前回触れたように、MIDI機器にはMIDI端子という5ピンの端子がいくつか用意されており、複数のMIDI機器間をMIDIケーブルにより接続すれば、コントロールが可能となる。ただしMIDIケーブルの中を流れる信号は一方通行のため、ルールに合わせて的確に接続しなくては、動作しない。
MIDI OUT→MIDI INが基本
前回触れたように、MIDI機器にはMIDI端子という5ピンの端子がいくつか用意されており、複数のMIDI機器間をMIDIケーブルにより接続すれば、コントロールが可能となる。ただしMIDIケーブルの中を流れる信号は一方通行のため、ルールに合わせて的確に接続しなくては、動作しない。
もっとも基本となる接続パターン。鍵盤一体型のMIDI楽器であれば楽器Aの鍵盤を弾けば、楽器Bもユニゾンで鳴る。楽器Aが音源を内蔵しないMIDIキーボードの場合は、その操作により楽器Bが演奏されることになる |
ではそのルールはどのようになっているか。基本は図1のように、2台の機材をMIDI OUT→MIDI INと接続する。この場合、データは楽器Aから楽器Bへと流れ、一方通行のため逆に楽器Bから楽器Aへ流れることはない
操作の結果を具体的にいえば、楽器Aを演奏すれば、楽器Aが鳴るのと同時に楽器Bでも同じ音程で音が鳴る。この理屈を言葉で表せば、楽器Aは鍵盤を弾いたことで演奏されるとともに、MIDI OUT端子からそのMIDI信号が出力される。そして楽器Bは、MIDI IN端子に入力されたMIDI信号を受けて、演奏されることになる。つまり、楽器Aと楽器Bがユニゾンで鳴るのだ。
ただし図1では楽器BのMIDI OUT端子は接続されていないため、楽器Bを弾いても楽器Bだけが鳴り、楽器Aは反応しない。楽器Bで弾いた結果を楽器Aでも鳴らしたい場合には図2のような接続方法となる。
もうお分かりだろうが、MIDI IN同士、またMIDI OUT同士を接続してもデータのやり取りはまったく不可能である。これはMIDI出力、MIDI入力と言葉を変え、AV機器のオーディオ入出力端子を思い浮かべればわかりやすいだろう。
パソコンでもMIDIのルールを内部的に再現している
ではMIDI端子の残りの一種類、MIDI THRUはどのようなときに使うのだろうか。これは前回軽く触れたが、スルーの名の通りに、入ったMIDI信号がそのまま通過して出て行く端子である。
MIDI THRUを使って3台のMIDI楽器を接続すれば、楽器Aを弾くことで3台がユニゾンで鳴る。このパターンの場合、楽器CはMIDI OUTに何も繋がっていないため鍵盤を弾いても単独でしか演奏されない |
つまり、楽器が3台ある場合に、MIDI THRUが有用になる。具体的には図3のように接続する。この場合は楽器Aを弾くと楽器Bが鳴り、また楽器BのMIDI INに入力されたMIDI信号がそのままMIDI THRUから出力されるため、楽器Cも鳴る。言葉にすると長いがもちろん動作としては一瞬であり、楽器Aを弾けば同時に楽器Bと楽器Cがタイムラグもなく、ユニゾンで鳴るのだ。
ここまではパソコンのことは特に考えずMIDI機器として解説してきたが、図中のMIDI機器を「MIDIインタフェースを接続したパソコン」と読み替えても接続方法のルール自体は変わらない。たとえばUSB接続のMIDIインタフェースを利用し、パソコンと各MIDI機器を接続するならば、図4のようになる。
USB接続のMIDIインタフェースを使い、パソコンを接続する代表的なパターン。MIDIキーボードがMIDI楽器内蔵型の場合、パソコンからMIDI信号を出力することでMIDIインタフェースを通じ、MIDIキーボードを演奏することも可能となる |
最近のDAWソフトとソフトシンセ、そしてUSB接続のMIDIキーボードを使えば、実際にはMIDIケーブルとMIDI端子を接続することなく、MIDIを扱うことができる。しかしこれはMIDIが不要となったわけではなく、USBケーブルを通じてMIDI信号がパソコンに入力され、ソフトシンセを演奏しているからだ。DAWソフトでソフトシンセを演奏するにはMIDIトラックにMIDIデータを記録してソフトシンセをコントロールするわけだが、そのMIDIトラックのMIDI出力先はソフトシンセを指定する必要がある。つまりMIDIトラックのMIDI OUT→ソフトシンセのMIDI INをソフトウェア的に再現している。実際にケーブルを接続することはなくても、知識としてきちんと理解しておこう。
では、MIDIケーブルの中はどのような信号が流れているのだろうか? 次回はこのMIDI信号について紹介しよう。