エムエスアイコンピュータージャパンの「Big Bang」シリーズは、同社が持てるあらゆる技術を惜しみなく注ぎ込んだことを示すハイエンドマザーボード。既にIntel P55のLGA1156製品は登場しているが、Core i7のExtreme EditionなどIntel最高峰CPUを載せるには、言うまでも無くLGA1366への対応が不可欠である。今回紹介する「Big Bang-XPower」はIntel X58チップセットを搭載し、LGA1366に対応したハイエンドユーザー待望の製品なのだ。

MSI Big Bang-XPower

「MSI Big Bang-XPower」

メーカー MSI
製品名 Big Bang-XPower
フォームファクタ ATX
対応ソケット LGA1366
対応CPU Intel Core i7/i7 Extreme Edition
チップセット Intel X58 Express
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×6基(最大容量24GB)、アンバッファードDDR3 2133(OC)/2100(OC)/1800(OC)/1600(OC)/1333/1066MHz対応
拡張スロット PCI Express (2.0) x16×6、PCI Express x1×1
マルチグラフィックス NVIDIA SLI/ATI CrossFire
ストレージ SATA 6Gbps×2ポート(Marvell 88SE9128)、SATA II×6ポート(Intel P55)、eSATA×2ポート(JMicron JMB362)
RAID機能 RAID 0/1/5/10(Intel P55)、RAID 0/1(Marvell 88SE9128)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×2(Realtek RTL8111DL)
オーディオ機能 Quantum Waveサウンドカード同梱(8Ch出力対応、I/Oパネル部にS/PDIF光角型出力端子装備、EAX Advanced HD 5.0/THX/CPRM対応)
インタフェース USB 3.0×2ポート(NEC D720200F1)、USB 2.0×6ポート(+ピンヘッダにより4ポートの拡張が可能)、IEEE1394×1ポート(+ピンヘッダにより1ポートの拡張が可能 VIA VT6315N)

Big Bangシリーズと言えば、Intel P55 Expressに、NVIDIA/ATI混載のマルチGPUを可能とするLucid HYDRA 200チップを追加した「Big Bang-Fuzion」が有名で、ほかにもIntel P55 ExpressにnForce 200を追加した「Big Bang-Trinergy」も話題となった。しかしながら今回のBig Bang-XPowerでは、最新インタフェースであるUSB 3.0とSATA 6Gbpsの実装こそあるものの、従来モデルのような特殊な追加チップは搭載していない。奇をてらわず、あくまで、CPUの性能を極限まで引き出すことを念頭に置いた設計こそが、Big Bang-XPowerのアイデンティティーとなっているようである。

バックパネル。青いUSBポートがUSB 3.0のポートである

USB 3.0のコントローラチップはNECの「D720200F1」

SATA 6GbpsのチップはMarvellの「88SE9128」だった

ざっと確認してみると、まずは同社ハイエンドマザーボードの象徴でもある電源回路「DrMOS」は、CPU周りだけで合計16フェーズ。負荷の状況にあわせてリアルタイムで動作フェーズ数をコントロールする「APS(アクティブ・フェーズ・スイッチ)」機能も組み合わされているので、省電力動作からオーバークロックまで最適な効率で電源を生成させることが可能となっている。

そして、最近ではこちらもハイエンドの定番となってきている高寿命ポリマーコンデンサ「Hi-c CAP」がCPU周りにずらりと並び、これは安定性に寄与するだけでなく、"背の低さ"から利用可能なCPUクーラーの選択肢をひろげるというメリットもある。ほか細かいところだと、チョークコイルも個体チョークコイルを採用しており、これによりコイル部の発熱を抑えることができるとともに、あの嫌な"コイル鳴き"の悩みも解消されている。

CPU周り。ポリマーコンデンサ「Hi-c CAP」と個体チョークコイルがズラリ並ぶ様は壮観。ヒートパイプで繋がれたヒートシンクの下に、おなじみの「DrMOS」が並んでいる

ヒートシンクを繋ぐヒートパイプのアップ、かなりの太さがあり、見るからに冷えそうではある

「DrMOS」のDriver MOSFETはルネサスの「R2J20651」。DrMOSはCPU周りに16フェーズと、メモリ、QPI、IOHの電源回路としても2フェーズずつ実装されている

これは「APS」連動のインジケータとして機能するLED。現在使っている「DrMOS」のフェーズ数を視覚的に確認できる

次に、このボードの最も目立つ特徴でもある、拡張スロットの構成を紹介しよう。その構成は、全7本ある拡張スロットのうち、6本がPCI Express x16という思い切ったものだ。ここにはグラフィックスカードはもちろん、高性能RAIDカードなども好きなだけ拡張することができる。なお、グラフィックスカードは最大でも4枚までという仕様で、その際のレーン構成はx8レーン×4となる。残るもう1本はPCI Express x1となっているが、そちらは製品に同梱される192KHz/24ビット出力対応の高機能サウンドカード「Quantum Wave」専用で使うことになるだろう。

6本のPCI Express x16スロットと、1本のPCI Express x1が並ぶ拡張スロット部

2スロット厚のカードだと物理的に3枚までとなるが、1スロット厚のカードなら6枚挿せそうだが、動作は最大4枚まで可能という仕様だ

スロット間にはASMediaの「ASM1440」が実装されていた。これはPCI Expressのスイッチチップだ

こちらは、複数のグラフィックスカードを利用する際の、各スロットのレーン数早見表

製品パッケージにはSLI用とCrossFire用のブリッジも複数同梱

PCI Express x1は、付属のサウンドカード用として利用するといいだろう

質実剛健でも限界突破でも、最強を狙うための一枚

基本スペックの高さから、筆者的には、"硬く"最強PCを組みたいユーザーにオススメしたいBig Bang-XPowerだが、さらに"濃く"限界まで遊びたいユーザーを楽しませてくれる機能も満載だ。ここまで紹介したように、そもそも基本スペックが普通に使うには高すぎるくらいなので、オーバークロック用途での実力もいわずもがな。

そんなわけでオーバークロッカー向けの機能も凄いことになっている。その代表格が外付けの有機LEDディスプレイ付きコントロールパネル「OCダッシュボード」で、オーバークロック時のステータス管理や設定が、システムをケースに組み込んだままでも実施できるので、オーバークロック環境を常用する際にはありがたい機能だ。オーバークロック設定を統括する独自チップの「OC Genie」を基本に実装された各種OC機能群は、この製品の強力な武器となり得ている。

外付けコントロールパネル「OCダッシュボード」。バックパネルの専用コネクタにケーブル接続して利用する

これが「OC Genie」のチップ。オーバークロックの自動設定などを統括してくれるMSI独自のチップだ

写真の「OC Genie」ボタンを押すだけで、ワンプッシュで最適なオーバークロック設定を完了させることが出来る

「V-Check Points」。CPUやメモリ、IOHの電圧をテスターで直接測定できるという、これもかなり特徴的な機能だ。ほかにも紹介しきれない様々なオーバークロック機能が実装されている

Big Bang-XPowerは、例えば6コアのIntel Core i7-980Xを載せたら、例えばトップエンドのGPUをマルチ構成で載せたら、かなり大変なことになるだろうな……などと、ハイエンドな"自作心"をワクワクさせてくれる、上限がかなり高い基本スペックを備えている。オーバークロック向けの機能などを見ると、ユーザーのチャレンジにどこまでも応えてくれるような懐の広さも感じさせてくれる。ハイエンドを目指すユーザーであれば、一度は手にしてみたい一枚に仕上がっていると評価したい。