日立製作所は、研究開発グループの最新の研究開発成果を公開する展示イベント「Technology Community 2025」を、2025年11月20日、東京・国分寺の同社「協創の森」で開催した。

  • 研究開発成果を公開する展示イベント「Technology Community 2025」

    研究開発成果を公開する展示イベント「Technology Community 2025」

AIをテーマに、エネルギーやモビリティ、インダストリー、金融、セキュリティ、経営・企画などの各領域における37種類の研究成果や技術、応用事例を紹介した。

  • 展示会場の様子。37種類の研究開発成果が公開された

    展示会場の様子。37種類の研究開発成果が公開された

日立製作所 執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長の鮫嶋茂稔氏は、「日立製作所は、2025年度から、中期経営計画であるInspire 2027を進めている。それにあわせて、研究開発の観点でも、サステナブルなイノベーション向けて、様々な取り組みを進めているところである。ポイントは、『What’s next』であり、次の成長に向けた取り組みを推進している。R&Dは、日立グループの現在の事業の成長と、製品やサービスを差別化するとともに、外部環境の変化の中で、新たな変換点を創生し、ニューホライズンを開拓する役割を担う」と述べた。

  • 日立製作所 執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長の鮫嶋茂稔氏

    日立製作所 執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長の鮫嶋茂稔氏

展示会場の様子を、写真を通じてレポートする。

Lumada 3.0

  • 多様な現場データと急速なAIの進化に対応するUDL技術。鉄道や電力、製造現場の多様な装置データ収集だけでなく、設計や運用ドキュメント、現場音声など扱うべきデータの多様化に柔軟に対応するための技術となる

  • フィジカルAIとフロントラインワーカーの協働を実現するNaivyのデモストレーション。24時間365日の監視を行うとともに、ロボットの遠隔操作や協調作業を実現。現場の人手不足の課題に対応する

    フィジカルAIとフロントラインワーカーの協働を実現するNaivyのデモストレーション。24時間365日の監視を行うとともに、ロボットの遠隔操作や協調作業を実現。現場の人手不足の課題に対応する

  • カメラを搭載したロボットが現場内を巡回して異常を検知する

    カメラを搭載したロボットが現場内を巡回して異常を検知する

  • 現場での異常を検知すると、これまでに蓄積したナレッジから適切な指示を行う

    現場での異常を検知すると、これまでに蓄積したナレッジから適切な指示を行う

  • 3次元メタバース空間上で状況を把握できる。赤いところがロボットや人がいる場所

  • 異常が発生するとカメラとアームを搭載した犬型ロボットが出動してバルブを閉める作業を行う

    異常が発生するとカメラとアームを搭載した犬型ロボットが出動してバルブを閉める作業を行う

  • ロボットに指示を与え、メーターの写真を撮影することができる。作業が完了していることをダブルチェックできる

    ロボットに指示を与え、メーターの写真を撮影することができる。作業が完了していることをダブルチェックできる

  • 熟練者が遠隔地からロボットを操作することも可能だ

    熟練者が遠隔地からロボットを操作することも可能だ

  • Naivyへの指示により、人型ロボットがバルブを閉める様子も実演した

    Naivyへの指示により、人型ロボットがバルブを閉める様子も実演した

  • 熟練者や現場の行動基準を学習させた日立独自の業務特化型AIモデルも紹介。OTの複雑なタスクをフェイルセーフに処理可能な独自の生成AIと位置づけている。LLM Factoryをフィジカル用途にも拡大し、One Hitachi AXに貢献するという

    熟練者や現場の行動基準を学習させた日立独自の業務特化型AIモデルも紹介。OTの複雑なタスクをフェイルセーフに処理可能な独自の生成AIと位置づけている。LLM Factoryをフィジカル用途にも拡大し、One Hitachi AXに貢献するという

  • AIエージェント基盤の取り組みも紹介。現場主導によるAIエージェントの開発および共有と、高度な専門性を必要とする現場系AIエージェントの開発を両立することができるという。AI導入の恩恵を受ける業務範囲の拡大に貢献する

    AIエージェント基盤の取り組みも紹介。現場主導によるAIエージェントの開発および共有と、高度な専門性を必要とする現場系AIエージェントの開発を両立することができるという。AI導入の恩恵を受ける業務範囲の拡大に貢献する

  • プロダクトを知能化するアプリ特化AI半導体を展示。Lumada3.0の現場適用を強化するアプリ特化AIチップと位置づけ、現場データの価値変換をリアルタイムに行い、顧客の課題解決や持続的な成長に貢献する価値の創出を目指すという。現在は育成フェーズの技術だという

  • HMAX for Buildingは、社会インフラ保守の安全確保のため、作業員が装着したカメラの現場映像を、AIでリアルタイムに監視、分析することができる。日立独自のOT知識AIとの連動により、的確なリスク検知とアラート発信を実現する

  • HARC for AIは、AIエージェントの導入効果を最大化することができる伴走型サービス。AI特有の運用課題を継続的に観測、改善し、健全なガバナンスと信頼性の高いAI活用を支援する

    HARC for AIは、AIエージェントの導入効果を最大化することができる伴走型サービス。AI特有の運用課題を継続的に観測、改善し、健全なガバナンスと信頼性の高いAI活用を支援する

エネルギー

  • 社会のデジタル化を支える電力解析を行う「AI活用グリッドソリューション」。物理ベースのAI活用解析高速化技術と日立のITおよびOTソリューションの融合により、系統評価期間の短期化を図り、新規電源のリードタイムを短縮。北米データセンターの早期社会実装を支援する

  • エネルギー分野向けのHMAX for Energy。送配電設備の寿命延伸と更新を効率化するため、RCM手法を活用した保全計画支援技術を開発。経験知によって、故障リスクを定量化し、安定供給に貢献する

    エネルギー分野向けのHMAX for Energy。送配電設備の寿命延伸と更新を効率化するため、RCM手法を活用した保全計画支援技術を開発。経験知によって、故障リスクを定量化し、安定供給に貢献する

モビリティ

518 鉄道事業におけるHMAXは、列車、信号、インフラ管理を最適化するため、AIで強化されたオールインワンのデジタルアセットマネジメントプラットフォーム。すでに実用化されており、車両やレール、地上設備などにセンサーを搭載し、ここで実測したデータを組み合わせてAIで分析。運行や保守を効率化することができる

  • 最先端のデジタル技術を取り入れた鉄道車両工場である米ヘイガーズタウン工場が、2025年9月に本格稼働した。工場DXの最新事例として紹介した

    最先端のデジタル技術を取り入れた鉄道車両工場である米ヘイガーズタウン工場が、2025年9月に本格稼働した。工場DXの最新事例として紹介した

金融

  • データ駆動型金融を紹介。現場データおよび経営データから、顧客資金需要を予見する金融需要予測技術を開発した。顧客のキャッシュフローの安定化とリスク低減に貢献する

    データ駆動型金融を紹介。現場データおよび経営データから、顧客資金需要を予見する金融需要予測技術を開発した。顧客のキャッシュフローの安定化とリスク低減に貢献する

  • 生命保険向け引受審査エージェント。加入者の自由記述に基づく告知文章に対して、病名の抽出と標準病名コードへの変換を行い、自動査定を可能にする

    生命保険向け引受審査エージェント。加入者の自由記述に基づく告知文章に対して、病名の抽出と標準病名コードへの変換を行い、自動査定を可能にする

インダストリー

  • 自律進化型製造オートメーションは、OTナレッジを組み込み、状態認知から制御実行を、高信頼で自動化する製造Physical AI技術。左側の遠隔操作装置で動きを30回学習させると、ロボットが自ら考えて動作する。双腕協調により、ケーブルを掴んでははめ込む作業も可能だ。1秒間に20回思考し、持つ位置や力加減を正確に行うという。現在は研究フェーズだ

  • 中国国内向けに、エレベーターの施工の重作業の一部を自動化する技術を開発している。コンクリート壁面の穴あけや部品設置などをロボットで実行し、作業の安全化や作業者の身体負担を軽減できる

    中国国内向けに、エレベーターの施工の重作業の一部を自動化する技術を開発している。コンクリート壁面の穴あけや部品設置などをロボットで実行し、作業の安全化や作業者の身体負担を軽減できる

  • 電池開発の高効率化を支援するプロセスDX技術。電池製造工程における製造、中間検査、電池性能データを活用した機械学習モデルを構築。これを用いた電池性能予測技術および最適条件探索技術を開発した。電池製造の歩留まり向上、およびプロセス開発の期間短縮に貢献するという

    電池開発の高効率化を支援するプロセスDX技術。電池製造工程における製造、中間検査、電池性能データを活用した機械学習モデルを構築。これを用いた電池性能予測技術および最適条件探索技術を開発した。電池製造の歩留まり向上、およびプロセス開発の期間短縮に貢献するという

  • 細胞遺伝子治療向けに効果的な遺伝子配列を自動設計する生成AI。デジタル技術とバイオ技術を融合した「デザイン細胞開発プラットフォーム」技術を開発し、細胞遺伝子治療薬の開発に取り組む製薬企業やバイオテックなどを支援することができる。年間10万種類の設計および評価を可能にし、細胞遺伝子治療薬開発の探索研究に要する期間を短縮できる

データセンター

  • 小平記念館内に設置されているTechnology Showcase for Future Data Centerのエリアを活用してデータセンターに関する取り組みを紹介

    小平記念館内に設置されているTechnology Showcase for Future Data Centerのエリアを活用してデータセンターに関する取り組みを紹介

  • Technology Showcase for Future Data Center の様子。今後、データセンターに関する最新ソリューションを常設するという

    Technology Showcase for Future Data Center の様子。今後、データセンターに関する最新ソリューションを常設するという

  • データセンターのライフサイクル全般を通じて、設計の高度化から運用の効率化までをワンストップで実現する

    データセンターのライフサイクル全般を通じて、設計の高度化から運用の効率化までをワンストップで実現する

  • 導入リードタイムの長期化、電力消費量の増加、電力需要の増加という3つの課題に対応し、情報とエネルギーのハブとして社会に受容されるデータセンターの提供を目指すという

    導入リードタイムの長期化、電力消費量の増加、電力需要の増加という3つの課題に対応し、情報とエネルギーのハブとして社会に受容されるデータセンターの提供を目指すという

  • 床に記された四角がサーバーラックの面積。外枠はコンテナ型データセンターのサイズを想定している

    床に記された四角がサーバーラックの面積。外枠はコンテナ型データセンターのサイズを想定している

  • ARを活用してサーバーラックを設置した様子を再現でき、実際の規模感を確認できる

    ARを活用してサーバーラックを設置した様子を再現でき、実際の規模感を確認できる

  • コンテナ型データセンターの設計において試行しているCAD

    コンテナ型データセンターの設計において試行しているCAD

  • IT/DC統合運用ソリューションでは、特定のGPUに稼働が集中しないように分散させることで過剰な発熱を抑制するとともに、AI処理の負荷に応じた冷却稼働制御を実現する

    IT/DC統合運用ソリューションでは、特定のGPUに稼働が集中しないように分散させることで過剰な発熱を抑制するとともに、AI処理の負荷に応じた冷却稼働制御を実現する

  • GPU稼働連動型再エネ利活用技術では、GPUに対するデマンド変動を推定し、再エネの発電変動とも連動させることができる。試験運用ではPV未利用率を14.0%から6.2%に引き下げることができたという

モノづくり

  • 循環型モノづくりの提案では、モノや情報といった資源を、循環再利用することを促し、モノづくりを持続可能にしていくためのデジタルテクノロジー群を紹介した

  • 生成AIがモノづくりを革新する「Design for X」のパネル展示も行った。製品の製造性やメンテナンス性などを、3D CAD上で言語によってチェックする。設計プロセスの効率化と高品質な製品創出に貢献する

セキュリティ

  • Security & Safety for AIは、ミッションクリティカル業務に対して、安全なAIの適用により、運用効率と安全性向上を両立させる研究だ。AIシステムの現場適用における安全性向上に貢献する。プロトタイプの画面も公開した

  • AIを活用したOTペネトレーションテストを紹介。社会インフラを守るOTセキュリティテストフレームワークとして、制御機器の脆弱性検査などを行う

経営・企画・デザイン・その他

  • 「経営高度化AI」として、変化する経営環境に応じてリスクを抽出し、リスク低減のためのシナリオを生成する技術を開発した。リスクを織り込みすぎた判断を防ぎ、経営の最適化に貢献するという

  • 「MA-ATRIX(Maturity Assessment & AI TRansformation IndeX)」は、生成AIの活用状況を診断し、業務変革につなげることができる。組織の生成AI活用状況を7つの評価軸で体系的に診断し、業務変革の段階的な推進とガバナンス強化を支援することができる

    「MA-ATRIX(Maturity Assessment & AI TRansformation IndeX)」は、生成AIの活用状況を診断し、業務変革につなげることができる。組織の生成AI活用状況を7つの評価軸で体系的に診断し、業務変革の段階的な推進とガバナンス強化を支援することができる

  • 将来課題を解決する事業創生のための戦略立案を支援するAIを展示。自治体や省庁、製造業などの組織の戦略策定をAIエージェントによって支援することができる。バックキャスト型の問題分析、既存の技術や政策との比較、ブレイクスルーアイデア創出など、将来課題の解決に資する事業創生の企画立案をAIが支援するという

  • 日立製作所では、シリコン量子コンピュータの実用化を目指して開発を進めている。2027年度にクラウド公開し、産業応用や新事業の創出を加速する。量子ビットアレイチップも公開した

  • 展示会場では、日立グループが受賞したグッドデザイン賞の各種製品を展示。洗濯機や冷蔵庫、鉄道車両など幅広い分野に渡っている