パナソニック オペレーショナルエクセレンス デザイン部門は、2026年2月19日から21日まで、京都市のPanasonic Design Kyotoにおいて、「未来をつくるプロセス展」を開催する。その様子が事前に公開された。
同社デザイン部門と、グループ各部門とが連携し、創出してきた未来構想や製品、サービスを、思考段階から視覚化に至るまでのプロセスとして、体系的に紹介する初の試みとなる。
プロダクトデザインやコミュニケーションデザイン、ビジネスデザイン、サービスデザイン、ビジョンデザインなどの領域から、11のテーマで展示を行い、「気づく」「考える」「つくる」「伝える」というプロセスの観点で、パソナニックデザインの取り組みを紹介する。
パナソニックグループでは、2026年1月1日付で、パナソニック オペレーショナルエクセレンスに、デザイン部門を新設し、各事業会社のデザインセンターを統括する体制へと移行している。今回の展示では、パナソニックが、デザインフィロソフィーとして掲げる「Future Craft」に基づき、精緻さや繊細さなどの日本の価値観を大切にしたパナソニックらしさを意識した展示にフォーカス。デザイン部門が、各種部門との共創によって実現するデザインを、プロセスとして捉え、それらを社内外に向けて初めて公開するものになる。
パナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員 デザイン担当の木村博光氏は、「いまは既存事業の延長線上だけでは、なかなか成長が描きにくいなかで、パナソニックグループとしての新基軸や、事業変革を考える上で、問いをどう立てるかが重要であると考えている」と前置きし、「デザイン部門では、気づく、考える、つくる、伝えるという 4つのステップを、1つの『型』として大事にし、共創のフレームに捉えている。このプロセスを通じて、事業の捉え方そのものを変えていくことを目指しており、その成果が徐々に出始めている」と述べた上で、「今回の展示では、製品、サービスが生み出される場での思考と実践のプロセスに焦点を当てることにした。結果だけでなく、その裏側に焦点を当てた内容になっている。横断して価値が生まれるまでの意思決定と共創のプロセスを見える化していこうとを考えた。完成形を見せる場ではなく、一緒に未来をどう描くかを考える機会にしたい」と語った。
前述したように、今回のイベントでは、テザイン部門の活動の代表事例を、4つのプロセスを切り口にした展示を行っている。
顧客ニーズを発見するためのインサイトリサーチを行う「気づく(Insight)」、課題解決のためのアイデアを仮説として立ち上げる「考える(Strategy)」、プロトタイプとして見える化する「つくる(Create)」、つくったものを顧客に正しく伝達する「伝える(Storytelling)」というプロセスを見せることにこだわった。
「気づく」では、社会や顧客、技術などの「変革のドライバー」を継続的に観察し、これらの情報を常に更新することで、インサイトを得るヒントにしている取り組みを示した。また、同社では、世界中の有識者が参加するネットワークを有しており、机上の空論ではなく、一次情報を見に行き、自分で体感しに行くことで、確度の高い仮説をつくることにもこだわっているという。これらの活動を通じて、様々な顧客の潜在ニーズを発見して、事業構想につながる初期のブリーフの作成につなげている。
「考える」では、技術や規格、製造、品質、マーケティングといった事業を構成する要件を整理、統合して、分かりやすく構造化、視覚化することで、本質課題を見極めた独自の仮説を立案。長期ビジョンから、事業構造、商品化に至る様々なレイヤーでの計画を立案するとともに、各種戦略を策定して、実行していくことになるという。
また、「つくる」は、思考から視覚化までの多様なデザイン領域において、高品位なアウトプットを実現するフェーズとしている。プロダクトとして表現するだけでなく、空間として表現するなど、あらゆるクリエイティブを実現することになるという。
ここでは、「パナソニックらしさ」という世界観を、ブランドとしてつくり上げるため、デザインガイドラインの確認やレビューを毎週のように実施しながら、独自の世界観を統一していくというトライアルを行なっていることも紹介した。また、デザインシステムやAI基盤といった開発プロセスそのものにもメスを入れ、常に最先端レベルでの運用や、高度化を実現していることも示した。
最後の「伝える」は、生み出した成果を、ブランド価値として高める活動であり、コミュニケーションデザインという領域になる。グラフィックやウェブ、映像、ブランディングという形で具現化していくことになる。また、これに連動したナラティブを確立し、一貫した世界観によってブランド価値を高めていく活動も行う。今後、パナソニックグループでは、「伝える」活動を数多く推進していくことになるという。
なお、パナソニック オペレーショナルエクセレンスでは、デザイン経営の実践を通じて培ってきた「未来構想プログラム」を、2026年1月16日から、社外向けの構想支援プログラムとして提供を開始している。未来起点や人間中心の思考を基盤に、経営層や事業責任者が参画して、事業変革や組織変革につなげていく実践型プログラムで、未来構想ツールの提供、ファシリテーションの実施、浸透・コミュニケーション支援のほか、独自に収集、分析した未来の兆しデータベースをもとにした「兆しカード」の提供などを通じて、Business、Technology、Creativeの視点を持つチームが伴走して、プログラムを推進することになる。また、同プログラムの提供にあわせて、考え方や特長、事例を紹介する専用ウェブサイトも公開した。
「ありたい姿から一歩目を変革する未来構想プログラム」(パナソニック オペレーショナルエクセレンス)
https://www.panasonic.com/jp/pex/business/design/services/visiondesign.html
なお、「未来をつくるプロセス展」の入場は無料だが、事前予約が必要だ。申し込みは同社サイトから行える。定員に達し次第、受付を終了する。
「未来をつくるプロセス展」予約申込みサイト
https://pexdesign-process-of-future.peatix.com/
「未来をつくるプロセス展」の展示の様子
では、「未来をつくるプロセス展」の展示の様子を見てみよう。
ラムダッシュ パームイン
グリップのないシェーバーであるラムダッシュ パームインは、いままでのあたりまえをもう一度疑い、あるべき髭剃り体験を再発見したプロダクトデザインが特徴だ。理想形と思われるビジュアルと試作品を早い段階で提示し、新しい体験価値への共感を、関係者ととも育んだという。試行錯誤を重ねて、磨くことで、固定概念にとらわれない新たなシェーバーが完成した。
Panasonic Quality
コミュニケーションデザインのひとつとして示したのがPanasonic Qualityである。ブランドの本質的な価値は「品質」であると再定義。展示では、製品やサービスの壁を越えた品質へのこだわりを、言葉や映像などによって、わかりやすく伝えた。大切にしてきた品質へのこだわりを、生活者のくらしにどう役立つかを丁寧に説明しており、パナソニックのブランドが「信頼できる理由」を示している。
NICOBO(ニコボ)
高齢化社会やメンタルヘルスなどの社会的課題の解決に貢献するために、思いやりと笑顔を引き出すロボットを通じて、人との新たな関係性を構築することを目指したのがNICOBOだ。パナソニックグループにとっての新規事業であり、今回は、ビジネスデザインの観点から展示した。性格や外観、しっぽ、目、言葉といった部分はゼロから構築。あらゆる顧客接点にデザインが関与することで、世界観を統一し、高いエンゲージメントと低いサービス離脱率を実現したという。
エオリア アプリ
エアコン「エオリア」の専用アプリでは、家電分野で培ったユニバーサルデザインのノウハウを活かし、自然な操作体験を実現することに成功した。ユーザーの自宅を訪問したり、ヒアリングを行ったりしながら、1次情報を丁寧に収集し、得られたインサイトから最適なボタンの配置や、統一した世界観での設計を進めるとともに、プロトタイプによる検証を繰り返して、迷わず操作できる体験を設計したという。知る、始める、使う、使い続けるという顧客とのすべての接点を、一貫してデザインしたのも特徴だ。広告での認知づくりから、アプリのダウンロードにつながる導線設計や、継続利用を支えるクリーニングサービスも提案した。
空気質の見える化ソリューション
空気質という「見えない価値」を可視化するアプローチであり、B2B領域の取り組みのひとつとなる。感染症対策への意識の高まりなどを背景に、温度や湿度などの空気の状態だけでなく、気流や除菌物質の濃度などを重視する必要があることを示しながら、パナソニックグループが持つ除菌技術が、空間に広がるモデルを提案した。評価施設であるAIR HUB TOKYOにおいて、リアルタイム計測・シミュレーション検証を実施して、空気質の評価基準と、それを可視化する技術を確立しており、空気環境を見える化することで、室内の環境に対する解像度を高め、安心で安全な空気を、価値として認識できるようにした。
Panasonic HX
水素を活用したエネルギーソリューションの総称が「Panasonic HX」。純水素型燃料電池、太陽電池、蓄電池を組み合わせた3電池連携制御や、水素による発電時の熱エネルギーを効率的に活用するソリューションなどで構成する。Panasonic HXを展開している欧州市場において、官公庁やビジネスパートナーへのヒアリングを通して、求められる情報と伝えたい情報のギャップを抽出し、その差分を埋めるための情報を設計した。また、ウェブからショールームなどの多様なコンテンツに展開するための共通ガイドラインもまとめたという。ロンドンに拠点を置くPanasonic Design Londonを活用することで、日本では捉えにくい欧州の環境ニーズや事業ニーズを精度高く読み取り、欧州の文化を踏まえた形で伝わるようにした点も見逃せない。
noiful (ノイフル)
物件オーナーを対象にした賃貸マンション向け家電サブスクサービスという新たな取り組みがnoifulだ。入居者やオーナー、管理会社の各視点から、期待と課題を読み解き、誰に、どんな価値を届けるかを整理。パナソニックの総合力を生かし、家電サブスクと空間デザイン、循環型モデルを組み合わせて「持たない豊かさ」という新たな提案とともに、空き家問題や環境配慮などの社会課題の解決にもつなげた。ビジネスデザインの取り組みのひとつと位置づけている。
リズモ(RizMo)
女性のからだと心の状態を整える体調ナビゲーションサービス。生理周期に連動した自律神経の変化を解析し、女性特有の体調変化を見える化して、毎日のコンディションケアをサポートする。サービスデザインの観点からアプローチし、「一生涯使い続けたくなるサービス体験」を開発思想に、250人のモニターと数カ月に渡って共創活動を行い、日々のバイタルデータの取得から、専門家によるアドバイスの提供まで、切れ目のない体験を設計したという。、「毎日どう過ごすか」を直感的に理解できるサービスを実現できたという。
VISIO UX
デザイン部門が描いた10年後のありたい姿を示したのがVISIO UXである。ビジョンデザイン領域の取り組みとなる。国内外の約400人の生活者や専門家への調査と、長期に渡るマクロトレンドの分析を掛け合わせることによって、くらしへの影響が大きく、持続的な問題となる要素を抽出。「Becoming with」の全体コンセプトの切り口から、11シーンの未来の理想像を描いている。、確度の高い社会変化の予測数値などをもとに、未来の社会や人のくらしを、手触り感があるビジュアルにまとめており、事業部門の発想の幅を広げ、様々な新事業創出につなげることができているという。
デザイン経営実践プロジェクト
事業部のキーマンとともに、「ありたい未来」を共創するプロジェクトと位置づけており、「思考のデザイン」を経営に取り入れ、事業戦略の基となるように、言語化した未来を描いくことを目指している。これもビジョンデザインのひとつだ。未来起点や人間中心で考える「可視化のデザイン」を通じて、多様な方法論を体系化。ビジネステクノロジークリエイティブ(BTC)の視点を持つファシリテーターが伴走して、良質な思考を引き出しながら、戦略構築および実践へとつなげていくという。
Oneness AI
AI時代における新たなデザインプロセス探索ツールがOneness AIである。「パナソニックデザインAI基盤」と位置づけられるものだ。生成AIを、人の創造力を拡張する共創パートナーと位置づけ、AIが得意な垂直思考の網羅的アイデアの発想と、人間にしかできない水平思考の発想を掛け合わせることで、固定概念を超えた良質なアウトプットを創出。それらを高速で可視化するとともに、多角的に検証して、アイデアの実装へとつなげるという。ブランドコミュニケーションガイドラインなどを学習する一方、「気づく」「考える」「つくる」「伝える」の業務知見を保有している独自AIツールによって、幅広い経験データをもとに、様々な業務に対応しながら、「パナソニックらしさ」も維持できるという。




















