X川は常に汚いが、イーロン・マスクに買収され、インプレッション数による収益化機能が実装されたあたりから、加速度的に汚染が進み、フランスの市長に「世界規模の下水」というエスプリの効いた捨て台詞を吐いて去られるまでに至った。

海外のXがどんな状態かはわからないが、X大国である日本のX川は世界有数の汚さになっていると予想される。

3月も初頭から「妻は3人の子育て家事に弱音を吐くが俺はそのぐらい余裕ニキ」がおすすめ欄を席巻した翌日に「娘のランドセル勝手に背負って号泣させオジ」が旋風を巻き起こしていたので「ほう、3月は春のモラハラ祭ですか」と思ったが、現在のXおすすめ欄にモラハラの話題が1個もないというのは、陰毛が1本も浮いていない5人家族の湯舟ぐらいレアになっている。

などと言いながら、おすすめ欄を覗いている私もXに浮いている陰毛の1本にしか過ぎないのだが、そんな入った方が体が汚れる地獄の風呂釜に落とされた一滴の清涼飲料水が「猫ミーム」である。

私はそう理解していたが、この連載の担当編集は「特に変わったところもない変な動画で、以降レコメンドが汚染されて駆除に苦労しております。」などと供述しており、それが担当の最後の言葉となった。

  • 何度目かのブームになっている「猫ミーム」ですが、今回のブームはどんなもんでしょう

    何度目かのブームになっている「猫ミーム」ですが、今回のブームはどんなもんでしょう

そもそも「ミーム」とは?

そもそも「猫に汚染」という言葉自体「全身を強く打ち復活」と言っているようなもので、自然界ではまずありえない現象だ。

猫はこの腐敗した世界に落とされたゴッズチャイルドであり、世界を腐敗させているのが人間だ。

猫は神、そして担当が身罷ったことは理解いただけたと思うが、猫ミームの「ミーム」とはなんだろう。

聞いたことはあるが、正確な意味は知らないので、調べて見た。

「ミームとはオックスフォード大学の生物学者リチャード・ドーキンスが、1976年に出した著書「The Selfish Gene(利己的な遺伝子)」の中で作り出した造語。模倣子とも訳される。」

調べた結果、何もわからないということだけがわかったが、もう少し簡単に言うと「人々の間で心から心へとコピー・改変されていく情報」という意味だそうだ。

さらに「猫ミーム」の「ミーム」は、「インターネット・ミーム」のことを指し、端的に言えば「ネタ」である。

いきなり偏差値が1億ぐらい下がった気がするが、「誰もお前を愛さない」や「面構えが違う」など、ネット上で俺たちが使いがちかつ、リアルで言ったらポカンとされるか普通にキモがられる言い回しや画像などのネタが「インターネット・ミーム」なのではないか、と思われる。たぶん。

「猫ミーム」はどこへ向かうのか

おキャット様はデフォルトで可愛いだけでなく、その表情や言動が知的でありながらユニークなので、下僕たちに撮影された姿が数多くネット上にアップされており、特に秀逸なものは投稿者の手を離れ、至る所で使いまわされるミームと化している。

そんなネット上の英霊と化したおキャット様のお姿を、組み合わせ1本の動画にしたものが「猫ミーム」と呼ばれるもので、内容は投稿者が体験したことをおキャット様に置き換えているものが多い。

当初は「近所で買い物した話」など、画像がおキャット様だから途中でブラウザバックせずに済んでいる、内容皆無なものも多かった。

しかし「どれだけおキャット様のガワを被せても人間のつまらん日常はつまらん」と気づかれたのか、特殊な体験や仕事を解説する猫ミームが増えて来た。

そして最終的に「人の不幸が見たい、この際猫でなくてもいいから見せろ」という、人間の熱すぎるニーズに応えてか、病気になった話や、ブラック企業に勤めて病気になった話など、不幸猫ミームが伸びてきている。

これは当初、人の不幸をぶどう糖替わりに静脈に打って生きている奴の集まりである、X特有の現象かと思ったが、YouTubeでも表示される猫ミームの半分はそんな感じなので、やはり人の不幸はどこに行ってもアツい優良コンテンツと言える。

もちろん他人の不幸で生命を繋いでいるタイプなのだが、ガワだけとはいえおキャット様が不幸に見舞われている姿など見たくないので「焼肉食べ放題に行った話」など、内容ゼロ系方が好みである。

最盛期は過ぎたようにも見えるが、投稿数自体は今も増えており、猫ミームに使われる素材のバリエーションも増えてきている。

しかし、皆がすなる猫ミームというものを、自分もしてみむとてした段階で「これは意外と権利的にグレーである」と気づく者もいる。

確かに、猫ミームに使われている猫はフリー素材ではなく、元は誰かが投稿したものであり、不随している音楽にも同様だ、それを無許可で流用して動画を作成して投稿する行為はリスクゼロとは言い難いので、そこで制作を思いとどまる人もいる。

これに対し「当然理解してやっているものだと思っていた、危険地域出身の人間が故郷を出て初めて強盗が犯罪だと知るみたいな話だ」と評する人もいた。

猫ミームに使われている猫の下僕が飼い主に代わって訴訟を起こす確率は低いかもしれないが、みんなが叩いている人間を一緒に叩いたらほぼ全員訴えられたという例もある。

赤信号みんなで渡れば怖くない、の精神でやると「全員轢死」という結果になるかもしれないので、少しでも心配なら、猫ミームは見る専に留めるのが無難である。

インターネット弁の矯正はお早めに

私も、ネットでよく見る言い回しはすぐ使うし、使い続ける方だ。

その結果私の文章自体が、ネット・ミームの集合体という一刻も早く除霊すべきものになりつつある。

私は田舎者だが、地元の訛りがあまりないと言われることがある。

それはおそらく、地元の人間と会話した時間より、ネットに貼りついている時間の方が遥かに上回っているせいだと思う。

私のように語彙が全てネットで構成されている「インターネット弁」は、下手なオタク喋りより不気味なので、子どもなどがネット弁を使い出したら早めに矯正した方が言い、中年になってからは手遅れである。