「CATMAN」、「ペレストロイカ」で知られるFlashアニメ作家・青池良輔がクリエイターになる方法を熱く伝授する連載「創作番長クリエイタ」。記念すべき連載第1回では、クリエイターと時間の使い方の関係をプロの視点から熱く語る。

そもそも、クリエイターという職業とは?

「クリエイターになりたいんだけど、具体的にはどうしたらいいの?」と迷ってしまう事はよくあります。頭の中にぼんやりとあるイメージを、作品として具体化するのは、まぁ漠然としてつかみ所のない話ではあります。とは言え、やる人は放っといてもチャキチャキ自分で勝手に作品を作っていたりして、いつの間にかプロデビューなどしてしまったりするので、タチが悪いです。「どうしようか」とぼんやりしている間に、そんな人の話を聞いたりすると、さらに焦ってしまいます。

その原因のひとつに、クリエイターという言葉の曖昧さがあるんじゃないでしょうか? 映像、デザイン、広告、キャラデザイン……、なんか、カッコ良さげでオシャレっぽいところで仕事をしている人を、ざっくりと、「クリエイター」と呼んじゃうところがあると思います。本当は、細かく分けていくと映像監督とか、キャラクターデザイナーとか、脚本家とか職種が分かれるんですけど、いろんな媒体では「クリエイターになろう!」なんて、無責任なあおり文句が書かれていたりします。また、そういう記事に限って「脚本から作画まで!」なんて、個人でカバーできる範囲が大きい程、クリエイターとしての格が上、って感じで使われているような気がします。とはいえ、ただ「よくわからない」と、何もしないままでいるのはつまらないです。

そこで、このぼんやりした職種をもうちょっと具体的に考えていくと、何をしなきゃいけないのか見えてくるのではないかと思っています。この連載では一応、「オリジナル映像作品を作れるクリエイター」という方向で、なんだかんだ考えていきたいなぁ、と思っています。アイデアの落とし込み、物語の構築、キャラクターの立て方、映像演出技法、ツールの使いこなし方などなど、考える事が多いですから。かっこ良く言うと、総合芸術って奴ですね。一度、ひと通り考えてみると、映像だけでなく、小説、漫画など応用範囲は多いんじゃないかと思っています。

クリエイターにとっての才能とは?

作品を作り出そうとする時に、その創作技術やツールの使い方は、ただ覚えてしまえば済むことなんですが、それとは別に、不安を煽る要素として「才能」というものがあります。これはまた厄介なのですが、足の速い人と遅い人がいるように、どうしても物語を柔軟に発想できる能力、画力、構成力などにも、個人差はあります。うまいこと平均以上に才能があればいいのですが、世の中、そんなに楽には出来ていないようです。

僕の個人的な見解ですが、才能は「ボーナス」です。実は創作に関する多くの要素は、努力や学習でカバーできるものだと思っています。才能があれば、努力の部分が多少少なくて済むかもしれませんが、そんな他人のボーナスをうらやましがっていてもしょうがないかなぁと……。どうしても、そんな理不尽な自然の摂理に納得できなければ、モノ作りはやめといた方が良いかもしれません。そんなことを割り切って作り始めるのもまた才能です。

まずは「時間」を作ることから

とにもかくにも、クリエイターを目指す、はじめのステップは、「時間」を作ることだと思います。何かしら作品を作るには、物理的に時間が必要になります。当たり前過ぎることかもしれませんが、超大切な事だと思っています。

生活習慣を「創作」中心に組み直してみると、自分の行動、思考、欲求が整理されて、かなりモチベーションに影響しますし、技術も飛躍的に伸びます。泳ぎを覚えるなら、海かプールに放り込まれるのが一番早いのと一緒ですね。ちゃんと「作品を作ろう!」って思っているのなら、テレビ見ても、ネットをやっても構わないのです。自然とコンテンツのチョイスが「自分の作りたい作品にとってプラス」な物になっているはずです。そして、日々の娯楽や、睡眠時間を削って捻出した「創作の時間」で、ちょっとずつでも作品を作っていけば、必ずいつかは完成します。この時間を多く作った人の方が早く作品の完成に到達できるかもしれません。まぁ、それは人それぞれ。とにもかくにも、まずは「戦闘モード」に生活を切り替えたいものです。「やりたい」と思ったその日が始まりです。

青池良輔


1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。代表作に『CATMAN』(2002年)、『OH!スーパーミルクちゃん』(2002年 ※Flash版キャラクターデザイン)など。最新作は『CATMAN Series III』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。カナダ在住。