KDDIの強みは、好調なau事業に加えて、PC向けの固定通信を展開しているところにある。以前はそれぞれがバラバラのサービスとして提供されていたが、9月27日に両者を統合。新ブランドを「au one」と名付け、PCとケータイの連携を意識した新たなサービスをスタートした。では、両者の融合が目指すのはどのようなものなのか。ユーザーにはどのようなメリットがあるのか。KDDIに、その真相を確認した。

ケータイとPCが融合した新たなポータルサイト

固定通信とケータイの2つを持つKDDIだが、リニューアル以前は、前者が「DION」、後者が「EZweb」という名で、それぞれ別々のインターネット接続サービスを提供していた。同様にポータルサイトも、「DION」のものや、ケータイ向けのPCサイト「DUOGATE」、ケータイ用の「EZwebトップメニュー」の3つが並存しており、各々が連動している部分はそれほど多くなかった。

だが、固定通信とケータイの融合を目指すFMC(Fixed Mobile Convergence)の流れのなか、9月27日に2つの通信ブランドを統一。PC向けには、固定通信のインターネット接続サービスを「au one net」に改め、ポータルサイトも「DUOGATE」から「au one」へと生まれ変わった。また同時に、ケータイ用のポータルサイトも「au one」へとリニューアルを図っている。

新たに、リニューアルされた「au one」のポータルサイト。左がケータイ用のもの、右がPC用のものとなる。一見して分かるように、非常に類似性のあるデザインが採用され、より関係が密接になったことが伝わる

では、なぜすべてをauブランドに統一したのか。KDDI コンテンツ・メディア本部 ポータルビジネス部 編成グループリーダーの桑田祐二氏に、その意図を聞いた。

KDDIコンテンツ・メディア本部 ポータルビジネス部 編成グループリーダー 桑田祐二氏

「KDDIの核になっている『au』をベースに、ほかの事業をいかにauに近づけていくかというなかで、今回の『au one』が生まれました」(桑田氏)

KDDIの持つ複数のブランドのなかで、知名度、ユーザー数共に群を抜いているのがauだ。すべてのサービスをそのブランドに統一して展開しようと考えるのは、自然な流れといえるだろう。

新しいポータルサイトでは「身近でパーソナルなケータイを、そのままPCの世界で展開していきたいですね。PCで使えるマイポータルというようなイメージです」という。つまり、今までバラバラだったケータイとPCのサービスを、より生活に密着したケータイ寄りにしていくことで、両者を統合していこうというのが、「au one」の目指すところだ。

今までのインターネットサービスは、あくまでPCのサービスが基本となっていた。「Yahoo! Japan」も、Yahoo!モバイルやソフトバンクのYahoo!ケータイと連動してはいるものの、あくまでもPCのサービスが先にありきで、ケータイはそれを補完するツールという考え方がベースにある。これは、他のポータルサイトも同様で、原則的にPCが主でケータイが従という関係が築かれていたのだ。

「au one」の新しさは、両者の関係を逆転させているところにあるといえるだろう。ケータイ寄りの発想が許されるのも、「インターネットといえばイコールPCのことでしたが、そのような状況も、徐々に変わりつつあります」(桑田氏)という事情があるからだ。ケータイからインターネットの世界に入り、ケータイがインターネットの“常識”になっている層は確実に増えている。

「世の中にポータルサイトと呼ばれるものはたくさんありますが、KDDIとしての強みは、やはりケータイのパーソナルな部分になります。発想としては、従来の考え方とは真逆のものといえるでしょう」(桑田氏)

ただし、スタートしたばかりゆえに、まだまだ課題が多いのも事実だ。

「もちろん、今のポータルでは不完全だと思っています。また、ケータイの世界をPCに持ち込むという発想の枠内に、すべてが収まるのかということも、今後のチャレンジが必要です」(桑田氏)

ケータイとPCの連動の仕方も、現状ではサービスによってひとつひとつ方法が異なる。統一した世界観を見せていくには、それなりの時間もかかるだろう。

だが、着実に「au one」は進化し、ケータイとPCの世界は融合へと向かっている。その代表格が、「au oneメール」だ。

「auオークション」(左)のように、ケータイとPCがほぼ完全に乗り入れているものがある一方、「au oneブック」のように、QRコードでケータイサイトへ誘導を図るものも残る。融合の“深さ”をどこまで統一していくかも、今後の課題といえるだろう

ケータイとPC両方で使える「au oneメール」

「au oneメール」とは、Googleの「Gmail」がベースとなった、Webメールサービスのこと。従来からauケータイでは、「@ezweb.ne.jp」というドメインのアドレスを利用できるが、2つ目のサブアドレスとして、ケータイ上から「@auone.jp」というアドレスを取得することが可能となった。



auケータイとPCの両方で利用できる「au oneメール」。検索機能や迷惑メールフィルターなど、Gmailの技術を採用したからこそできる、充実した機能も特徴のひとつだ

Webメールというサービスの性質上、このメールは、ケータイ、PCの両方から閲覧・編集が可能。Gmailの技術が用いられているだけあり、検索機能や迷惑メールフィルターなど、多彩な機能が提供されている。

現状では、優れたWebメールという域を超えてはいないが、今後は、端末と連動した進化をしていくという。

「今の時点では、純粋なWebメールですが、今後は端末との連携などを強化していきます。例えば、EZwebへ届いたメールを自動的に転送したり、端末上で『au oneメール』の着信を確認できるようにしたりと、端末も含めて徐々に『au one』仕様にしていく予定です」(桑田氏)

もちろん、ポータルサイトのWebメールという特性上、「auユーザー以外の方も、au oneメールを取得することができます」というが、ケータイから利用できるのは、auユーザーだけの特典。また、端末との連携が強化されれば、ますますauならではのメリットが増していくはずだ。

「au one」のポータルサイトがオープンし、強化されたのは「au oneメール」だけではない。「そのほかのサービスも、こまごまとしたところを色々とチューニングしています」(桑田氏)というように、従来から展開されていた各サービスも、少しずつバージョンアップしているのだ。

次回は、「EZナビウォーク」の連動や、クリップ機能などを例に、「au one」ならではの、ケータイとPCが融合した世界の一端を紹介していきたい。