新興メーカーの英Nothing Technologyは、英国時間の2022年7月12日に発表したスマートフォン「Nothing Phone (1)」を日本でも8月に発売することを明らかにしました。デザインに注力するなど、コンセプトとしてはバルミューダの「BALMUDA Phone」に近いのですが、その価格は69,800円。発売当初の値段の高さで猛批判を浴びたBALMUDA Phoneと比べるとかなり現実的な価格に抑えられていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。

  • 英Nothing Technologyが発表した「Nothing Phone (1)」。背面が透明で中のパーツが見えるなど、背面デザインに非常に力が注がれている

“光る”背面のデザインに強いこだわり

ここ最近、スマートフォン界隈で注目されていたNothing Technology。オッポ傘下で欧米などを中心にハイエンドスマートフォンなどを手掛ける「OnePlus」(日本未進出)の創設者の1人であるカール・ペイ氏が英国で立ち上げた企業であり、デザインに力を注いだデジタル製品を手掛けることで世界的に関心が高まっていました。

同社はすでに、特徴的なデザインのワイヤレスイヤホン「Nothing ear (1)」を日本をはじめいくつかの国々で販売していますが、本命視されていたのはやはりスマートフォンです。実際同社は、デザインなどに特徴を持たせた「Nothing Phone (1)」というスマートフォンの開発を明らかにし、英国時間の2022年7月12日にその販売を正式に発表しています。

  • Nothing Technologyが2021年8月に発売したワイヤレスイヤホン「Nothing ear (1)」。Nothing Phone (1)と同様に透明パーツが用いられているのが特徴だ

Nothing Technologyは既存のデジタル製品に対し、テクノロジーがもたらすワクワク感が失われてしまったことから、それを取り戻す製品を作ることに力を入れているとのこと。その一環として特に力を注いでいるのがデザインであり、Nothing Phone (1)もデザイン面で非常に特徴のある内容となっています。

実際、Nothing Phone (1)は、正面からの見た目こそ通常のスマートフォンですが、背面は透明で中が見える仕組み。その中身も、単に基板などをそのまま見せるのではなく、400以上のパーツを組み合わせ、デザイナーの故マッシモ・ヴィネッリ氏が手掛けたニューヨークの地下鉄路線図から着想を得た独自性のあるデザインとなっています。

それに加えて、Nothing Phone (1)の背面には974個のLEDライトが仕込まれており、これを着信の通知やバッテリーの残量表示、さらにはカメラのライトなど幅広い用途に活用できるようにする「Glyph Interface」という、非常に特徴的な仕組みを備えています。実際Glyph Interfaceを使ってみると、背面が光って従来のスマートフォンにはないインパクトを与えてくれるのが分かります。

  • 背面に搭載された974個のLEDライトを光らせて通知などに活用する「Glyph Interface」は、Nothing Phone (1)の最大の特徴となっている

低コストの要因は部材とソフトにあり

このように、非常に個性的でインパクトある機能を備えたNothing Phone (1)ですが、その価格は69,800円。ディスプレイは有機ELで、チップセットの性能はミドルハイクラス相当、カメラは5000万画素のものを2つ搭載しているなど、スマートフォンとしての性能面を考慮すると価格的にふさわしい内容といえます。

一方で、Nothing Phone (1)のコンセプトはバルミューダが2021年より販売している「BALMUDA Phone」に近い印象を受けます。BALMUDA Phoneも、既存のスマートフォンに対する不満が開発のきっかけとなっており、サイズは非常にコンパクトで丸みのある持ちやすいデザインに力を入れているうえ、アプリなどを独自開発して端末としての統一感を打ち出すなど、強いこだわりと個性で注目されました。

  • 「BALMUDA Phone」もデザインにこだわったスマートフォンの1つだが、販売開始当初の価格はかなり高額だった

ですが、BALMUDA Phoneは発売当初の価格が10万円を超え、性能とコストのバランスを著しく欠いていたため、スマートフォン愛好家を中心に猛批判を浴びる結果となりました。それだけに、なぜNothing Phone (1)は、個性を打ち出しながらも相応の価格に抑えられたのか?という疑問を抱く人もいるかと思います。しかし、それは両機種の内容を見るとよく理解できます。

まず、BALMUDA Phoneの価格が高額になった理由を振り返ると、1つは目指すデザインを実現するため、ディスプレイには汎用ではない独自カスタマイズの液晶を採用するなど、使用する部材にまでこだわり抜いたため。そしてもう1つは、やはり理想とするスマートフォンの実現のため、独自のカレンダーや電卓アプリを搭載し、ホーム画面にも大幅なカスタマイズを施すなど、ソフトウェアにも多くの手を加えたためです。

  • BALMUDA Phoneはすべてが曲線で構成されたデザインを実現するため、ディスプレイの液晶もカスタマイズした専用のものを用いるなど、部材にも徹底してこだわったことで値段が高くなった

一方でNothing Phone (1)は、背面こそ独自色が非常に強いデザインとなっていますが、それ以外の部分は汎用的な部材を用いたことが価格を抑えた要因の1つといえるでしょう。本体の薄さを実現するため、ディスプレイの有機ELパネルに高額なものを採用するなどこだわりを見せている部分はありますが、それもあくまで汎用品の中から選んでおり、BALMUDA Phoneのようなカスタマイズを図っているわけではありません。

  • Nothing Phone (1)の正面は通常のスマートフォンと大きく変わらない。背面以外は汎用の部材を用いているため特徴は弱くなるが、その分価格も抑えられている

そしてもう1つ、ソフトウェア面に関しても、Nothing Phone (1)はAndroid 12をベースとした「Nothing OS」を搭載しているものの、その内容はGlyph Interfaceの制御部分などを除けば素のAndroidに近く、独自に追加したアプリはAndroid標準にはないボイスレコーダーくらい。手間とコストがかかるソフトウェアにあまり手を加えていないことも、コストを抑えている要因といえるでしょう。

それゆえNothing Phone (1)は、消費者にとって不満が少なく購入しやすい価格となっている一方、こだわりを見せる部分が限定的と感じたのも確かです。デザインにこだわったスマートフォンとはいえ、あくまで商品として販売しビジネスを成立させる必要があるだけに、こだわりとコストのバランスをいかに取るかが、メーカー側にとって悩ましいところだったのではないでしょうか。