パナソニックグループは、米ラスベガスで開催しているCES 2024のプレスカンファレンスにおいて、サーキュラーエコノミーへの取り組みを説明するとともに、有機ELテレビやオーブンレンジ、車載向けプレミアムオーディオなどの新製品を発表した。

  • CES 2024、パナソニックのプレスカンファレンスの様子

    CES 2024、パナソニックのプレスカンファレンスの様子

パナソニックグループは、ラスベガスコンベンションセンターのセントラルホールに出展。「Create Today. Enrich Tomorrow」をテーマに、サーキュラーエコノミーをはじめとした環境への取り組みを紹介するとともに、くらしの質を向上するための新たな製品群を展示しており、プレスカンファレンスの内容もそれに沿ったものになった。プレスカンファレンスでは、「CES 2024では、パナソニックグループの前向きな進化を見せることになる」と述べている。

サーキュラーエコノミーへの取り組みを強化

パナソニックグループでは、2022年1月のCES 2022のプレスカンファレンスで、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発表。それを起点に、2050年には、現在の世界のCO2総排出量の約1%となる3億トンの削減インパクトを目標に掲げ、その実現に向けた活動をスタートしている。

取り組み内容は多岐に渡るが、今回のプレスカンファレンスで主題のひとつに取り上げたサーキュラーエコノミーは、大量消費による資源の枯渇という課題にフォーカスし、長く使い続けられる製品設計と仕組みを提案するとともに、プラスチックに代わるサステナブル素材の開発などを通じて、資源循環型社会を目指す活動と位置づけている。「単なるテクノロジーの話ではなく、人々がより健康で、より快適で、より楽しい生活を送るウェルビーイングを実現するためのイノベーション」としている。

プレスカンファレンスでは、ステージ上に、パナソニックグループが開発したミスト粒径を約6μmまで微細化した極微細ミスト「シルキーファインミスト」が噴霧されるなかでプレゼンテーションがスタート。そのなかを登場したパナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員 品質・環境担当の上原宏敏氏は、「いますぐにでも、エネルギーの利用に関して、有意義な変化を及ぼす必要がある。そうしなければ悲惨な結果が訪れる。政府は、カーボンを削減する目標を打ち出しているが、これらの目標を達成するには、企業が協力する必要がある。同時に、パナソニックグループは、CO2排出量を削減しながら、人々の生活をより豊かにする責任もある。人々の生活を豊かにする素晴らしい製品を提供することで、この課題を解決することが未来につながる」と述べ、その取り組みのひとつとして、サーキュラーエコノミーをあげた。

  • パナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員 品質・環境担当の上原宏敏氏

ここでは、、自然由来の端材を使用したセルロースファイバー樹脂「kinari」を実用化し、間伐材や廃紙、コーヒーかすなどの廃棄物から、プラスチックに代わる素材を生み出し、今後は、つなぎ樹脂も含めて100%生分解可能になるように開発を進めてすることを紹介したほか、バイオCO2変換では、空気中のCO2をもとに、農作物の成長を刺激したり、補助したりする成分を合成し、これを農作物の葉に吹き付けることで、約40%の収穫量の増加や安定的な生産につなげる成果が期待されること、分散型電源管理システムである「DERMS(Distributed Energy Resource Management Systems)」では、家電製品を管理したり、光熱費を管理したり、省エネを支援したり、さらには、地域のエネルギー需給に合わせてEVの充放電を最適化したりといった試験運用を米国で行っていることを紹介した。

また、STEM教育に力を注いでいる水泳選手のKatie Ledecky氏とのパートナーシップによる「Innovators for IMPACT」を展開。日本へのバーチャル旅行を通じて、学生がパナソニックグループのサステナブルな活動を理解するとともに、STEM教育に関心を持つきっかけづくりを支援することも発表した。

なお、「Panasonic GREEN IMPACT」の進捗状況として、パナソニックグループの31の自社工場および拠点において、カーボンニュートラルを実現したこと、そのうちパナソニックオートモーティブシステムズでは、14拠点のすべてがカーボンニュートラルを達成していること、2023年3月時点で、自社のCO2排出量を930万トン削減し、3,700万トンの削減貢献量を達成したことなどを示した。

車載分野では最先端のHPCシステムをアピール

Panasonic Automotive Systems of AmericaのTodd Lancasterエグゼクティブバイスプレジデントは、車載分野における新たな発表を行った。

パナソニックグループがソフトウェア・デファインド・モビリティにおいて、最前線で確固たる地位を築いていることを強調。最先端のHPCシステムとなる「Neuron」を新たに発表した。

  • 最先端のHPCシステムとなる「Neuron」を新たに発表。中央がPanasonic Automotive Systems of AmericaエグゼクティブバイスプレジデントのTodd Lancaster氏

Neuronは、車両のソフトウェアの更新やアップグレードだけでなく、プラットフォームのライフサイクル全体において、ハードウェアのアップグレードを可能にし、新しいアーキテクチャー設計を利用することで、電子制御ユニット(ECU)を最大80%削減でき、より高速で、軽量なクロスドメインコンピューティングとリアルタイムでの機能間横断通信を可能にするという。

Panasonic Automotive Systems of AmericaのTodd Lancasterエグゼクティブバイスプレジデントは、「ソフトウェアのアップグレードにより、ハードウェア機能を拡張することで、ライフサイクルの延長をサポートする車両システムに注目が集まっている。HPCにより、車両全体のパフォーマンスを向上させ、処理や共有、センシング、洞察を導き出すと同時に、運転支援機能も処理する」と語る。Neuronを通じて、ユーザーは自動車の所有全体にわたって性能、安全性、革新性を最大化でき、自動車メーカーは、今後何世代にもわたって、将来を見据えたプラットフォームを持つことができるという。

また、ELS STUDIO 3Dを搭載したFisker Pulse オーディオシステムを発表。15個の高性能スピーカーを用いた特別な設計を行い、電気自動車の「Fisker Ocean One」に搭載することで、同様の音響出力を持つ一般的なオーディオシステムと比較して最大60%の消費電力削減を可能にしたほか、2025年型INFINITI QX80においては、Klipschと共同開発したプレミアムオーディオシステムを発表。オーディオマニアが満足するレベルの高音質とパフォーマンスを車内全体に提供できるという。さらに、クラウドネイティブ車載ソフトウェア開発環境の「Virtual SkipGen」が、AWS Marketplaceで入手できるようになったことも説明。自動車コックピット開発のハードウェアとソフトウェアの分離と、クラウドネイティブ化を促進できると述べた。

テレビ中心に最新家電、Amazonとパートナーシップ

プレスカンファレンスでは、新たな製品群も発表した。

有機ELテレビでは、新たなフラッグシップモデルとなる「Z95A」と「Z93A」を発表。Z95Aは、65型と55型のMaster OLED Ultimateパネルモジュールを搭載。Z93Aは77型のMaster OLED Pro Cinemaサイズを実現している。いずれも、新しいHCX Pro AI Processor MKIIを搭載しており、画像の鮮明さと色の精度を向上。Technicsによって調整された360 Soundscape Proは、没入型3Dサラウンドサウンドを実現しているという。

大きな特徴のひとつが、Fire TVを搭載した点だ。ストリーミングサービスやアプリ、ライブチャンネル、カスタマイズしたおすすめなどをまとめたパーソナライズ化したホーム画面を提供することで、コンテンツの発見と楽しみ方を革新できるという。また、パナソニックのスマートテレビとしては、初めてAlexaによる遠距離音声制御が可能になり、音声によるアプリの起動や音楽の再生、タイトルの検索、スマートホームの制御などを簡単に行える。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション(PEAC)の豊嶋明社長は、「パナソニックは、最も正確な画質を映し出すことにこだわってきた。だが、私たちの新しい使命は、単に優れた画像と音声を提供するだけでなく、コンテンツ発見のプロセスを簡素化し、さらに楽しいものにすることである。それを実現するために、Amazonを味方につける必要があった」とコメント。パナソニック 海外マーケティング本部CXマーケティングセンター マーケティング・コミュニケーション部メディア戦略三課の河野遥氏は「箱から出してすぐにAlexa互換デバイスとシームレスに統合できる。Amazonとのパートナーシップは、さらなる成長と、画期的な機能への道のりの始まりに過ぎない」と述べた。また、Amazon Fire TV担当バイスプレジテントのDaniel Rausch氏は、「パナソニックとAmazonは、最高のハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、高品質で、革新的なスマートテレビ体験を実現することになる。コンテンツとアプリの発見が視聴体験の中心になり、Alexaとの緊密な統合と最新のAIの活用により、見たいものを見つけやすくなる。Fire TVは、将来出荷されるテレビのプライマリOSになる」などと述べた。

  • パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション(PEAC)の豊嶋明社長

  • パナソニック 海外マーケティング本部CXマーケティングセンター マーケティング・コミュニケーション部メディア戦略三課の河野遥氏

  • Amazon Fire TV担当バイスプレジテントのDaniel Rausch氏

すでに、日本で発売しているパームシェーバーを、2024年度には米国でも発売することも公表した。従来のシェーバーに比べて70%小型化した手のひらサイズの5枚刃シェーバーであり、海水由来のミネラル成分から生まれた素材である「NAGORI」を採用することで、プラスチックの使用量を40%削減するだけでなく、セラミックのような手触りも実現している。

  • パームシェーバーを米国でも発売

また、2023年1月のCESで発表したMULTISHAPEにも新たなアタッチメントを追加する。MULTISHAPEは、充電式バッテリーグリップに、シェーバーやトリマー、歯ブラシなど着脱できるもので、ニーズに合わせた選択するモジュール式のパーソナルケアシステムだ。新たなアタッチメントとして、フェイシャルケア、フットケア、ヘアバリカン、ディテールトリマー&シェーバーセットを発表。「自宅に居ながら、かかとからつま先までの角質を取り除くサロン体験が可能になる」(Panasonic Consumer Electronics Company マーケティング&エクスペリエンス担当ディレクターのMichelle Esgar氏)としている。

  • Panasonic Consumer Electronics Company マーケティング&エクスペリエンス担当ディレクターのMichelle Esgar氏

さらに、「HomeCHEF」ブランドで展開するマルチオーブンの新製品として、エアフライ機能やコンベクションオーブン機能、炙り機能、インバーター電子レンジ機能を搭載したコンパクトな4-in-1マルチオーブンを発表。新たに米Frescoの自動調理アプリに対応し、より手早く簡単に、美味しい調理体験ができるという。

FrescoのCEOであるBen Harris氏は、「これまでの電子レンジでは達成できなかった精度で調理する能力を提供できる。適切な設定を再確認する必要がなくなる。家庭の食事の好みに合わせて、レシピを簡単にパーソナライズできるAI機能搭載の調理アシスタントも提供する」と説明した。

  • FrescoのCEOであるBen Harris氏

そのほか、デジタルカメラのLUMIXでは、クリエイティビティ分野での活用が推進されていること、ライカやSIGMAとの連携を強化していること、DJIとの連携により、DJI Roninシリーズとの双方向接続を可能にしている唯一のカメラブランドであること、Kondor BlueとSanDiskとの連携により、Kondor Blue PRO-BLADE SSDハンドルを共同開発したことなどを紹介した。新たなレンズとして、同社特許を用いた新たなフォーカスモーターを採用したLUMIX S 100mm F2.8 MACROも発表した。