合」は、2.7%から17.2%に増加している。
ここからも、教育現場において、この1年間で、急速な勢いで生成AIが浸透していることが浮き彫りになっている。
なお、同調査は、2万8049校の公立小中学校や、1810の公立義務教育諸学校の設置者を対象に集計。文部科学省の発表では、そのほかにも、以下のように点が明らかになった。
- 「児童生徒の欠席・遅刻・早退連絡について、クラウドサービスを用い、PC・モバイル端末等から受け付け、学校内で集計していますか」
- 完全にデジタル化している 55.5%
- 一部している(半分以上) 28.7%
- 一部している(半分未満) 3.7%
- 全くしていない 12.1%
- 「学校から保護者へ発信するお便り・配布物を、クラウドサービスを用いて一斉配信していますか」
- 完全にデジタル化している 13.1%
- 一部している(半分以上) 48.6%
- 一部している(半分未満) 33.2%
- 全くしていない 5.1%
- 「学校説明会や保護者面談などにオンライン形式を取り入れていますか」
- 完全にオンライン化している 0.3%
- 一部取り入れている(半分以上) 4.7%
- 一部取り入れている(半分未満) 21.9%
- 全く取り入れていない 73.1%
- 「児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどの端末を、家庭で利用できるようにしていますか」
- 毎日持ち帰って、毎日利用させている 24.7%
- 毎日持ち帰って、時々利用させている 16.6%
- 時々持ち帰って、時々利用させている 48.4%
- 臨時休業等の非常時のみ、持ち帰ることとしている 3.9%
- 持ち帰らせていない 5.0%
- 持ち帰ってはいけないこととしている 1.4%
- 「宿題をクラウドサービスやデジタルドリル教材を用いて実施・採点していますか
- 完全にデジタル化している 0.9%
- 一部している(半分以上) 20.0%
- 一部している(半分未満) 63.0%
- 全くしていない 16.1%
- 「職員会議等の資料をクラウド上で共有しペーパーレス化していますか」
- 完全にペーパーレス化している 44.6%
- 一部している(半分以上) 38.7%
- 一部している(半分未満) 11.9%
- 全くしていない 4.8%
- 「教職員が作成した教材等をクラウド上で共有し活用していますか」
- 必要な資料はすべて共有している 14.9%
- 一部している(半分以上) 32.1%
- 一部している(半分未満) 44.6%
- 全くしていない 8.4%
- 「職員会議等をハイブリッド(対面・オンライン)で実施していますか」
- 完全にハイブリッド化している 1.3%
- 一部している(半分以上) 2.3%
- 一部している(半分未満) 7.7%
- 全くしていない 88.7%
- 「FAXの利用が例外的に必要と考えられる業務以外の日常の業務にFAXを使用していますか」
- 使用していない 28.3%
- 使用している 71.7%
- 「業務で押印が必要な書類はありますか」
- ない 9.0%
- ある 91.0%












