AMD 8シリーズチップセットの最上位製品「AMD 890FX」は、16レーン×2のCrossFireXをサポートしている。"ここが決め手"というハイエンドユーザーも多いことだろう。そんななか、今回紹介するMSI「890FXA-GD70」は、計5本のx16スロットを搭載し8レーン×4本というレーン構成でのCrossFireXをサポートする、かなりのハイエンド志向の製品だ。

MSI 890FXA-GD70

メーカー エムエスアイコンピュータージャパン
製品名 890FXA-GD70
フォームファクタ ATX
対応ソケット AM3
対応CPU Phenom II X6/X4/X3/X2、Athlon II X4/X3/X2
チップセット AMD 890FX+SB850
対応メモリ DDR3 SDRAMスロット×4基(最大容量16GB)、アンバッファードDDR3 1600/1333/1066/800
拡張スロット PCI Express 2.0 x16×5(x16+x0+x4+x16+x0またはx8+x8+x4+x8+x8で利用可能)、PCI Express 2.0 x1×1、PCI×1
マルチグラフィックス ATI CrossFireX
ストレージ SATA 6Gbps×6ポート(SB850×6ポート)、SATA II×1(JMicron JMB363)、eSATA×1ポート(JMicron JMB363)
RAID機能 SB850(RAID 0/1/5/0+1)
ネットワーク 10/100/1000BASE-T×1(Realtek RTL8111DL)
オーディオ機能 7.1 HDオーディオ(Realtek ALC892)
インタフェース USB 3.0(NEC D720200F1)×2、USB 2.0×6(+ピンヘッダにより6ポートの拡張が可能)、IEEE1394(+ピンヘッダにより2ポートの拡張が可能 VIA VT6315N)

AMD 890FXはAMD 8シリーズチップセットの最上位製品。8シリーズチップセットとしては唯一、16レーン×2本のCrossFireXに対応する。また、組み合わせるサウスブリッジチップも790FXのSB750からSB850へとアップグレードされ、SATA 6Gbpsが利用可能なほか、ノース-サウス間の転送速度もA-Link Express IIIによって高速化されたため、USB 3.0などの次世代インタフェースカードを追加する際のボトルネックも解消されている。

Northbridgeと刻印されたAMD 890FXチップ

Southbridgeと刻印されたSB850チップ

バックパネルにはUSB 3.0対応ポートが2つ用意されているほか、計6ポートのUSB 2.0ポートのうち1基はパワーeSATA仕様。GbEポートは2系統だ。また、CMOSクリアスイッチも搭載しており、オーバークロッカーにとって便利なレイアウト。なお、本製品はIEEE1394チップを搭載しているが、バックパネルにはI/Oが無く、ブラケットまたはフロントパネルでポートを実装する。

ハイエンド向け製品ながら比較的大人しいバックパネル。青いUSBポートはUSB 3.0に対応しており、USB 2.0ポートもうち1基がパワーeSATAに対応している。そのほかCMOSクリアスイッチも装備

本製品最大の特徴は拡張スロットレイアウト。都合5本のx16スロットは、x16+x0+x4+x16+x0またはx8+x8+x4+x8+x8という2パターンに切り替え可能だ。この数字をよく見て欲しいが、グラフィックスカード2枚の場合には2スロット間隔で搭載でき、4枚の場合には1スロット間隔で搭載できることになる。冷却を考慮されたレーン配分だ。そのぶん、PCI Express x1スロット(x1カードはx16スロットにも装着可能)およびPCIスロットは他の製品と比べ少ない点が注意点だろう。

2スロット厚のグラフィックスカードを4枚(各8レーン)挿すことも可能なスロットレイアウト

CPU電源回路は同社のハイエンドマザーらしくDrMOSにフェーズ切り替え機能「APS」を組み合わせている。回路のフェーズ数は5。計10基のHi-c CAPも確認できる。6コアのPhenom II X6をサポートするのはもちろん、140W CPUにも対応している。また、CPU周辺回路で特徴的なのはノースブリッジチップのレイアウトだろう。一般的にCPUソケット直下にノースブリッジチップを実装する製品が多いが、本製品ではCPUソケットの左下に置かれている。DrMOSによってCPU電源回路がコンパクト化できたためであろうか。これにより拡張スロットを7本利用できるほか、ノースブリッジチップとCPU電源回路のヒートシンクが一体化しており、見かけ上1チップ構成にも見える独特のデザインとなっている。

Hi-c CAPだけでなくいくつかチョークコイルも採用されているが、これもコイル鳴きしないタイプの固体チョークコイルとされている

オーバークロック機能は自動オーバークロックの「OC Genie」、ダイアル式でクロック調節可能な「OC Dial」の2つを搭載している。また、その横に目を移すと、スイッチ類がタッチセンサー式の「イージーボタン2」を採用。AM3マザーボードの最上位モデルとしての機能が搭載されている。

中央にOC Dial、そして左右にはタッチセンサー式のイージーボタン2

POSTコードを表示するLCDも装備

ストレージはSB850のSATA 6Gbpsが6ポート、追加の「JMB363」チップによりSATA/eSATAが各1ポートとPATAが1系統実装されている。垂直コネクタの追加SATAに関しては場合によっては拡張カードとの干渉が考えられるものの、その他のポートに関してはL字の水平コネクタが採用されている。

ストレージインタフェースは、まずSB850のSATA 6Gbpsが6ポート、JMB363によるSATA IIが1ポート、同じくJMB363のPATAが1系統。バックパネルのeSATAもJMB363の機能による

追加のストレージインタフェース用に搭載されているJMicron JMB363

その他のオンボードチップは、1000BASE-T/100Base-T/10Base-Tに対応するネットワークチップはRealtekの「RTL8111DL」、USB 3.0チップにはNECの「D720200F1」、8chオーディオチップはRealtekの「ALC892」、IEEE1394チップにはVIAの「VT6315N」が採用されている。

Realtek RTL8111DL×2基を搭載し1000BASE-T/100Base-T/10Base-T LANが2系統利用できる

USB3.0×2ポートを実現するNEC D720200F1

8chオーディオ機能用のRealtek ALC892

IEEE1394用に搭載されたVIA VT6315N。バックパネルに端子は無く、ピンヘッダのみ。これをブラケットやフロントインタフェースと接続して利用する

高い拡張性と品質が特徴のAMD 890FXマザー

単純にスプリットしているとはいえ、4本のグラフィックスカードを搭載可能な点は本製品の大きな魅力。もちろん、2本までであればAMD 890FXチップによってともにフルレーンで利用できる。あるいは残ったx16スロットは一般的な拡張カード用として利用することも可能。x4カードやx8カードといった高級RAIDカードを追加する際の装着先としても検討できる。最上位モデルとしての機能も充実、品質も高いのだが、実売価格が2万円台前半に納まっている点もポイントだ。