東京ビックサイトで、20205年11月9日まで開催された「Japan Mobility Show 2025」のツアープログラム「Tokyo Future Tour 2035」に、富士通が出展し、量子コンピュータによって実現する10年後の未来の東京を提案していた。

  • 東京ビッグサイトで開催されたJapan Mobility Show 2025。東京モーターショーの後継イベントとして知られるが、今回、富士通が量子コンピュータ技術で出展

    東京ビッグサイトで開催されたJapan Mobility Show 2025。東京モーターショーの後継イベントとして知られるが、今回、富士通が量子コンピュータ技術で出展

富士通ブースでは、FUJITSUのロゴが入ったショーケースのなかに、64量子ビットの量子コンピュータのモックアップを展示。冷凍機部分などがシャンデリアのような形状で、派手な金色となっている量子コンピュータを見ることができ、コンピューティングの未来を感じることができた。

  • 展示した量子コンピュータのモックアップ

    展示した量子コンピュータのモックアップ

このモックアップは、神奈川県川崎市の富士通本社「Fujitsu Technology Park」のテクノロジーホールに常設展示しているものであり、Tokyo Future Tour 2035の期間中に限定して、広く公開することになった。さらに、富士通ブースでは、量子コンピュータに関する技術動画と、未来のモビリティのユースケースを紹介する動画を放映している。

  • 未来の都市におけるユースケースを動画で紹介した

    未来の都市におけるユースケースを動画で紹介した

Tokyo Future Tour 2035は、10年後の生活や景色を体験できる未来ツアープログラムとして企画されており、西2ホールを使用。未来で生活をともにするロボットやAIが迎える「INTRODUCTION」、空や海、宇宙へと活躍を広げるモビリティの可能性に触れることができる「FUTURE WORLD LAND/SKY/SEA」、未来の街並みで出会える数多くのモビリティを体験できる「FUTURE CITY LIFE」、アウトドアやオフグリッドな空間でのモビリティの活躍を体感する「FUTURE OUT-DOOR LIFE」、モビリティの製造工程の進化、プラットフォーム化によるデザインの自由度などを体験できる「FUTURE DESIGN FACTORY」の5つのエリアで構成し、170社以上が参加している。

10年後の未来を支える量子コンピュータの技術

富士通のブースは、Tokyo Future Tour 2035を入って、ステージのすぐ横。最初に訪れることができる場所にあった。

  • ツアープログラム「Tokyo Future Tour 2035」の入口

    ツアープログラム「Tokyo Future Tour 2035」の入口

Tokyo Future Tour 2035の最初のエリアに、量子コンピュータのモックアップを展示することで、10年後の未来の実現において、ベースとなる技術のひとつが量子コンピュータであるというメッセージをアピールすることにもつながっている。

  • 富士通ブースの様子

    富士通ブースの様子

富士通が、10年後の未来を体験する「Tokyo Future Tour 2035」に出展し、そこに量子コンピュータを展示したのは、10年後のモビリティの未来を支える技術としての役割を担うだけでなく、モビリティを取り巻く課題の解決に量子コンピュータが活用できると考えているからだ。

渋滞のない都市や効率的な物流の実現、エネルギーや環境への取り組み、新たな素材の開発などには、天文学的な組み合わせのなかから、最適な解を求める必要があり、こうした計算を得意とするのが量子コンピュータとなる。また、災害時には最適な避難経路を判断して、避難者に指示をしたり、エネルギー効率を極限まで高めた新たなモビリティの提案を行ったりといったことにも量子コンピュータは利用できる。

世界最速のスーパーコンピュータでも数年かかっていた計算が、0と1の重ね合わせを利用する量子コンピュータでは、膨大な並列探索と相関処理を実現し、わずか数時間で解いてしまうといったことも可能だ。

社会課題を解決するためのツールとして、量子コンピュータが貢献できる領域は多く、そこに、この分野で先行する富士通が果たす役割があるというわけだ。

富士通ブースでは、Tokyo Future Tour 2035のために、新たな制作した未来のモビリティを紹介する動画のなかで、量子コンピュータによって実現する課題解決の具体的な事例を示している。

たとえば、数値や原子の詳細なシミュレーションによって、外の熱を完全に断熱する素材や、圧倒的に軽量な素材、色を変えられる素材、発電できる素材などを開発し、これを車両の素材として活用できる可能性について紹介している。

また、EV向けバッテリーでは、エネルギー密度が高く、劣化せず、安全で、レアメタルが不要な技術を生み出すことにつながり、EVの性能を飛躍的に向上させることができるという。

さらに、車両や道路、交通情報のみならず、気象、環境、人流などを組み合わせた大規模な計算を短時間で解くことで、無駄がなく、最適で、安全な自動運転が可能になるという。

複雑な空気の流れを細かく再現するための膨大な計算も可能になることから、空飛ぶクルマが、都市のビル間を飛行する際に生じる風の流れや、建物周辺の複雑な風の干渉を予測し、最適な姿勢制御と飛行経路を導き出すことができる。

自動運転車やドローン、空飛ぶクルマなど、多様なモビリティが飛躍的に増加する未来において、価値を最大化する人とモノの移動を支える最適化に、量子コンピュータ技術は大きく貢献するというわけだ。

「富士通の量子コンピュータは、陸、海、空の多様なモビリティに対して、自由、幸福を支える、地域と地球の自立と、安全を実現する力になる」と、富士通では説明している。

量子コンピュータの広がり、業界の垣根を超えた「人」が重要

今回の出展は、富士通のモビリティ事業本部が主体となって進めたものだ。量子コンピュータのテクノロジーよりも、むしろ、量子コンピュータを活用したユースケースの提案や、それに向けたパートナーづくりという狙いがある。

同社では、「クロスインダストリーでの提案を進め、様々なビジネスへの広がりにもつなげていきたい」としている。

今回の出展にあわせて、富士通 執行役員専務の福田譲氏は、「量子コンピュータの広がりにおいて、鍵になるのは、テクノロジーに加えて、人が重要である。自動車のプロフェッショナル、物流の最前線で働くプロ、スマートシティを構想する人たち、未来のモビリティを利用するすべての生活者が、業界の垣根や立場を超えて、一緒になって、未来のモビリティの実現に向けた取り組みを進めることが大切だ。富士通が提供する量子コンピュータを核として、世界がうらやむような新しいモビリティの社会を、日本から作り上げたい。多くの人たちに、そのエコシステムに参加して欲しい」と述べている。

富士通は、2025年4月に、量子コンピュータに関する最新のロードマップを公表。2025年4月に、256量子ビットの超伝導量コンピュータを開発し、理化学研究所に設置したのに続き、2026年12月には、1024量子ビットコンピュータを開発。富士通本社の「Fujitsu Technology Park」に建設中の量子棟に設置することになる。

  • 富士通が公表している量子コンピュータのロードマップ

    富士通が公表している量子コンピュータのロードマップ

また、2030年には、1万量子ビット(250論理ビット)の量子コンピュータを開発する予定であり、2035年には1000論理ビットの量子コンピュータを開発することも発表している。

さらに、富士通では、誤り訂正技術や、STARアーキテクチャ技術、量子アプリケーション技術の開発にも力を注ぎ、加えて、HPCと量子コンピュータの連携にも挑んでいる。