鳴り物入りでオープンした「au one」のポータルサイトだが、まだまだ進化の途上にある。ケータイとPCの連携も、コンテンツによって差があるなど、ユーザーインタフェースや使い勝手の工夫は、これからだ。だが、すでに稼動しているものの中に、「au one」の将来像が垣間見えるものがあることも確か。今回は、そのコンセプトが色濃く現れている部分に注目していきたい。

「家で地図を検索して現地でナビ」が可能なEZナビウォーク

「au one」が目指すところを理解するには、「EZナビウォーク」にアクセスしてみることをお勧めする。桑田氏も次のように語る。

「個人的に便利だと思うのは、やはり『EZナビウォーク』ですね。ケータイとPC、両方の検索履歴が全部残るので、例えば、行きたい場所を会社で調べておいて、現地に着いたらナビを開始するということも簡単に行えます」

確かにケータイの予測変換は、かなりの精度ではあるが、住所を番地まで入力するとなると非常に手間がかかる。これをあらかじめPCで行っておき、ケータイでは、履歴をクリックしていくだけの状態にしておけば、使い勝手は大幅に向上するはずだ。一方、ケータイにはGPSが付いているという利点がある。例えば、偶然発見して気に入ったお店などを出先で見つけた場合、GPSで場所を測位し、「My地点」に登録しておけば、後でPCを使ってそのお店の地図を参照することが可能になるのだ。

前回紹介した「au oneメール」同様、「EZナビウォーク」も、PC版はauユーザー限定のコンテンツではない。例えば、地図の表示や、乗換案内の利用などは、IDなしでも利用することができる。これは、「"普通の人も使えて、au契約者だともっと便利になる"というのが『au one』の考え方です」(桑田氏)という基本コンセプトがあるからだ。「EZナビウォーク」の場合、auユーザーであれば上記のような連携が可能となるのが、"もっと便利になる"点といえるだろう。

もっとも、「au oneメール」や「EZナビウォーク」は、それぞれGoogleやナビタイムといった会社が技術を提供しているため、それぞれのサービスのケータイ版を利用すれば、他社のケータイでもほぼ同じことが実現されてしまう。だが、ひとつのID、パスワードで複数のサービスを束ねているのは、まさにポータルサイトならではのメリット。「au one」のIDで使えるサービスが増えていけば、今以上にその利便性を体感できるようになるはずだ。

ケータイ版とPC版で履歴が共有されるため、あらかじめ行きたい場所をPCで検索するといった使い方が可能になる

「au one」のIDさえあれば、ログインも簡単に行える。サービスごとに別々のIDやパスワードを取得する必要がないのも、統合されたポータルサイトの魅力といえるだろう

シームレスな連携を加速させる

「au oneメール」や「EZナビウォーク」のように、シームレスな連携が実現しているコンテンツは、まだまだ少ない。解決しなければならない問題は多々残されているが、「情報系のコンテンツは、年内、一気に拡充していきたいです」(桑田氏)というように、ペースアップを図る構えだ。

すでにオープンしているコンテンツも、日々進化している。例えば、先日追加された「クリップ機能」もそのひとつだ。

「これは、ニュースの検索キーワードを『クリップ』しておくことができる機能です。キーワードには、ケータイ、PCの両方からアクセスできるので、出先で気になったニュースの検索ワードを登録しておき、会社のパソコンでじっくり見るといった使い方も可能です。また、逆に家や会社を出る時にPCでクリップしておき、移動中にケータイで読むということもあるでしょう。この機能も、今は限定的ですが、拡充していく予定があります」(桑田氏)

ケータイ、PCの両方で、クリップした記事にアクセスできる。場所を選ばずに同じコンテンツを利用するというコンセプトは、まさにユビキタスそのものだ

クリップ機能は、「マネー」にも対応しており、銘柄を登録しておくことができる。ケータイでリアルタイムの株価をチェックし、PCでチャートを見て値動きを分析するといった使い方もありえるだろう。

ゆくゆくは、このような連携を、LISMOやゲームといったエンターテインメント系のコンテンツにも広げていきたいそうだ。

「今は実用的なツールを先に拡充していますが、LISMOのようなエンターテインメント系のものを伸ばしていくという方向もあります。ゲームなども可能性のあるジャンルといえるでしょう。『auケータイだったら楽しく』ということを追求していきたいですね」(桑田氏)

桑田氏が「ひとつひとつを積み上げて、目指している世界を作っていきたい」というように、未知数な部分はまだまだ多い。しかし、この試みが成功すれば、(ケータイ、PCを問わず)他社を一歩リードする、新たなネットサービスを展開できる可能性も高い。発展途上の「au one」がふたつのネット世界どのようにつなげていくのか。今後の展開からも目が離せない。