雑誌「週刊SPA!」が「ヤレる女子大学生RANKING」なる物を大学の実名を挙げ5位まで掲載し、名指しされた大学などの猛抗議を受け謝罪する、ということがあった。

もうこの概要を聞いただけで、体中の穴から沸騰した血が噴き出している女性も多いと思うが一旦ティッシュを詰めてほしい。経緯も知らずに感情的になりすぎると「更年期か?」と揶揄され、「もしかして…問題がすり替わっちゃってる~!?」という、誰も得しない「君の名は。」が始まってしまう。

まず同誌が、どうして、何を根拠にそんなランキングを掲載したかというと、「法政大学!勉強ばっかしてそうだし欲求不満だからヤれる!」「大妻大学! 妻という文字が入ってるからにはヤれる!」「フェリス女学院大学!! 説明不要! ヤれる」というイメージだけで適当な大学を並べたわけではなく、元は「ギャラ飲み」を扱った記事だったのだ。

ギャラ飲みとは「男性が飲食代を負担し、飲み会に参加した女性に謝礼を支払うなどする飲み会」のことである。文字通り相手にギャラを払って開催する合コンのようなものだ。あくまで食事会のみ、性行為は含まれないのが「ギャラ飲み」の定義だが、普通の合コンだって男女が意気投合すればその場で「お持ち帰り」ということも当然あり得る。ギャラ飲みだって然り、だ。

そこで、同誌はギャラ飲みがしたい男女をマッチングさせるアプリを使用してギャラ飲みを開催。その場に来たギャラ飲み女子とヤれるかどうかを検証し、その結果をレポートしている。性行為が前提でないギャラ飲みにヤる気で来て、「こうすればギャラ飲みでヤれる!」という記事を載せることは、ギャラ飲みでのトラブルを誘発するおそれがあり、この時点で危険だ。

そして、この取材の一環として、使ったマッチングアプリの主催に「お持ち帰りしやすい女子大ランキング」を決めてもらい、SPA!がそれを「ヤレる女子大学生RANKING」と銘打って掲載してしまった、というのが今回の流れだ。

大切なのは「指さし確認」と「リスペクト」

この記事の問題は、多くの炎上に見られる「主語巨大化現象」だ。

ギャラ飲みして、そのまま同意の上お持ち帰りされる女子大生も確かに存在はするだろう。だがそれを記事にするとしたら、「ギャラ飲みに来た女子大生、槍田万子さん(仮名)をお持ち帰りできました」とだけ書くべきだ。

しかし今回のSPA!の記事は「ギャラ飲みに来た槍田万子さん(仮名)をお持ち帰りできました。槍田さんはヤマリン大学(仮)に在籍です。つまり、ヤマリン大学の女は全員ヤれます」と言ってしまっているようなものなのだ。

このランキングを作ったというアプリ主催が「この5大学の女全員抱いた」というメンズナックルに出てきそうな人だというならまた話は違うが、多分抱いてないだろうし、抱いていたとしても「※マッチングアプリ主催に限る、俺でもヤれるとは絶対思わないでください」と注釈をつけるべきだろう。この記事だと「この大学の女子大生なら誰とでもヤれる」というとんでもない誤解を与えてしまう。

こうした誤解は、とても「危険」である。この記事を見て「ここの大学の女ヤれるんだってよ!」とジープに乗ったモヒカンの男たちが大学に大挙しないとも限らないし、「ヤマリン大学(仮)です」と名乗っただけで「ヤれる!」と思われ、勝手にヤれる前提で話と足がホテル街に進んでしまうかもしれない。そこで断ると「ヤマリン大(仮)のくせに!」と相手が激高し、最悪の場合性犯罪が起きてしまう。

女性にとって、「ヤれる」というレッテルは、侮辱以前に犯罪に巻き込まれやすい「的」を貼られてしまったようなものである。

また「○○な女はヤれる」という記事は性的合意の誤解をも生みだす。例えば「ギャラ飲みに来た女はヤれる」と書いてしまうと、「ギャラ飲みに来た」=「性的合意」と勘違いをされる恐れがあり、「ギャラ飲みに来た女性」=「性的合意あり」と思われてしまうかもしれない。

性行為において、双方の合意ほど大切なものはなく、本来ならお互いの股間を指さし確認しながら逐一同意を取って行くべきなのだ。しかし、日本人はそこをはっきりさせないのが詫び寂びと思っているのか、時として「部屋に来たから同意」「一緒に酒を飲んだら同意」「スカートを履いてきたから同意」という謎の俺ルールで断行されてしまう場合がある。

それで被害者が被害を訴えると、「部屋まで来ておいて同意じゃない、はないだろう」と、日本で良く見られる「被害者が責められる構図」が生まれてしまう。もしギャラ飲みで犯罪が起きても、「ギャラ飲みなんかに来る方が悪い」と言われるのが容易に想像できる。

はっきりと「NO」と言わない奴が悪いという声も必ず挙がるが、弱い者に「NO」と言わせるのではなく、男女に限らず「性行為は相手がYESと言ってないならNOと思え」と教育する方が先だろう。それが相手のためでもあり、自分のためにもなる。「○○ならヤれる」と主語を巨大化し、性的合意のハードルを一方的に下げる情報を流すのは、その真逆の行為と言っていい。

ちなみに、大学だけでなく、当事者といえる女子大生も抗議や署名活動を行った。彼女たちは「休刊などで臭い物に蓋をされるのは本意ではない」と直接SPA!編集部と対談し、その模様がWEBでも公開されている。気になる方は見てみるといいだろう。

そこで印象的なのは、編集長が「女性をモノのように見る視線があった」と謝罪しつつも、「我々は女性のことが好きなんです」と前置きしている点だ。

しかし、今回の「ヤレる女子大学生RANKING」を見ると「俺、ジップロック好きなんすよ、便利だから」と、消耗品的な意味で「好き」と言っているように聞こえてしまう。

人間に対するリスペクトがなければ、いくら「好き」でも侮辱と変わらなくなってしまう、ということである。

※自分はリスペクトをこめてジップロックが好きだという方に対し、不適切な表現があったことをお詫び申し上げます。