• 日立ルームエアコン「白くまくん」の新CMに登場する吉岡里帆さんと白くまくん

    日立ルームエアコン「白くまくん」の新CMに登場する吉岡里帆さんと白くまくん

日立ブランドのルームエアコン「白くまくん」などの事業を行う日立ジョンソンコントロールズ空調の日本・台湾担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーに、2024年3月1日付で、菊地正幸氏が就任した。同社のルームエアコン事業を統括するなど、日本市場における実質的な経営にあたる。菊地氏は、「これまでの成長戦略を維持し、国内シェア20%の達成を目指す」と意気込む。菊地氏が目指す経営とはどんなものなのだろうか。

  • 日立ジョンソンコントロールズ空調 日本・台湾担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーの菊地正幸氏

様々な経営者のスタイルを学び、自分流の経営を見出す

菊地氏は、1959年、秋田県出身。自動車部品メーカーであるナイルスに、1977年に入社してキャリアをスタート。秋田ナイルスや、タイ、中国の海外子会社のCEOなどを歴任。その後、日本電産コパルでは執行役員として、海外全拠点の会長に就任。黒字転換を果たす一方、日本電産(現ニデック)の永守重信氏の経営手法などを学ぶ機会を得たという。

その後、日立ジョンソンコントロールズ空調の社長を務めた秋山勝司氏の誘いを受けて、2020年5月に同社に入社し、同年9月から台湾ビジネスユニット長に就任していた。前任の泉田金太郎氏が、一身上の都合により2024年2月末で退職したのに伴い、日本・台湾担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとして、日本および台湾での経営にあたる。

菊地氏は、「これまでの成長戦略を継続し、シェア20%を目指す戦略にも変更はない」としながらも、「泉田氏は、シェアを拡大するためにマーケティングに力を注ぎ、社内における情報共有にも注力し、社員とのコミュニケーションも重視してきた。実際に高いシェアを獲得することにも成功した。それを引き継ぎながら、私は、エンジニア部門の力を向上させ、国内回帰した生産拠点の競争力を高め、負けない体制を作ることに力を注ぐ。利益率が低い製品の改善にも取り組む。とくに、品質にはこだわっていく。販売を支える土台を強くしていく」などと語った。

ニデックの永守氏をはじめ、様々な経営者のスタイルを学んだことが、自らの経営につながるとする。「特定の経営者の手法を真似るのではなく、優れた経営者のいいところをチョイスしながら、自分流の経営をしていきたい」と語る。

品質のこだわりについては、自らのエピソードを加えて話す。

台湾で事業を担当した際に、製品に傷がついていることに、現地ではあまりこだわっていなかったが、菊地氏は、ここに着目し、現状を分析し、対策を実行。数1000件も発生していた傷を、2年間で80%削減したという。

「すべての品質にこだわる。まずは、お客様に品質が悪いものを提供しない。そして、設計の改善を通じて、内部での品質を高め、お客様が使っていてトラブルが発生しないようにする。品質は競争力に直結するものであり、競争力がなければ収益が高まらない」

また、「前を向いていくことが大切だ。売上げを重視し、その進捗をしっかりと管理する。以前の会社では、2秒でわかるようにすることが求められたが、ひとめで見ていまの状況がいいのか、悪いのかを理解できるようにし、すぐにアクションに移せるようにすることが大切だ」とも語る。

  • 菊地氏は、その経験からも「売上げ」を重視する姿勢を明確にしつつ、一方で製品の品質にこだわるとし、品質は競争力そして収益に直結すると説明する

かつて在籍した会社で、業績悪化を背景にしたリストラを目の当たりにした経験からも売上、収益をあげることの大切さを身に染みて感じているという。

「赤字は絶対にいけない。成長しなければ、嫌なこと(=リストラ)をしなくてならなくなる。事業計画は必ず達成し、できれば過達したい。これが経営者の基本姿勢である。そして、小さい出来事の積み重ねが大きくなるため、小さいことを大切にしていく。一気に伸ばす経営ではなく、階段を一段ずつ昇るように、着実に積み上げていく経営が、製造業における優秀な経営者のスタイルだと考えている」とも語る。

さらに、「米国企業の良さと、日本のやり方をつなぐことも私の役割だと考えている」とし、菊地氏の海外経験の長さも生かしていく姿勢をみせた。

こうした基本方針や経営の考え方については、2024年4月から各拠点を訪問し、従業員との直接対話を通じて伝える考えだ。

トロイカ体制で日本および台湾の事業を推進

内部体質の強化を自らの役割とする菊地氏は、対外的な発信を積極化するため、日本・アジア地域セールス・マーケティング本部長の福家秀樹氏と、日本家庭用空調ビジネスユニット家庭用事業本部長の鷹取聡氏を据え、トロイカ体制での日本および台湾の事業を推進する考えも示した。

  • (左から)日立ジョンソンコントロールズ空調 日本家庭用空調ビジネスユニット家庭用事業本部長の鷹取聡氏、日立ジョンソンコントロールズ空調 日本・台湾担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーの菊地正幸氏、日立ジョンソンコントロールズ空調 日本・アジア地域セールス・マーケティング本部長の福家秀樹氏

福家氏は、ソニーで中国や米国での事業を担当。B2CおよびB2Bの経験を持ち、その後、ニデックを経て、2023年に、日立ジョンソンコントロールズ空調に入社した。「白くまくんのシェアが上昇している。これをさらに高めていきたい。ジョンソンコントロールズの米国企業としてのビジネスの進め方と、日立が培ってきた日本でのブランド力とモノづくりの力を組み合わせて、前進させていきたい」と述べた。

また、鷹取氏は、1993年に日立家電に入社。営業畑を中心に、約30年に渡り、日立の家電事業に携わってきた。「エアコンは今後も成長する製品である。北日本では、エアコンの普及率が低かったが、温暖化の影響で夏場にエアコンを使いたいといったニーズが増えている。また、1部屋に1台に設置するため小型エアコンのニーズも増加している。地球温暖化や省エネ化の課題解決に取り組むことが重要であり、商品力、供給力、ブランド力の3点に力を注ぎ、シェアを高めていく」と抱負を述べた。

商品力では、「清潔エアコン」の方針を打ち出し、「凍結洗浄」による室内熱交換器や室外熱交換器、排水トレーの自動掃除の実現、ファンの羽根の先端に付いた汚れを自動で定期的にブラッシングする「ファンお掃除ロボ」の搭載、汚れにくいステンレスにより、エアコン内部の風の通り道を清潔にする「ステンレスクリーンシステム」の採用などの特徴を継続的に訴求する。今年度のプレミアムXシリーズでは、前年モデルに比べて2倍の空気清浄能力を実現。においを消したり、花粉を取り除いたりする機能を進化させている。

供給力では、地産地消の方針を打ち出し、栃木市大平町にある栃木事業所での生産体制を強化。中国で生産していたスリムエアコンの生産を栃木事業所に移管するなど、国内向けルームエアコンの国内生産比率を、2022年度の30%から、2024年度には50%以上にする方針を明らかにしている。また、ルームエアコンには、約800点の部品が使用されているが、その7割を日本から調達していることも示す。さらに、国内調達を中心としたダブルソーシング体制と、国内生産によるリードタイムの短縮により、ルームエアコンの安定供給を実現することになる。

50年目を迎える「白くまくん」、成長の道筋を描けるか

そして、ブランド力では、約50年の歴史を持つ「白くまくん」を積極的に活用。すでに、8代目であり、日本人の80~90%の人が白くまくんに触れているという実績を生かして、SNSによる情報発信やイベント開催、工場見学会などを実施。。エアコンの使い方や電気の削減方法、SDGsへの貢献などについて学ぶ場も用意するという。とくに、2024年はブランド力を高める1年と位置づけており、新たなテレビCMも放映することになる。

  • 白くまくんは50周年へ。ほかにも2025年度は、日立の空調事業にとって様々な節目が重なる記念的な年だ

菊地氏は、「商品の競争力がないと、販売が拡大せず、収益がついてこない。販売を拡大するには、ブランド力が大切である。そして、ブランド力を維持するには品質が重要である。ブランド価値を揺るぎないものにするために、品質にこだわっていく」と強調した。

2025年度は、白くまくんのブランドを開始してから50年目を迎え、日立ジョンソンコントロールズ空調が設立してから10年目を迎える。また、台湾での事業開始からも60周年の節目を迎え、周年行事が重なる1年になる。

「2025年度を次の成長に向けたきっかけになる1年にしたい。2024年はそのための準備の1年になる」と、菊地氏は位置づける。

節目となる2025年度を初年度とする新たな中期経営計画の策定にも、この1年で取り組むことになる。

生産現場で長年の経験を持つ菊地氏が、日本および台湾の事業責任者に就くことで、シェア拡大の勢いに乗る日立のルームエアコンの成長戦略を、さらに加速させることができるかが注目される。