蛍光ランプで最もポピュラーなのは直管タイプだ。家庭用の照明では、高周波点灯専用管が使用されるケースが増えてきてはいる。だが、それはあくまでもリビングなどメインの居住空間だけの例で、それ以外の場所(例えば玄関やキッチン、洗面所など)では、やはり通常の蛍光ランプ(あるいはコンパクト形蛍光ランプ)が使用されるケースが多い。

直管蛍光ランプのうち、我々が一般家庭で目にする10形/15形/20形のものは、「G13」と呼ばれる口金を使用している(これら以外に30形/32形/40形もG13口金を使用)。G13口金では、蛍光ランプの両端に出ている2本のピンが、ランプの固定とランプへの給電を行う。もっと小さい4形/6形/8形の蛍光ランプの口金は、G13を小さくしたような形状の「G5」と呼ばれるものだ。そして、さらに大きな80形や110形では、「R17d」と呼ばれる口金が使用されている。

こういった直管蛍光ランプの置き換え機器となるのが、直管LEDだ。前回、LEDを使用したシーリングライトを、高周波点灯専用管を使用したものと比べると、消費電力やランプの寿命にさほど差がないという話をした。だが、普通の蛍光ランプとLEDとでは大きな開きがある。まず消費電力に関しては、白色の直管蛍光灯の場合は20形で20W、40形で40Wというように非常に分かりやすい(ただし、三波長蛍光ランプでは20形で18Wという感じで形とW数が一致しない)。それに対して直管LEDの場合、20形で10~13W程度、40形で20~25W程度と、半分程度の消費電力でほぼ同じ明るさを実現する。

寿命に関しては、一般的な直管蛍光灯は20形で8,000時間程度、40形で1万2,000時間程度となっており、直管LEDの4万~5万時間という定格寿命とは大きな差がある。これは、一般家庭よりも、使用している蛍光ランプの本数が多い事業所などで大きなメリットになるだろう。ただし、直管蛍光灯の数値は白色の場合で、プレミアムタイプの蛍光ランプでは20形で1万5,000時間といった長寿命の製品もある点を付記しておく。

直管LEDには、大きく分けて2つの種類がある。ひとつはランプ内に電源を持つタイプで、もうひとつは電源が器具内にあるタイプだ。ランプ内に電源を持つタイプは、AC100Vでダイレクトに点灯させることができる。そのため、蛍光ランプを使用した照明器具の安定器を取り外せば、従来の器具に取り付けることが可能だ。なお、必ずしも物理的に取り外す必要はなく、バイパスさせればOK。このタイプの製品には、エレコムが販売している「ELESHINING」の「LED-FL」シリーズのように、特に器具に手を加えずとも蛍光ランプと差し替えるだけで使用できるものがある。同製品は、最近ではスーパーなどでも普通に販売されているので、「目にしたことがある」「既に使っている」という方も多いだろう。

エレコムの「ELESHINING」。スーパーでも購入できる直管LED

電源を持たない直管LEDの多くは、電球工業会が策定した規格「JEL801:2010」で規定されている口金「GX16t-5」を使用するタイプだ。この口金は、蛍光ランプの取り付けに使用されている口金とは物理的な互換性を持っていない。そのため、蛍光ランプを使うべき器具に間違えて直管LEDを取り付けたり、その逆に直管LEDを取り付けるべき器具に蛍光ランプを取り付けたりする間違いが起こらない。また、ランプの重量面でも有利だ。電源を内蔵した直管LEDでは、どうしても電源の分だけランプが重くなってしまう。20形程度の蛍光ランプでは重さが問題になることは少ないが、40形ともなるとその重さはかなり影響が大きい。40形を例に取ると、蛍光ランプで260g程度、電源を持たない直管LEDで300g弱、電源内蔵の直管LEDでは400g程度というのが一般的だ。400g程度になると危険というわけでは必ずしもないが、器具や口金の状態によっては破損や落下の可能性がある。

東芝ライテックの直管LED「LDL40T」。もちろん「GX16t-5」を採用している。左側の写真が電源側で、右側の写真がアース側

ただし、電源を内蔵していないタイプの直管LEDを使用するには、直管LED用の器具を新たに導入するか、既存の照明器具にLED用の電源を加えたうえで口金を交換するといった改造が必要だ。導入のための敷居は、電源内蔵タイプよりも高い。改造には、各社から発売されているリニューアルキットなどをを使用するのだが、工事費を含めた価格は直管LED方式の照明器具を新規で導入する場合とさほど変わらない。リニューアルキットは、天井などに取り付けられている既存の照明器具を、外観を保ったままLED化するために使うための製品だろう。

さて、LEDを使用した照明器具では、蛍光ランプや白熱灯を使用した照明器具に比べてランプ形状による制約が少ない分、より自由なデザインを追求できる利点がある。照明としての機能だけならば、何も蛍光灯のスタイルを真似る必要などないわけだ。それにもかかわらず、直管LEDを使用したベースライトは、各社から数多くリリースされている。これは、既存の照明器具が設置されているスペースにそのまま備え付けることが可能というのが大きな理由だ。同様に、LEDダウンライトなどでも、既存の取り付け穴に収まるようなサイズの製品が販売されている。

ただし、これらはあくまでも既存のスペースに取り付けるための器具だ。新規の設備や新築の住宅などでは、このような直管LEDやLED電球を、積極的に選ぶ必然性は少ない(もちろん、価格面でそれらを選ぶしかないというケースはあるかもしれないが……)。

既存の照明のスペースに、そのまま置き換えられるベースライト