前回まで、LED電球とそれ以外の電球について比較してきた。日本国内では、家庭内にある照明器具の多くは、光源に白熱電球ではなく蛍光灯が採用されている。とくに、部屋のメインの照明となると、その傾向は強い。部屋の天井に引っかけシーリングや埋め込みローゼットなどがあり、そこにシーリングライトやペンダントを取り付けるというのが一般的なスタイルだ。これと同様に使用できるLED照明器具がいくつか出回り始めている。LEDシーリングライトとして最初に登場したのが、シャープの「DL-C501V」「DL-C301V」などで、2010年9月に発売された。現時点でLEDシーリングライトを発売している国内の主なメーカーはシャープ、パナソニック、東芝ライテック、日立アプライアンス、NECライティング、アグレッド(旧丸善電機)といったところだ。これら以外の山田照明やヤマギワといった照明専門の会社でも、もちろんLED照明器具は発売しているが、これらは後付けタイプの照明というよりも、住宅の施工時やリフォーム時に設置工事を行うタイプの器具が中心だ(ヤマギワは照明オンリーというわけではないが、照明に特に力を入れている)。
さて、一般的な蛍光灯は、その電源周波数(西日本は60Hz、東日本は50Hz)で点滅している。それに対してインバーター式の蛍光灯は、周波数を上げることでより明るく高効率になる。例えば、東芝ライテックの通常の蛍光管「メロウZプライド」の30形のサークライン「FCL30EDC/28PDL」の場合、定格ランプ電力は28Wで全光束は2,000lm。効率は71.5lm/Wだ。それに対して、高周波点灯専用管「ネオスリムZプライド」(環形のスリム管)の27形「FHC27ED-PDL」では定格点灯時(27W)の全光束が、周囲温度25度の場合で2,410lm、35度の場合で2.530lm、高出力点灯時(38W)の時の全光束は周囲温度25度の場合で3,710lm、35度の場合で3,730lmとなっている。効率は89.3lm/W~98.2lm/Wだ。パナソニックの「スリムパルックプレミア蛍光灯」の27形「FHC27ECW/H」の場合、定格点灯時(27W)の全光束が、周囲温度25度で2,410lm、35度で2.590lm、高出力点灯時(38W)の時の全光束は周囲温度25度で3,350lm、35度で3,420lmとなっている。効率は89.3lm/W~90m/Wとなる(以上、すべて昼白色、または昼白色相当で比較)。
もちろん、蛍光管をそのままで使用するというケースは滅多にないことなので、シーリングライトに組み込まれた状態を見てみよう。パナソニックが発売している100形の「ツインパルック蛍光灯」を使用したシーリングライト「HFAZ8302」(8~12畳用)を見てみると、消費電力は87Wで、全光束は9,760lm。効率は112.2lm/Wだ。東芝ライテックの「FSH70060SEN」は、ネオスリムスクエアの40W形と30W形を1本ずつ使用したシーリングライトで、6~8畳用のモデルとして販売されている。消費電力は63Wで、全光束は5,900lm。効率は93.7lm/Wだ。
続いて、LEDシーリングライトの効率を見てみよう。シャープのDL-C501V(12畳用)は消費電力が86Wで、器具光束は5,100lm。効率は59.3lm/Wだ。8畳用のDL-C301Vでは消費電力が59Wで、器具光束は3,400lm。効率は57.6lm/Wだ。パナソニックのLEDシーリングライト「HH-LC560A」(8畳用)では、消費電力が53Wで器具光束が3500lm。効率は66lm/Wだ。東芝ライテックの6~8畳用LEDシーリングライト「LEDH81100Y-LC」では、消費電力が60Wで、器具光束が3,600lm/W。効率は60lm/Wとなっている。このように、LEDシーリングライトは60lm/W程度の効率という製品が多いようだ。
ただし、ここで示されている数値は、蛍光灯を使用した器具が全光束、LEDを使用した器具が器具光束だ。つまり、蛍光管を使用した器具は、使われている蛍光管の全光束を足した数値である。それに対してLEDシーリングライトは、照明器具のカバーを通した光束ということになり、この2つを同列に比べることはできない。ここで見てほしいのが適用畳数だ。12畳用のLEDシーリングライト DL-C501Vの消費電力は86Wで、8~12畳用の高周波点灯専用管を使ったシーリングライト HFAZ8302の消費電力は87Wだ。同じく、8畳用のLEDシーリングライトDL-C301Vの消費電力は消費電力が59Wで、高周波点灯専用管を使った6~8畳用のシーリングライトFSH70060SENの消費電力は63Wだ。両者の効率は、現実的にそれほど差がないといえるだろう。
LED照明にはランプの寿命が長いというメリットがあるが、高周波点灯専用管も長寿命だ。ここで使用されている、パナソニックのツインパルックプレミアは約1万6,000時間、東芝ライテックのネオスリムZスクエアは1万5,000時間の定格寿命を誇る。LED照明の4万時間には及ばないが十分な長さで、LED照明が長寿命というのは決定的なメリットとはならないだろう。LEDシーリングライトにのみ存在するメリットは、調色機能を搭載したモデルが存在するという点ぐらいだが、どの程度の人が必要としているのかは分からない。
さらに別の問題もある。高周波点灯専用管を使用したシーリングライトは、現在の主力商品であるため、とにかく種類が多いのだ。デザインや予算に合わせて、好みのタイプを選ぶことができる。それに対してLEDシーリングライトは、多くのメーカーで1~2種類の製品とW数が異なるバリエーションがあるだけだ。
古くなった照明器具の交換の際、あるいは住宅の施工時やリフォーム時に、LEDシーリングライトを1つの選択肢として考えるのは妥当だ。だが既存の高周波点灯専用管を使用した照明器具を使用している場合、効率や寿命、機能で決定的な差がない以上、急いでLED照明に買い換える必要性は今のところ少ない。次回は、蛍光管の置き換えとなる直管LEDについて、話を進めていきたい。