前回に引き続き、PCを作るために必要なパーツを紹介しよう。

HDD

HDDはPC上で利用するプログラムやデータなどを記憶しておく領域で、メインメモリとは異なり電源を切っても内容が消えない、補助記憶領域の一種である。HDDについて重要なポイントは接続インタフェース、速度、容量、コストの4点が挙げられる。

接続インタフェースは、現在はシリアルATA Revision 2.5が主流となっている。この規格はシリアルATAIIと称されることも多い、最大転送速度3Gbpsのインタフェースである。以前はIDEと呼ばれるHDDがあり、現在でも店頭で見かけるが、チップセット側のIDEサポートが縮小傾向にある一方、シリアルATAインタフェースは増える傾向にあり、最近のマザーボードでは4~8個程度のシリアルATAコネクタを備えるのが一般的。後々追加することも多いであろうHDDはシリアルATA接続の製品を選んでおくのが無難といえる。

ちなみに、速度に関していえば、最大3Gbpsというのはあくまでインタフェースの理論上の値であって、実際にはHDDの内部転送速度に制限されると思っていい。そして、現在のPCにおいてはこのHDDの速度が大きなボトルネックになっているという事実もある。このボトルネック解消に関しては、Windows VistaでサポートされたReady Boost/Driveといったファイルキャッシュ機能や、HDDの代わりにフラッシュメモリを記憶媒体とするSSD(Solid State Drive)などの新しいトレンドも生まれている。

このうちReady BoostはPCにUSBメモリを装着するだけなので価格的にも容易に導入が可能であるが、Ready DriveやSSDはコストや製品選択肢、容量の面で制約が多く、これからの普及が期待される製品といえる。HDDが補助記憶装置として広く利用されているのは、製品単体における容量密度の大きさと、価格容量比でほかの記憶媒体を圧倒しているのが大きな理由なのである。

HDDの容量単価は年々下がっており、現在は400GB製品が1万円前後、500GBが1万円強といったところで人気を集めている。とくにメーカーなどにこだわりがないならば、必要な容量と投資可能なコストの兼ね合いで選んでよいだろう。

最近はシリアルATAのサポート数を増やし、IDEサポートを縮小する流れにある。先に紹介したASUSTeKの「P5K-E」の場合、シリアルATA×6ポートに対し、IDEは1コネクタ(2デバイス)となっている

デスクトップPCで利用されるHDDは3.5インチのもの。ノートPCなどで利用される2.5インチなどを利用できなくもないが、パフォーマンスや容量の面で3.5インチのほうが有利であり、とくに理由がなければ3.5インチを選択したほうがいい

光学ドライブ

光学ドライブは名前のとおり、CDやDVDの読み書きを行うためのドライブで、やはり補助記憶デバイスの一種である。書き込み/書き換え可能なDVD規格すべてに対応する、DVDスーパーマルチドライブと呼ばれる製品が現在のトレンドで、ライティングソフトを含めて1万円を切る価格で購入できる。光学ドライブの差別化ポイントは、対応メディア、速度などが挙げられるが、DVDメディアに関していえば、DVDスーパーマルチドライブの普及によって対応メディアにおける差は感じられなくなっている。速度についても、DVD±Rメディアは規格上の限界値である16倍速を超える速度を持つドライブも登場しているほどで、それほど高速ドライブにこだわらなくても(速いに越したことはないが)ライティングの待ち時間で不満を抱くことも少なくなった。

では、どんな製品を選んでもいい、ということになってしまうわけだが、現在のトレンドに合わせて製品を選ぶなら、シリアルATA接続の製品を選ぶことをお勧めしたい。HDDに比べると光学ドライブはIDE製品を利用することが現在でも珍しくないが、今年に入ってシリアルATA接続のDVDスーパーマルチドライブの価格崩壊が目立っており、IDE接続製品と大差ない価格で入手できるようになった。マザーボードのシリアルATAインタフェースはHDDを接続しても結局余してしまうことがあり、光学ドライブをシリアルATA化することで、古いHDDなどからのデータ抜き出しなどのためにも少なくなったIDEを残すというアプローチは有効だ。

ちなみに、デスクトップPCでは5インチサイズの光学ドライブが利用され、これをケースに内蔵するのが一般的。例えば、ほかのPCと共有するためにUSB2.0接続の外付け光学ドライブなどを利用するという選択肢もあるが、シリアルATA/IDE接続に比べると速度面の不利や見た目のスマートさに難があり、可能な限り内蔵型を利用することをお勧めしたい。

ASUSTeKの「DRW-1814BLT」は、DVD±R/RW、DVD-RAMへの書き込み/書き換えが可能なDVDスーパーマルチドライブ

PCとの接続インタフェースはシリアルATAが採用されている

ケース、電源

自作PCを構成するパーツで、もっとも大物となるのがケースである。パーツをすべて収納するだけの体積が求められるわけで、当然、あらゆるパーツよりもサイズは大きいことになる。ケースを選ぶうえで大前提となるのが、利用するマザーボードが装着できることである。これにはフォームファクターという概念がある。

フォームファクターとはPCの設計上のネジ穴やパーツのサイズなどを規定したものだ。PCで利用されるもっとも一般的なフォームファクターはATXと呼ばれるもので、これのサイズを縮小したMicroATX、FlexATXなどがあるが、ネジ穴には互換性があるので、ケース側のサイズが大きい分には問題なく取り付けられる。逆にMircoATX対応ケースにATXサイズのマザーボードは取り付けられない。通常、これは前述のケースの体積の問題も絡むので、見た目で判断できることが多いが、購入時に間違えないように注意したい。

そのうえで、装着するパーツがすべて収納できるかを見極める必要がある。また、後々の拡張の余地を残しておくことも重要だ。この部分で重視したいのは、ドライブベイの数である。光学ドライブなどを収納する5インチベイ、カードリーダーやFDDなどを収納する3.5インチベイ、HDDを収納するシャドウベイなどに分けられるが、こうしたベイが不足しないよう、また、将来のHDD拡張に備えてシャドウベイに余裕を持たせておくなどの配慮が必要となるわけだ。

ただ、逆に拡張性を無視して小型のケースを選ぶという手もあるし、外観の好みのみで選択するというアプローチもある。また、ケースには、一般的にケース内の空気の流れを作るケースファンが取り付けられているが、このファンの騒音が小さいものにこだわって選択する人もおり、ケースは自分が作るPCに合った最低限の収納能力があれば、好みで選びたいパーツでもある。

さて、ケースとも多少のつながりがあるが、電源ユニットもPCの自作においては必要となるパーツだ。家庭用のコンセントに流れてくる交流電源を、PCが利用する直流電源に変換し、かつPCが利用する複数の電圧を作りだす役割を持っている。電源はケースに付属していることもあり、理由がなければ付属品を使うほうが安く上がることが多い。

ただし、ケースの付属品ではなく、電源ユニットを単体で購入するインセンティブは小さくない。一つは電源の総出力の問題である。電源ユニットはPC側へ出力できる直流電力に制限があり、この出力量が大きな電源はそれなりに高価になる。タワー側のATXケースに付属する電源は400~500W程度が一般的で、ハイエンドCPUやハイエンドビデオカードを利用する場合でなければ十分な容量を持っているが、パフォーマンスにこだわったPCを自作しようと思っているのならば、出力の大きな電源を用意したほうがいい。

もう一つ電源購入の大きな動機に、騒音がある。電源ユニットもファンが付いているのが当たり前のパーツで、静かな電源を求める向きもあるわけだ。このほか、信頼性というファクターも注目されている。定量的な判断は難しい要素だが、例えば日本製の高級コンデンサを利用しているものなど、構成部品にこだわりを見せる製品はトラブルの可能性が低く、多少のコストを払っても選択するユーザーが少なくない。

ASUSTeKのPCケース「TA-211」。高さ400mm強のケースをミドルタワーケースという。ATXマザーで利用する場合は一般的なサイズである

Abeeの電源ユニット「ER-1480A」。12cm角の搭載や不要なケーブルを取り外せるといった点に特徴を持つ製品である

その他のパーツ、ソフトウェア

PCの自作に必須のパーツは以上のとおりだ。組み立てに必要なネジや内部のケーブルなどの諸部品はマザーボードやケースに付属している。このほかに必要な可能性があるパーツとしては、ディスプレイ、キーボード&マウス、スピーカー、カードリーダー、FDDといったところだろうか。

カードリーダーやFDDに関しては必要に応じて求めれば良いが、ディスプレイとキーボード&マウスは必須に近いかも知れない。このあたりはPC自作とはやや話がズレので詳しくは言及しないが、もし必要であれば購入する必要がある。

また、メーカー製PCとは異なり、Windowsは自分で購入してインストールする必要がある。パッケージ製品を買っても良いのだが、HDDやFDDなどとセットで購入するDSP版と呼ばれるWindowsも存在しており、もしHDDを自作用に新規に購入するのであれば一緒に購入したほうが割安だ。割安なのは、一緒に購入したハードウェアで利用する必要があるというライセンス上の制限が付くためで、機能的な制約はない。この場合は一緒に購入したHDDにインストールして利用するわけなのでライセンス上も問題なく利用できるのである。

ASUSTeKの22インチワイド液晶「PG221」。サブウーファ付きスピーカを搭載しており、サウンド出力もこれ一台で可能だ

Windows Vista UltimateのDSP版。パッケージ版と異なり利用ハードウェアの制限が付くが、価格面ではメリットが大きい

次回はPC自作におけるパーツ選びのポイントを紹介する。

(機材協力 : ASUSTeK Computer)