初心者でも簡単に扱える「S!ミュージックコネクト」だが、その設計思想は「カスタムDISC」と呼ばれるプレイリストやポータルサイトにも受け継がれている。今回は、これらの機能や、今後のS!ミュージックコネクトに関して、ソフトバンクモバイルの担当者に聞いた。
「カスタムDISC」で音楽を選ぶ楽しみが蘇る
あえて機能を削ぎ落としたという「S!ミュージックコネクト」だが、そのシンプルさは、「カスタムDISC」と呼ばれるプレイリスト機能でも健在だ。このソフトでは、1つ1つのリストをCDに見立て、そこに曲を登録していく仕様となっている。
これだけだと、単にビジュアルをCDにしただけのようにも聞こえるが、作れるCDの枚数や、登録できる曲数も制限されているのだ。
「作れるディスクは10枚まで、1枚のディスクには74分しか曲を入れることができません。カセットテープに自分の好きな曲だけを選んで録音していた時代のような『音楽を作る楽しみ』を味わってもらいたい、という思いがあります」(馬野氏)
デジタルデータを編集していくというイメージよりは、「マイベスト」のCDやカセットを作るイメージをあえて再現したのだという。
「デジタルデータは実態がないので、所有感もなくなってしまいます。もちろん、制限をかけることに賛否両論はあると思いますが、盤面が見えるようにしたことで、ディスクを作る過程を楽しめるのではないでしょうか」
あえて制限をかけたことで、「リッピングは初めて」という初心者ユーザーでも、直感的にディスクを作成できる。カスタムDISCを作成するには、空のCDを選び、そこに曲を登録していくだけ。つまり、CD-Rに自分の好きな楽曲だけをチョイスするような感覚で、作業を行えるのだ。
もちろん、10枚までという仕様は、ユーザーの反応によって変更していくこともあるそうだ。
「それなりに作れますが、ちょっと少ないという声もあることも理解しています。そのような声に対しても、今後、バージョンアップで対応していく可能性はあります。自社で開発しているので、柔軟に対応していくことが可能なのです」(ソフトバンクモバイル マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 サービス・コンテンツマーケティング課 溝渕浩二氏)
また、現状ではカスタムDISCとケータイのプレイリストが同期していないという。この点も、今後の検討課題だ。
「カスタムDISCから1曲1曲転送することはできるのですが、端末側のプレイリストとは同期していません。ですので、端末側で改めてプレイリストを設定する必要があります。もちろん、今後は同期させることも検討しています」(末松氏)
無論、カスタムDISC以外に関しても、ユーザーの反応を見極めながら、適宜バージョンアップは行っていくという。自社開発のソフトだけに、ユーザーの声を反映した、柔軟な対応が期待できそうだ。
ソフトからダイレクトにアクセス可能なポータルサイト
S!ミュージックコネクトを立ち上げると、同社が運営するポータルサイトにアクセスする。このサイトも、複雑な構造にせず、一画面ですべての項目を見渡せるような作りを徹底している。ニュースやランキングなどが整然と並べられており、画面を見ればその使いやすさがすぐに伝わるのではないだろうか。
「カテゴリーが多すぎると分かりにくくなってしまうので、必要なものに絞ってあります。内容は、こういったポータルに興味を持つ15~24歳ぐらいのユーザーが好みそうな、J-POPがメインですね」(末松氏)
ポータルの内容も、「ものによっては、毎日更新するものもあります」(末松氏)というところからも、ソフトバンクの"本気度"がうかがえる。
「ジャンルについては、アンケートやPVを見ながら徐々に改善していきますが、最終的には、このポータル独自の傾向が出せるようにしていきたい」(末松氏)そうだが、実現すれば、このポータルサイトの価値がさらに高まることは間違いない。
また、同サイトは、音楽配信サイトの「mora win」と提携しており、そこから楽曲を購入することも強みの1つだ。
現状では、ポータルと直結しているのはMORA WINのみだが、末松氏は、
「提携先を増やしていくという選択肢もありえますが、その分、複雑になってしまう可能性もあります。数を増やすのか、数を絞って利便性を高めるのか、両方の選択肢を検討中です」
と、今後の可能性を示唆する。音楽を購入するには、別途、mora winのIDを取得する必要もあるが、先日発表された課金代行サービスの「S!まとめて支払い」を利用できるようにすることも、視野に入れているそうだ。
対応端末の拡充やソフトのバージョンアップに期待
ソフトバンクの本格的な音楽サービスは始まったばかり。先に述べたように、今後は、ユーザーの反応を見ながら、ソフト、ポータルサイトの両面から随時バージョンアップを図っていく。
また、「使い方を書いたちらしを入れ、簡単に使えるようなフォローもしていきます」(ソフトバンクモバイル マーケティング本部 プロダクト・マーケティング部 サービス・コンテンツマーケティング課 田中久美子氏)というように、アフターケアーも欠かせない。
対応端末も、「順次拡大していきます」(末松氏)という。現状ではシャープ製の端末だけとなっているが、今後発売される端末では、このサービスへの対応を積極的に進めていくようだ。「今回、S!ミュージックコネクトに対応している4機種は、着うたフルのジャケット表示機能を追加してあります」(溝渕氏)というように、端末の音楽機能も拡充させている。
S!ミュージックコネクトに対応した4機種(左から920SH、822SH、821SH、820SH)。現状、すべてシャープ製だが、対応メーカーも増やしていく構えだ。4機種中、3機種がBluetooth対応のため、音楽をワイヤレスで聞けるというメリットもある |
着うたフルへの早期対応や、タダ歌ばんのような無料音楽サービスなど、従来から他社と比べても遜色ない音楽サービスを展開していたソフトバンク。少々遅れをとっていた、PCからの転送サービスが加わったことで、音楽サービスのラインナップの幅が広がったことは間違いないだろう。