「格安スマホ」などの名称で注目されながら、その後携帯大手の攻勢で低迷が続いているMVNOですが、その数は増加の一途をたどっているのが実情です。増加の背景には何があるのか、また既存のMVNOはその状況にどう対応しようとしているのでしょうか。2026年1月27日、2つの発表を実施したオプテージの事例から確認してみましょう。
異業種からの参入が既存MVNOのビジネスにも
携帯電話会社からネットワークなどを借りてモバイル通信サービスを提供するMVNOが「格安スマホ」という名前で注目を集めたのは、今からおよそ10年前のこと。当時は、携帯電話会社の料金プランの多様化がまだ進んでおらず、高額なプラン以外の選択肢が少なかったこともあり、安さが大きな注目を集めて人気を高めることとなりました。
ですが、それから10年が経過した現在、MVNOの存在感は決して大きいとはいえないのが実情です。その後、携帯大手3社がサブブランドやオンライン専用プランなど、比較的低価格のプランを導入してそちらの人気が高まったのに加え、楽天モバイルが携帯電話事業に参入し、低価格で使い放題の料金プランを提供したことなどがその背景にあります。
それゆえ、MVNOの契約回線数の伸びは停滞しており、業界全体でも低迷傾向にあるのですが、それにもかかわらずMVNOの事業者数自体は拡大の一途をたどっています。実際、総務省の「通信市場・端末市場の動向について」の令和7年版を参照しますと、MVNOの事業者数は2024年12月時点で1,991社にも上るとのこと。MVNOにネットワークを提供している携帯電話会社が4社であることを考えると、いかにMVNOの数が多いかが理解できるでしょう。
なぜ、これほどMVNOが増えているのかというと、参入する事業者とその目的が大きく変わってきたからです。従来のようにモバイル通信でビジネスをするために参入するのではなく、顧客との接点強化のためなど、自社の事業を強化するためのツールの1つとしてMVNOとなり、モバイル通信を提供する企業が増えており、それが事業者数の拡大へとつながっている訳です。
ただMVNOとはいえ、通信事業を営むにあたっては必要な技術や設備、法制面での理解なども必要で、誰もが気軽に参入できるわけではありません。それゆえ、最近では既存のMVNOが新規参入するMVNOをサポートするケースが増えており、それがMVNOの新たなビジネスとして注目されています。
実際、MVNOとしてモバイル通信サービス「mineo」を提供するオプテージは、2026年1月27日に新規参入するMVNOを支援する「MVNO Operation Kit」を発表。2026年度下期より提供する予定だとしています。これは、オプテージがMVNOの事業をするうえで必要な機能を提供し、なおかつパートナー企業が提供する商材を活用することにより、高いサービス自由度を実現しながら低コスト、かつスピーディーにMVNOとしてサービスを提供できるようにする、企業向けのソリューションとなるようです。
フルMVNOのリスクを取るか、多数のMVNOに埋没するか
ただ、こうしたサービスによってMVNOに参入する事業者が一層増えるとなれば、既存のMVNOのサービスがそれら多数のMVNOによって埋没してしまいかねません。生き残りのためには今後一層独自性を打ち出すことが求められますが、ネットワークを携帯電話から借りており、携帯4社と比べサービスの自由度が低いというMVNOの立場上、それもなかなか難しいのが実情です。
そこで求められるのは、MVNOが自社でSIMを発行するのに必要な加入者管理装置など、より多くの設備を自社で保有して高い自由度を実現する「フルMVNO」になること。ですが、そのためには従来のMVNOとは比にならない規模の設備投資が必要になるため、大半のMVNOは参入に二の足を踏んでいるのが実情です。
ですが、それでもフルMVNOに参入する事業者はいくつか出てきているのですが、最近ではさらに、データ通信だけでなく音声通話に関しても専用の設備を持ち、高い自由度を実現する「音声フルMVNO」となる事業者が出てきています。オプテージもその1社で、同社はMVNO Operation Kitを発表した2026年1月27日に音声フルMVNO事業への参入を表明、2027年度下期よりサービスを提供する予定としています。
音声フルMVNOとしてはすでに、日本通信がNTTドコモ回線を用いて参入することを表明していますが、オプテージはau(KDDI)回線を用いた初の音声フルMVNO事業者になるとのこと。さらに同社は将来的に、au以外の回線も用いたマルチキャリアでの音声フルMVNO事業者となることも目指すとしており、そうなれば1枚のSIMで複数の携帯電話会社の回線を使い分けられるなど、従来にない価値を提供できる可能性があります。
ですが、フルMVNOとなるには大規模な投資が必要なうえ、音声通話を含んだフルMVNOになるとなれば、他の電話会社との相互接続を自社で実現する必要があるなど、より多くのハードルが待ち構えており、実現は容易ではありません。実際日本通信は、当初2026年5月24日にサービスを開始する予定としていましたが、その後サービス開始日を2026年11月24日へと半年延期しています。
オプテージは関西電力系の通信事業者なので、ある程度の企業体力があり、なおかつ関西で展開している固定ブロードバンドサービス「eo光」向けに「eo光電話」を展開するなど、音声通話サービスに関する実績も持ち合わせています。ですが、それでも新たな取り組みとなるだけに、順調に準備が進むかどうかは分かりません。
とはいえ、MVNOの市場全体が低迷する中にあって、積極的な投資をして差異化を進めなければ今後生き残るのも難しくなるだけに、思い切った判断をするに至ったのでしょう。
ただ、多くのMVNOは企業体力が小さく、オプテージの動きを機としてフルMVNO、ひいては音声フルMVNOに参入する事業者が増えるとは考えにくいのもまた確か。それだけに今後、フルMVNOになる事業者とそうでない事業者との間で、サービスなどさまざまな面で大きな差が出てくることになるかもしれません。




