少し前に「おっさんがJKになれるボディソープ」が話題になったのを覚えているだろうか。

もとは我々加齢臭に悩む中年女が若かりしころの体臭を取り戻せるというコンセプトで発売したのだが、何故か「俺たちがJKに!?」という中年男性の声で話題となり売れてしまったようだ。

この「JKになれる」はあながち嘘ではなく、実際10代女性から多く発せられる「ラクトン」という甘い香りを補う成分になっていたようだ。

ここまでJKを中心とした未成年女子を特別視して商品化する国の風潮自体、他の国から見ればただごとでなかったりもするらしい。

しかし、この商品はJKを消費する側に回るのではなく「俺がJKになるんだよ」という志を持った人間が購入したのだから、その心意気や良し、と言えなくもないし、逆に「おっさんがJKになっても良い」という多様化社会向け商品だったとも言える。

このように世の中は、性別や年齢などの制限を撤廃する流れにある。先述のボディソープも多様化の可能性を秘めていたのに「中年女性向け」などと言って売り出したのは非常にもったいないことであった、むしろおっさんが発見してくれて本当に良かった。

人気ジャンルである魔法少女モノも、少女3人分以上の年齢を持つ女がやっている場合もあるし、もちろん普通におっさんがやっていることもある。

このままいけば、逆に「少女なのに魔法少女やってるなんて珍しいね」と言われる日が来てしまうのではないか。

そして、魔法少女の王道である「プリキュア」でも初のメインキャラに「男の子プリキュア」が登場して話題になった。

プリキュア好きな男児が号泣、「キュアエックス」が代理で激怒

  • プリキュアを愛する男児の悲しみに、Xに生息する多くの「キュアエックス」が立ち上がりました

しかし、この男子プリキュアを巡って騒動が起きたようである。

某プリキュアイベントで、プリキュアの衣装を着て撮影ができるコーナーが設置されていたが、女子プリキュア3名の衣装のみが用意され、メインキャラにも関わらず男子プリキュアの衣装だけがなく、撮影を楽しみにしていた男児が泣いて帰るという痛ましい事件が起こったそうだ。

何故なかったかというと、衣装は市販品であり、この時点で男子プリキュアの衣装は発売していなかったためである。

オタクをやっていれば「推しキャラのグッズが何もご用意されておらず泣いて帰る」など稀によくあることだ。

大人しく帰るのは「法律」があるからであり、それがなければ泣いて暴れている。件の男児は泣きこそしたが暴れず塗り絵をして帰ったそうなので偉いと思うし、そんな子が悲しい思いをしたのが余計悲しい。

そして「お前の分まで俺が暴れてやる」という、大人魔法少女キュアエックスたちにより議論は紛糾、無事炎上することとなった。

TwitterがXになって良かったことなど今まで一つもなかったが、唯一「キュア」との相性が良いという点を見つけられて良かった「キュアツイッター」はさすがに厳しい。

この件に関しては、そうは言っても女児向けアニメとして20年やってきたプリキュアである、男子需要は増えてきたとはいえまだ少なく、男子プリキュア衣装を販売しても女子衣装ほど売れないのだから、民間企業としては致し方なし、という擁護もある。

確かに現在「コンプラ対応」と「売上」は比例するわけではなく、むしろ反比例してしまっていることもある。「美男美女しか活躍しないなんておかしい」として、ゲームのメインキャラクターのビジュアルを「俺たち寄り」にした結果、俺たちからも「やっていて楽しくない」と言われコケる例もある。

しかし、男子プリキュアをメインキャラとして登場させたのは、「プリキュアの男子需要はまだ少なく利益に直結するわけではないが、それでもわが社は性別とかに囚われずにやっていく」という姿勢の発表だったはずである。

そういう多様化の姿勢を見せておきながら、メインキャラでも売れない男子プリキュアはハブるし、やっと自分もプリキュアになれると喜び勇んで来た男児は泣かす、というような対応はあまりにも一貫性がないとして、大きな批判の原因となったようだ

だが炎上の2日後に急展開があり、男子プリキュアの衣装発売決定、そして先行して撮影プランが行われることも発表された。

さすがに2日で衣装は完成しないだろうし、衣装サンプルが「どう見てもCGや画用紙」ということもないので、騒動を受けて前倒しで発表した可能性はあるが、販売自体は前から決まっていたと思われる。

発端となった男児の親御さんも、この吉報を「さっそく子供に伝える」として、この件は一応決着となっている。

ただ、イベントの時点で男子プリキュアがハブられていたのは事実であり、その旨や今後発売することも説明されていなかったため、「男子プリキュアを出しておきながら男子プリキュアファンの子どもに配慮がなかった」という点は甘かったと言える。

しかし、消費者側からすれば、男子のグッズも平等に作れよと簡単に言えるが、おそらく多様化と利益両方考えなければいけない企業側からすればそう簡単なことではなかったのだろう。

今回のメインプリキュアの男子加入、そして衣装発売までに相当の議論、そして努力があったのではないかと思われる。

今回は子供が余計に「男はプリキュアを好きになってはダメ」と思いこむ要因になりかねない事件だったため、捨て置けぬ事態となったが、だからといって企業側も基本的には利益を追求せねばならず、全て平等というわけにはいかない。

それに対し大人のキュアエックスたちがすべきなのは、「人気がなくても俺の推しキャラグッズも平等に作れよ」と泣いて暴れて世間に訴えることではなく、アンケートに「このキャラのグッズを作っていただければありがたき幸せ5億個買う」と丁寧に需要をアピールし、少しでも需要が増えるよう推しキャラをウザくならない程度に布教していく地道な活動だろう。