オーエスは、プロジェクター用スクリーンの製造・販売をはじめ、学校などの教育現場、文教施設、AVシステム会議室、ホールなどの総合設計・施工などで大きな実績をあげている企業だ。2013年には創業60周年を迎える老舗企業でありながら、なおも新しい挑戦を続けている。「キモチをカタチに」というスローガンのもと、顧客のニーズに合った"ものづくり"にこだわり、躍進を続けるオーエス。2代目社長の奥村正之氏にお話を伺った。

--■ 来年創業60周年を迎えるオーエスグループのこれまでの歩みを教えて下さい。--

当社は、映像を映し出すスクリーンの歴史と共に歩んできました。1953年に父が大阪の堺市で映画館用スクリーンの製作と設置を行う会社を興しました。大きなスクリーンで観る映画にみんなが歓喜した映画館の全盛期です。映画館の営業中に製作して夜のうちに設置、帰ってきたらまた製作……と1日を効率的に使って業績を伸ばしました。

1965年頃から学校での視聴覚教育が始まり、教室でスクリーンを使う授業が普及します。そこで、当時衰退していた映画館から教育現場へとマーケットのフィールドを移しました。スクリーンは学校だけではなく、企業でも研修や会議などに使われます。市場は拡大し、映像だけではなく付随する設備などへのニーズが出てきました。でも当時はまだ未開発の分野です。そこで、自分たちで試行錯誤を重ねつつ、映像・音響を複合的に製品化して提供しようという営業開発の精神が生まれました。

1989年に世界初の液晶プロジェクターが誕生すると、スライドや映写機の時代は終わります。家庭ではホームシアターがブームになり、やがてプラズマテレビが出現、スクリーンは衰退します。そこで我々は、特殊スクリーンやプロジェクター、音響システムの分野へとフィールドを広げ、コミュニケーション分野にも力を注ぎ、開発から設置までのワンストップソリューションを展開、現在に至っています。当社はこのように、様々な時代の変化やニーズに柔軟に対応してきているのです。

--取り組まれている映像・音響システムついて教えて下さい。--

映像・音響システムと聞いてもピンと来ないかもしれませんね。具体的にどのような場所で当社の製品やシステムが使われているかあげてみましょう。 国内なら、都内の大型インテリジェントビルのアナウンスなどの放送設備や、ドーム球場の天井にある幅7m×高さ10mの広告幕。これは毎年オープン戦前に当社が印刷して掛け変えています。海外では、上海にある国際金融センタービルのプラズマテレビのコンテンツ運用があります。表示される案内用の動画は、当社社員が常駐して制作・配信しています。一般の方が直接目にする機会は少ないかもしれませんが身近な場所で利用していただいています。

当社はスクリーンの製造・販売からスタートしましたが、それに固執せず次々と商品やサービスを生み出し、企業として進む道を柔軟に修正してきました。「うちはスクリーン屋だから」と映される側の商品だけを作っていたら、時代に取り残されこうして60周年を迎えることはできなかったと思います。

--■ 次代を担う人材育成についてどんな取り組みをされていますか?--

当社が目指しているのは、若い人たちが活躍できる場があり、先輩の知恵を次の世代へ引き継いでいける環境のある会社です。そのためには自社製品についてだけではなく、思いや経験を伝えられる指導者がいて、彼らによって若手が育っていく必要があります。そこで当社では、大手企業で責任ある立場にいた有能な55歳以上の人を積極的に採用することを始めました。先輩と同じ課題(仕事)を共に追いかけ体験することで、先人の知恵を身につけられるよう、勉強できる環境と題材を作ることに力を注いでいます。

老舗企業になるほど革新的なことを避けてしまいがちかも知れませんが、良いと思うことは積極的に取り入れる柔軟さは創業当時から変わっていません。人材育成の方針についても同様の思いで取り組んでいます。

--今後の事業展開について教えて下さい。--

これからのマーケットはやはり海外です。海外市場に向けたソリューションをより一層発信していきたいと思っています。そのためには、世界を舞台にビジネス展開できる実力を、若い世代に身につけてもらい、どんどんオーエスブランドを広めていってもらいたい。すでに東南アジアの拠点として北京と香港にグループ企業があり、入社間もない社員も赴任しています。先日第一期生が帰国しましたが、海外市場で戦っていくためのスキルを身につけてきていました。

また、当社は環境推進企業として地球環境との共存に取り組み、その一環として「太陽光発電システム」開発にも着手しています。2010年には巻取り収納式"モバイルソーラーユニット"を発表しました。これからも安心して暮らせる社会づくりに私たちが培ってきた技術やノウハウがお役に立てればと思っています。

創業60周年を迎えますが、原点であるものづくりの精神を忘れずに"グローバルやんちゃ企業"として、新しいビジネスモデル作りに挑戦し、世界中にオーエスブランドを広げていきたいですね。

会社概要
社名:株式会社オーエス
設立:昭和28年4月23日
資本金:4,608万円
代表者:代表取締役/奥村 正之
事業内容:映像・音響システム関連機器の企画・設計・製造・販売及び設置等
事業所:本社/大阪市西成区南津守6丁目5番53号 オーエス大阪ビル