ソフトバンクは、ライカカメラが監修したAndroidスマートフォン「LEITZ PHONE 1」を独占販売すると発表しました。機能からデザインまで、ライカカメラのこだわりが詰め込まれたLEITZ PHONE 1ですが、その分端末の価格は20万円近くするなど非常に高額でもあります。政府の規制でスマートフォンの値引きが厳しい制約を受けるなか、高額なスマートフォンが増えているのはなぜなのでしょうか。

ライカのこだわりが詰め込まれた「LEITZ PHONE 1」

各社からスマートフォン新機種が次々と発表されているなか、大きな動きを見せたのがソフトバンクです。同社は6月17日、ドイツの老舗カメラメーカーであるライカカメラが全面的に監修したという初のスマートフォン「LEITZ PHONE 1」を独占販売すると発表したのです。

  • ソフトバンクが独占販売を発表した「LEITZ PHONE 1」。ライカカメラが全面監修したスマートフォンになるという。販売開始は7月以降の予定

これまでにも、ファーウェイ・テクノロジーズやシャープなどがライカカメラと提携し、カメラのレンズや画質などにライカカメラのノウハウを取り入れたスマートフォンを投入しています。ですが、LEITZ PHONE 1はライカカメラのブランドを前面に打ち出したスマートフォンで、カメラだけでなく端末のデザインやインターフェースなど、あらゆる面でライカカメラの手が入っているのが大きな特徴となっています。

実は、LEITZ PHONE 1自体の開発は、ライカカメラの提携先の1つであるシャープが手掛けているとのこと。それゆえ、高級コンパクトカメラに搭載されている1インチの大型イメージセンサーを搭載するなど、機能・性能面でシャープがソフトバンクなどに向けて提供している「AQUOS R6」とほぼ同じ内容となっています。

ですが、本体のデザインやカメラアプリにはライカカメラの手が大きく入っています。「Leitz Looks」という機能が搭載され、ライカカメラの特徴にもなっているモノクロ写真の撮影がしやすくなっているほか、専用のケースやレンズキャップなども付属しています。実機に触れてみると、シャープの痕跡を見出すのが難しいほど、ライカカメラ仕様となっているのが分かります。

  • 開発はシャープが担当したとのことで、ベースはAQUOS R6と共通しているとみられるが、本体デザインにいたるまでライカカメラが監修したとのことで、見た目にはかなり違っている印象だ

ですが、それだけに気になるのは価格です。非常に強いこだわりをもって作られているだけに、LEITZ PHONE 1の価格は187,920円と、20万円に迫る値付けがなされており、同じくソフトバンクが販売するAQUOS R6の価格(133,920円)と比べてもかなりの高額です。

ライカカメラ製のカメラはより高額なものが多く存在するだけに、ライカファンからしてみれば「安い」のかもしれませんが、一般人からしてみれば非常に高額であることに間違いありません。ソフトバンクは、端末購入プログラム「トクするサポート+」の適用でより安価に利用できるようにするとしていますが、政府によってスマートフォンの値引きには非常に厳しい規制が課せられているだけに、これだけ値段が高いと売れ行きも気になるところです。

高額スマホはメーカーの生き残り策

ただ、最近の市場環境を見渡すと、機能・性能を重視した最上位のハイエンドモデルを主体として、LEITZ PHONE 1に匹敵するくらい値段が高いスマートフォンは増えているようにも感じています。実際、iPhone 12シリーズの最上位モデル「iPhone 12 Pro Max」は、最も容量が大きい512GBのモデルで165,880円の値段が付けられています(アップルストアでの価格)。

また、最近発売・発表されたモデルを見ても、サムスン電子の「Galaxy S21」シリーズの最上位モデル「Galaxy S21 Ultra 5G」は151,272円、ソニーの「Xperia 1 III」は154,440円です(いずれもドコモオンラインショップでの価格)。AQUOS R6もそれらよりは安いとはいえ、やはり10万円を超える値付けがなされており、非常に高額なモデルであることに間違いないでしょう。

  • 携帯3社から発売が予定されているソニーの「Xperia 1 III」。120Hz駆動の4K有機ELディスプレイや、2段階に切り替わる望遠カメラを搭載するなど、非常に高い機能・性能を備えるが、その分価格も15万円以上する

かつてのような大幅値引きが期待できないなか、これだけ高額なスマートフォンがどれだけ売れるのか?と疑問を感じる人も少なからずいるかと思いますが、にもかかわらず高額なスマートフォンが増えているのは、1つに利益重視の傾向が強まっていることが挙げられるでしょう。

政府の値引き規制によって、最近では3万~5万円程度の低価格なスマートフォンも増えています。ですが、そうした端末はメーカーが得られる利益が小さいので、世界的にも大量販売に強みを持つ中国メーカーの独壇場となっています。それゆえ、国内メーカーのように規模が小さい企業は、台数が少なくても確実に利益が出るスマートフォンに力を入れる傾向が強まっており、それが高額なハイエンドモデルの増加につながる一因といえるでしょう。

そしてもう1つ、高額なモデルの増加は製品のブランドや価値を向上させる狙いも大きいでしょう。小規模のメーカーであっても、現在の市場環境に合わせて低価格端末を強化する必要に迫られていますが、そうしたなかで自社製品を選んでもらうためにも、他社にはない特徴を備えたハイエンドモデルを提供しながら、その技術やコンセプトを低価格モデルに導入することで、ブランド力を高めることが一層重要になってきているわけです。

  • ソニーの「Xperia 10 III」は、21:9比率の縦長ディスプレイや3眼カメラなど、ハイエンドモデルであるXperia 1 IIIの特徴を取り入れながらベースの性能を抑え、低価格で販売されるモデルとなる

そうしたことから、今後も非常に高額なハイエンドモデルは増えていくでしょうし、一方でニーズが高まっている5万円以下の低価格モデルも増え続けることから、スマートフォン市場は今後かなりの二極化が進むものと考えられます。ハイエンドモデルが低価格で購入できた時代を知る消費者からすると、悩ましい選択が求められるともいえそうです。